私は“恋”を知りたい


なじみのサイトさまで、今、昔話シリーズがブレイク中なので、真似っこしてみたお話。
ちなみに元ネタは古事記か日本書紀(どっちか忘れた)の飯豊天皇(大和朝廷最初の女帝とも擬される…けど、今の歴代天皇には数えられていない方)のお話です。





今は昔。

神に仕える高位聖職者の一人に、マルチェロという、とてもとても魅力的な方がいらっしゃいました。

マルチェロは、魅力的なばかりでなく、厳しく禁欲的な方でしたので、世の者たちが、色恋沙汰にうつつをぬかし、そればかりかそれが原因で眼も当てられぬような醜行に走るのを、苦々しく思っていました。




そんなある日。


マルチェロ「まったくもって、愚かしい。世俗の者たちというのは、何が面白くて、ああもくっついただの、はなれただの、愛だの恋だの、 肉の交わりごときに大層な理屈をつける のだ。全く以って私には理解しがたい。」




ですが、マルチェロは聡明な方でもあったので、こうも思われました。


マルチェロ「ふむ…だが私は “恋”と呼ばれるもの を知らない。 知りもしないものをああだ、こうだと思っても詮無いこと。ここは一つ、経験してみることにしよう。」







かくしてマルチェロは、 とりあえず真っ先に目に付いた生物 (なんでも、ククールとか言う、自称恋愛の達人だそうです) に声をおかけになりました。



マルチェロ「ククールとやら。私は、 知的好奇心から “恋”というものの実態について体験してみることにした。一つ付き合え。」


ククール「マジッスかっ!?(喜悦)」




マルチェロは、なにせ、とても魅力的な方だったので、ククールは 一も二も無く承知 しました。



そして、ああだこうだと、 聡明なマルチェロの耳には愚にもつかない繰言にしか聞こえない コトをほざきまくった挙句、



ククール「いや、でも結局、 肌と肌を合わせてみないと、恋は分かんないもんだよ?」


と、 下心まんまんの顔で言いました。




マルチェロはちょっと考えると、


成る程、よかろう。」

との言葉を発され、 ククールを歓喜の極致に上らせました。




マルチェロ「ただ、そこまで言うからには、私にきちんと “恋”たるものの甘美さを教える自信があるのだろうな?」

ククール「もちろんッ!!」

有頂天なククールに、マルチェロは念を押します。

マルチェロ「ならば、事をし損なった時には、 それ相応の覚悟はしてもらうぞ。」

ククールは、あんまりに有頂天だったので、めいっぱいぶんぶん頷くと、 マルチェロをお姫様抱っこ して、寝室へと連れ込みました。








































ちゃららーらーらっちゃちゃー(夜が明けた音)



















ククール「昨日はステキだったよハニー♪」

ククールの分際で、既に恋人気取り で話しかけます。


ククール「な、恋って本当に気持ちヨクて、素敵なモンだろ?やっぱ人生って、恋がなくちゃ始まら…」

マルチェロ「成程…」

マルチェロは、 世界を魅了せんばかりのエロヌードバディ とは不似合いな、大真面目な顔で、そう頷きました。



ククール「ほらほら、分かったら、そんなマジメーな顔してねーで、もっともおっと愛し合おうよー…」

調子にのったククールが再び腰にまわす腕を叩き落とすと、マルチェロは、その形の良い唇をお開きになりました。







マルチェロ「ああ、よく分かった。私は“恋”とはなんたるかを身をもって体験した。まったくもって、“恋”というものは、 下らんものだ!!」





























ククール「…え?」




マルチェロ「まったく、貴様が恋愛の達人 なんぞとほざくから、わずかながらでも期待したが、 面白くもなんともない!! こんなものにうつつを抜かし、果ては痴情のもつれから殺人まで犯す輩の、 気が知れんというものだ。 私は幼い頃から、女神に仕える身として純潔を保ってきたが、まったく、これは正しい選択であった。 こんなくだらん事を二度も体験する必要性を私はまったく認めん。 まあ、まったくつまらん体験であったが、 つまらん体験だと実感した事だけは収穫 であった。ともかくもこれで、 こんな至愚の極致に労力を費やす凡俗どもを教導せねばならん事が我が使命と心得られた!!」














ククール「ねー、オレのハニー。オレ、すげえがんばったんだけど…」

ククールがなにやらほざくのを 悠然と無視なさると、マルチェロは、


ぱちん

と指を鳴らしました。


すると、ハゲでヒゲの大男がすぐさまやって来ました。




グリエルモ「お呼びでしょうか。」

マルチェロ「うむ。このククールとかいう、 口ばかり達者なヘタレサギ師すぐさま始末 しろ。」

ククール「なんでー!?(泣)一緒にアツい夜を過ごした仲じゃんっ!?ハニーだって気持ち良かったでしょー!?」


ククールはグリエルモにひっつかまれながら、涙ながらに抗議しますが、マルチェロは当然ながら 鼻にもひっかけ ません。


それでもぴーぴーうるさいククールに、マルチェロは冷然と仰いました。







「『気持ちよかっただろう』

だと?…フン、 快楽など、一滴たりとも存在しなかったわ。」






「ハニーの不感症っー!!!!(大泣き)」



そうしてククールは、どこかへ引きずられて行きました。



























そしてその後、マルチェロは 二度と再び誰とも肌を重ねることもなく 女神に仕える聡明で高潔な神官として働き、しまいにはその働きが認められて天つ下を治める位に就いて、立派に世の中を治めてゆきましたとさ。










めでたしめでたし


2007/2/5







有名なお話でもないので、元話のあらすじ。


巫女として神様に仕えていた飯豊皇女は、世間の男女が色恋沙汰にうつつをぬかしているのを見聞きして、そんなに楽しいものなのかと、とりあえず男と寝てみたけれども、 楽しくもなんともなかった ので、なーんだ、と思い、それから二度と男と寝ることなく、巫女として修行を積み、そしてついには天皇として、天の下をしろしめして、民草を立派に治めましたとさ。


なんつーか…この話を最初に読んだ時に思ったのは、

「彼女のこのドライな割り切りの速さはなんなんだろう」

という事でした。“男と寝るのは楽しいのか?”と思えば寝てみて、“つまらん”と思ったら二度と寝ないって…(確かに、手早い状況判断は施政者として必須でしょうが)

何より気になるのは、彼女が「楽しくもなんともなかった」のは、 彼女が悪い のか 男がヘタクソだった のか、どちらなのでしょうか?残念ながら史書には、一体相手の男は誰だったのかは書かれていませんが、いや、後者であったとしても、たった一回でそこまで断定するのは、ちょっとどうかと思われ…

ともかく、たった一回で超ダメ出しされた 挙句、 千数千年以上も先の世まで、下半身能力を邪推される 名も無き彼に、深い哀悼の意を捧げたいと思います。

ひさびさに書き下ろしたのがコレって…どうよ…?

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