戯曲“水の羽衣”輪舞曲

なにがどう戯曲かと言われると激しく困ります…との書き出しも表では久しぶりです。
マルチェロ団長時代の、聖堂騎士団員のマルチェロトークです。今回は猛暑をネタにしてみたいと思います。
今回は、な、なんとっ!!シリーズの良心トマーゾ(とジョゼッペ)がトークにいません。





登場人物


グリエルモ…スキンヘッドのヒゲ。このシリーズ最右翼の団長好き。彼のアタマの中には団長のエロいトコしか入ってないんじゃないかという風説が囁かれている。基本的に吼える男。

アントニオ…髪が眉上の美形団員。丁寧で冷静な言葉遣いで、サラリと珍奇なエロ妄想を口走る男。実は、(団長除く)聖堂騎士中で一番ヤバい人なのではないかとの風説が囁かれている。

カルロ…チビな拷問室見張係。拷問陵辱妄想のプロ。妄想を実行に移さないのは、良識が故なのか、それともそっちの方が萌えるからなのか…それは彼以外誰も知らない。ともかく、見た目では何考えてるんだかまったく分からん男。

ククール…食欲と睡眠欲と性欲と兄への欲情という、四大本能で生きている聖堂騎士団…というより世界レベルの問題児。とても美形。

エステバン…パルミド出身のチンピラ。別名野良猫。トマママがいないと暴走から戻ってこれない。

マルチェロ…卓越した剣の技量、怜悧な頭脳、頑健な肉体、強固な精神力に加え、ほとばしるエロカリスマによって団員みんなの心をガッチリ掴みまくっている聖堂騎士団団長。ちなみに最後のは当人は自覚ナシ。だからこそ毎日毎晩、うっかり妊娠しそうな視姦の嵐の中で生きていけているのである。











女神が罪人を閉じ込め給う灼熱の地獄のような暑さの1日。

聖堂騎士たち、中庭にて僅かな涼を楽しむ。


エステバン「あー、暑ィーっ!!クソ、なんでこの暑ィのに、 トマーゾがいねえんだよっ!!」

床に転がりながら不平を語るエステバンに、聖堂騎士アントニオ、冷笑を向ける。


アントニオ「この暑さと、聖堂騎士トマーゾと、何の関係があるというんです?」

聖堂騎士エステバン、心から不愉快そうな顔をする。


エステバン「なぁに言ってやがる。この暑いときにゃ、 トマーゾに抱きつくのがイチバン なんだよ。」

アントニオ「それは『寒い時』の間違いでしょう?」

聖堂騎士アントニオ、軽く流そうとするが、聖堂騎士エステバンは譲らない。


エステバン「分かってねェな、 眉上。 トマーゾにだったらなァ…」

二人が不毛な言い争いをしている所へ、聖堂騎士ククール、中庭の水に手を浸しながら呟く。


ククール「つかさ、 水でも着れたら 涼しくていいだろーな。」

グリエルモ「ほう、それは良い考えだ。吾輩も暑くて叶わんからな。着れるなら…」

聖堂騎士カルロ、周囲は暑い暑いと言っているのに、汗もかかずに。


カルロ「小官がかつて異端審問官として各地を巡っておりました時に、そのような話は聞いたであります。確か、 水の羽衣 と申しまして、雨露の糸で織り上げられた衣服があるとか…」


聖堂騎士アントニオ、エステバンとの諍いを止め、頷く。


アントニオ「それは涼しそうで良いですね。」


聖堂騎士エステバン、負けじと。


エステバン「聖堂騎士団で採用して欲しいモンだぜ。」

一同、エステバンの発言をスルーしかけるが、聖堂騎士カルロ、ぽつりと呟く。


カルロ「我が騎士団で採用されるのでありましたら、当然、 マルチェロ聖堂騎士団長もお召しになるということでありますな。」












一同慄然












凍りつくような沈黙の中、 アホの子ククール(超絶美形) が口火を切る。


ククール「シースルーだんちょーどのーっ♪」












一同、再度慄然












再度凍りつくような沈黙の中、聖堂騎士アントニオが、恐る恐る確認する。


アントニオ「スケスケ ですよね?」

グリエルモ「ぐわばっ!!」

聖堂騎士グリエルモ、奇声を発して倒れ伏す。


聖堂騎士エステバン、怖々続ける。


エステバン「どこまで透けちまう ンだ?」


グリエルモ「ごふわっ!!」

聖堂騎士グリエルモ、奇声を発して倒れ伏したまま、 脳天から血を噴き出させる。







しばしの沈黙。

聖堂騎士カルロ、淡々とした口調で語る。


カルロ「小官が耳にした情報では、水の羽衣は魔法力と意識によって泡やさざ波を生じさせるため、普段装備した状態では素肌が透けることはないそうであります。」

ククール「えー、つまんねー。ぶーぶー。」

聖堂騎士ククール、不平を述べ立てるが、聖堂騎士グリエルモ、 ドタマから血を流したままとはいえ 起き上がり、爽やかに笑みを浮かべる。


グリエルモ「はは、はははは、左様であろうな。はは、ははははは、 吾輩はトーゼン、そのような事はとうに分かっておったわ、はは、はははは…」

一同、聖堂騎士グリエルモの哄笑に、 何だかかなり元気がない 事に気付くが、指摘はしない。


聖堂騎士カルロ、周囲の空気に気付いているのか、再び淡々と続ける。

カルロ「つまり、 意識が無い状態 ならば、泡やさざ波は生じないということでありますな。」







一同、聖堂騎士カルロの発言の意図を一瞬把握し損ねる。

アホだけど無駄に頭の回転だけは速いククール(超絶美形) が、最初にその意図を見抜き、大声で叫ぶ。

ククール「つまりさー、寝てるあに…じゃなくてだんちょーどのは、スケスケってコトだよなっ!?」












一同、白日のもとに晒された驚異の真実に、しばし息を呑む。












エステバン「ね、寝てる時だけ スケスケ か…ソレはソレで かなりグっとキちまう かもな。」


アントニオ「素裸なら平気ですが、下手に衣を纏っている… にも関わらず鮮明に見えてしまう というのは…かなり…」


当然のように、聖堂騎士グリエルモ 頭の血管3か所から血を吹いて 悶絶中。







一同、しばらくブツブツと呟いているが、聖堂騎士アントニオ、気を取り直したような笑顔で。

アントニオ「ま、まあ、 どうせ手元にない ものについてあれこれ考えても仕方がありませんよ。」

エステバン「そ、そうだな。 どのみち無ェモン だしな。」

聖堂騎士アントニオと、聖堂騎士エステバン、珍しく 微笑みあって 互いに互いの言に同意する。

聖堂騎士カルロ、無表情のまま小首を傾げる。


カルロ「しかし、意識があると透けないというのは非常に残念でありますね。 異端者を拷問するマルチェロ団長の躍動する筋肉が微に入り細に入り拝見出来る 素晴らしい衣でありますのに。」







トマーゾ「聖堂騎士トマーゾ、ただ今帰参致しました。」

ジョゼッペ「同じく聖堂騎士ジョゼッペ、ただ今帰還。」

入口付近で声がする。



エステバン「お、ようやくトマーゾが帰って来た。しっかし遅かったな。」

ジョゼッペ「おお、諸君。この中庭にお揃いで何の用件かね?」

トマーゾ「すまんすまん、礼拝先で 非常に素晴らしい頂き物 をしたんでな。しかしまあ、みんないくら暑いからと言って、こんな所で油を売ってると…」












カツーンカツーンカツーン

特徴的な軍靴の音。

一同、もちろんグリエルモも ドタマから血を噴き出したまま 敬礼する。












マルチェロ「おやおや、随分長い任務であったな。其れ程重大な用件があったのかな?」

ジョゼッペ「ハッ!!敬虔なる先の善意と、何より私の素晴らしい祈りにより、そうお聞きください!!礼拝先にて…」

トマーゾ「非常に素晴らしい頂き物 を致しました。マルチェロ団長。」

聖堂騎士トマーゾ、 特に悪意はなく聖堂騎士ジョゼッペの話を遮り、 頂きものを取り出す。



トマーゾ「遥か隔絶された大地にて、エルフが織るとも伝えられる 水の羽衣 という珍品が…」

「みずのはごろもぉっ!?」

一同、思わずハモってしまう。

マルチェロ、トマーゾ、ついでにジョゼッペ、それぞれ一瞬驚きの表情を浮かべる。


トマーゾ「…何か?」

マルチェロ「構わん、続け給え。」

ジョゼッペ「いや、騎士たちが驚くのも道理というもの。これは…」

まったく悪意なく聖堂騎士ジョゼッペの話を遮り、 報告を行う。

一同、 固唾を呑んで 事の成り行きを窺う。







トマーゾ「…という事で、戦闘中の装備品としてももちろん優秀ではありますが、先方では この猛暑対策として身に着けて頂きたい ということでした。」

聖堂騎士団長マルチェロ、深く頷く。


マルチェロ「確かにな。 この熱帯夜対策に良さそう だ。」












ごくりっ

一同思わず、 生唾を呑み込む。


聖堂騎士マルチェロ水の羽衣を受け取って手触りを確かめ、 彼にしては機嫌が良さそうに 続ける。












マルチェロ「早速、オディロ院長に差し上げて来ようっ♪」
























聖堂騎士団長マルチェロが弾む足取りで去った後。

聖堂騎士トマーゾ、一同の 凍りつくように冷たい目線 に気付く。


トマーゾ「な、何だ、一体?俺、何かしたか?」


困惑する聖堂騎士トマーゾの横で、聖堂騎士ジョゼッペ、目を輝かせる。

ジョゼッペ「私には分かったぞ!!さては諸君ら、マルチェロ団長があの水の羽衣をお召し下さると期待したな。ははは、確かに私も…」

悪意など欠片もないのに聖堂騎士ジョゼッペの話が耳に入らず、 トマーゾ「エステバン?俺、一体何を…」

聖堂騎士エステバン、ママにスネてみせる子どものような表情で言う。


エステバン「トマーゾ、お前さぁ…」

トマーゾ「あ、ああ…」

エステバン「空気読めよっ!!」

トマーゾ「えええ?」


ジョゼッペ「だから皆、何で私の発言を無視するのだっ!?」


























院長室。

オディロ院長、水の羽衣を纏って。


オディロ「おお、確かにこれは涼しいのう。この院長の離れは水に囲まれてはいるものの、窓がロクになくて暑くて叶わんかったから、嬉しいものじゃ。」

マルチェロ「御喜び頂けて、このマルチェロ、幸せです♪」










終幕


2010/8/25







やっぱり、にゃんこは性格が175度くらい変わったな。でも、 ジョゼッペがキャラ立って本当に良かった です。

水の羽衣はゼシカしか装備出来ませんが、 ホントのホントに寝てる時スケちゃうんでしょうか?

まあ事実そうだとしても、拙サイトにかかると、 野郎とスケ妄想 とかに成り果てちゃうんですけどね。

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