世界の中心で愛を叫ぶ

韓国版も出たコトですし、たまにはパロってみようお涙頂戴作品。
DQ8世界での世界の中心といえば○○○。
そして○○○といえばあのイベント、あのイベントと言えば…○○○○○。
















激戦を終え、男は傷だらけの体を引きずり、立ち去ろうとする。

けして慈悲は請わない。

なぜならそれは、彼には最も似つかわしくはない事であるから。






















青い瞳が彼を凝視している事は、分かっていた。


















男は、手袋の上にもう何年も嵌めてきてた指輪。



長い間、彼の存在そのものであったと言っても過言ではない地位を表す指輪を抜き取り、青い瞳を直視せずに後ろ向きに投げた。











「これ…あんたの聖堂騎士団の 指輪か…?」






聖堂騎士団長の指輪。
身に付けたものの、武力と信仰心を更に高めてくれる、女神に祝福された指輪。



「貴様に くれてやる。……もう 私には無縁のものだ。」

武力において敗れ、女神を裏切った自分に、どうしてこの指輪を嵌め続ける事が出来ようか。

男は足をひきずり、自らの野心が壊滅させた聖地を離れようとする。


「……ねえ ククール。放っといていいの?あんな ひどいケガしてるのに。ねえってば!」
甘い女だ。

先ほどまで自分を殺そうとしていた男に慈悲をかけるなど。







「…………。」

青い瞳と、銀色の髪をした男は何も言わない。



ああ、それでいい。

お前はそれでいい。




それでこそ自分は…

















「兄貴…」

感極まったような声だった。















「…っ」

痛みがひどいのに、ついつい男の唇に小さな笑いが浮かぶ。



本当に馬鹿で甘い男だ。



私は慈悲は受けない男だと、一番良く知っているはずなのに…





「兄貴…」

泣き出しそうな声は、少しづつ近付いてくる。




何をする気だ…

そう思うが、男はかぶりを振って、さまざまな思考を打ち消した。


何をして自分を引き止めようとしても、自分には


振り払う


という以外の選択肢などない事を、青い瞳も間違いなく知っているのに…。





「兄貴…」

青い瞳は三度、男を呼ぶと続けた。






















「ついに…ついにオレのプロポーズを受けてくれたんだね!?」
















は?

青い瞳の発言が、男の怜悧な脳を真っ白にした。

いや、確かに、人生の晴れ舞台、人生の頂点において、天国から地獄にまっさかさまに引きずり落とされ、しかも瀕死の重傷で、更にその怪我を負わせたのは実の弟一行という襲い来る災難は、彼の脳の働きをいつもよりも微妙に妨げていたかもしれないが、それでも


ワケが分からない…

















だが、青い瞳の愚弟は、声をうるうる潤ませながら続ける。






「ゴメンな兄貴!!ホントならオレからプロポーズの指輪は渡すべきだったんだけど、 オレって定職についてないから、給料の三か月分って相場が分からなくて …でも、兄貴の方から指輪くれるとは思わなかったよ。 兄貴ってオクテに見えて、意外と積極的な人だったんだね♪」






落ち着け…

男は息を整える。


先ほどまで暗黒神にのっとられていたのだ、思考が混乱する事は十分ありうる。

聖地崩壊の大爆音で耳が少々おかしくなっていたとしても、なんら理解不能な事態ではありえない。






男の背後では、青い瞳は嬉しそうに、新居の壁紙はキュートにサーモンピンクか、アイボリーホワイトかという話を延々と語っているように聞こえる。


幻聴だ…

男は必死に耳鳴りを直そうとした。






「どうしよう、ウエディングドレスはどっちが着るべきなのかな? オレ的には兄貴に着て欲しい んだけど、絵的にはオレが着た方が似合うかなあ …なんせ、純白のドレスに長い銀髪だろ!?ま、最近はいろんな式があるから、 新郎がドレス着るのもアリ だよな!?式は夜にしよーな♪絵的に美しいから♪」





「…」

うっかりいろいろとツッコミそうになるが、男はその衝動を必死に抑えた。


早く消え去れ、幻聴





青い瞳の男は、まだまだ語り続けていたが、ふと気付いたように声のトーンを落とす。


「そうだよ…バージンロードが問題だよ…なんせ、バージンロードを歩くのはバージンの新婦 でなきゃ…」




一体ナニが問題なのだ?一番の問題は貴様の爛れた脳みそだろうが!!


青い瞳は、それでも無理に明るい声を作って続ける。




「心配するなって、兄貴♪オレが バージンロードを歩く兄貴がバージンでない なんて事をいつまでも愚痴愚痴いう ケツの穴の狭い男だと思うかよ?」







周りの空気の温度が、一挙に三十度ほど下がった。












凍りついた雰囲気の中、男はうっかり

何で知ってるんだ、貴様!!

と叫びかけるが、それはいくら聖地ゴルドでの法王就任演説などという公的極まりない場において、そして自らは法王という身分において、 王と法王と神の権威を全否定する という、 相当イタ恥ずかしい 演説を朗々とした男でも さすがに羞恥が勝った ので、彼は肩をふるふると震わせて、なんとかその衝動に耐えた。






青い瞳の愚弟は、そんな男の気持ちに一切気付かず、まだまだ続ける。


「兄貴…オレは兄貴を 愛してる から、全然気にしてないからね。うん、オレ知ってるよ。兄貴は ぴゅあぴゅあなハート を持ってるってコト。だから兄貴が、 ニノ大司教を始め、サヴェッラの法王庁の奴等に、 兄貴のキュートなお口とか、セクシーなケツとか、もっといろいろ イヤン♪ なトコとかに、あれやこれや、いろいろとドロドロしたり、粘っこかったり、白かったりするモノを流し込まれて たとしても、 オレ、全然気にしないから!!」






周囲の生き残った善良な一般市民及び、聖堂騎士団の生き残りの 有得ないほど痛い視線 を浴びながら、男は

「惨めに生き延びろとは、こういう意味か!?」

と愚弟に叫びたかったが、うっかり叫んでしまうと、いろいろ肯定した事になってしまうので、歯をギリギリ噛み締めてその衝動に耐える。






愚弟はそれでも続ける。

「ホントだって、オレ気にしないって、マジ気にしないったら!!だってそれは兄貴が
『これはのし上がるための手段に過ぎん』
って思って我慢してたコトなんだから。たとえ兄貴がそのクセ、 演技にしちゃかなり艶かしく腰を振って ようが イッたフリにしては、すげえあんあん喘いで ようが ニノみてえなチビデブハゲの俗物のオッサン相手に、かなり可愛く媚を売って ようが やっぱ年寄りが多いから、うっかり途中で役に立たなくなっちまって、途中で終っちまったりするとカラダがほてって眠れなく なろうが だから、聖堂騎士団員相手にウサを晴らしてやろうとかなり本気で誘い受けかけてみたり しようが さすが頭文字がMだけあって、手ひどくされればされちゃうほど感じちまう淫乱マゾ体質 だろうがオレ、マジ全然気にしてないからねっ!?!!」






男は

「貴様一体、どこから見ていたっ!?!?」

と叫んで愚弟を殴り倒したい衝動で、痛みすら感じないほどだった。






愚弟はそれでもまだ凝りもせず、無駄に甘く囁きかける。


「大丈夫、オレは全てを受け入れるよ、兄貴♪それに、オレ優しくて上手だから、マグロでいいんだよ。あいつらみたいに 無駄に過剰で恥ずかしいサービス とか、要求しないから♪うん、だから兄貴のあの部分が ガバガバでも…うーん…ガバガバ…ガバガバ…(ぶつぶつ) でも、戦闘中にあんだけ動けてたってコトは 痔持ちじゃない ってコトだから、オレ平気だよ!!






男は

「貴様…あんだけシリアスな戦闘中に、一体ナニに注目してたんだ… 場の空気を読め、場の空気をっ!!」

と、 激しく自分の空気読まなさを棚上げした発言 をしたくなったが、腕に爪を付き立ててなんとか耐えた。






愚弟は、おそらくは 崩壊してしまったゴルドの女神像より慈愛深い笑み を浮かべ、続ける。

「兄貴、全然オレの事信じてないだろ?あ、心配しないで兄貴♪ “オレの”は、偉大なる大神 だから♪…あ、兄貴ってば錬金釜持ってないから、偉大なる大神がどうすげえか知らねえだろうけど…じゃ、どうすげえのか教えたげるな♪まず素材1は

ビッグボウガン なんだ。コレはまあ、説明する必要もねえよな。 ビック破壊力バツグン♪ なんだ。んでもって素材2は

ケイロンの弓 …あ、兄貴知らねえの? 馬だよ、ウマ!!そんでもって 回復効果まである つーから、癒し系美青年なオレだろ?そして最後に、素材3は

エロスの弓 おう、ガーターベルト錬金してるから 追加効果、混乱!!そりゃあもう めくるめく陶酔の世界♪」

その三つが錬金合成されてんだぜ?そりゃあもう、兄貴も 初夜は期待しまくってくれよ♪ キタイはぜってぇ、裏切らねえよ、ハニー♪」
































ぶちいっ!!

愚弟以外の全ての人間が、いや、犬に至るまでが、そんな音が鼓膜に叩きつけられたのを確かに感じた。



































「ククール…」
男は振り向くと、 いっそ怖いまでの優しい笑顔 で愚弟に微笑みかけた。


「なんだよ兄貴ってばー、可愛い笑顔しちゃってぇ♪もうっ 抱きしめて、チューしちゃうから オレの胸に飛び込んでおいで、ハニー♪」






男は、つかつかと愚弟に歩み寄った。

「あーにきっ(んーっ)♪」































ゴヴヴあアあああああばぎい゛い゛い゛い゛い゛



































それは、人類史上、最も完璧にキマったコークスクリューであった…
と、証人たちは語る。



































ククールの首は、軽く三回ひねられ、

さらにアクセルがかかり

華麗に四回転をキメるかという直前まで回転して、



ようやく止まった。



































かつかつと、重傷の身でありながらも、昂然と頭を上げて去っていこうとする男に、エイタスは声をかける。

「あの…」
「なんだ…」

エイタスは、パーティーのリーダーとして、やはり“何か”言っておくべきだと思い、続きを口にした。


「マルチェロさん、あなたの… あなたのスキルは剣とカリスマとムチは確定だと思っていたんですけど、 格闘スキルもお持ちだったんですね。」


男は、おそらくとても真面目で責任感が強く、礼儀作法をしっかり守るべきだと考えているこの青年の面持ちを見つめ、



「ふつつかな弟を押し付けてすまなかった…」
と言い、めったに下げない頭を軽く下げて…立ち去った。








































エイタスたち一行は、心底 首を3.9回転ヒネられた銀髪の物体 を置いて去りたかったのであるが、さすがに今までのよしみがあり、…そして何より、 こんな死体を引きずって歩くのはもっと嫌だった ので、一応、ザオリクをかけてやった。






宙に高く浮いた死体の首が、四回転に一分足りないだけ逆回転するという 激しく気色の悪い復活シーン の後、HP満タンで復活したその銀髪の生物は、 テンション100 で叫んだ。

「兄貴はっ!?」






「…」
エイタスは 生暖かい笑み を浮かべて、ゴルドの出入口(の残骸)を指差すと、生物はウザいくらい大騒ぎして叫んだ。

「オレの何が間違ってたって言うんだ、兄貴っ(泣)!!」

「何が?…あんたの存在全てが間違ってるわ。」

ゼシカは、素な顔でツッコミを入れてやった。






「オレと兄貴は兄弟なのに…どうしてこんな風になっちゃったんだろう…」
銀髪の生物はさめざめと泣き、エイタスにすがりつく。


エイタスは、 とても優しく微笑んで 生物に語った。

「ねえククール、僕は君とは血が繋がっていないから、君たち兄弟の事に口出しすべきじゃないかもしれない。だけど…」
「ど?」
「もし、僕が君と血が繋がった兄弟だとしたら…」
「ら?」

「間違いなく君を憎んだだろうね。」








「なんでー(泣)」

一人泣き続ける銀髪の生物の後ろで、ヤンガスは優しくも哀切なメロディーの口笛を吹き続けたという。


それが、井上YO!SUI!の「巡恋歌」である事を、ジェネレーションギャップから、誰も気付かなかったという…









終わり


2006/8/23










井上YO!SUI!の「巡る恋」は、カラオケに入ってない事が割と多いですが、かなりの名曲ですのでぜひご一聴下さい。ちなみにサビは
「いつまでたっても恋の矢は、貴方の胸には刺さらないー♪」
という事なんで、つまりそういう事です。そりゃ、ククの“偉大なる大神”は兄にゃ刺さらないだろうな(笑)
ちなみに、偉大なる大神の錬金レシピって、よく考えると激しくエロくないですか?

兄のスキルですが、剣とカリスマとムチは確定のようですが、残る二つが各サイトさまで草草あるようですね。 拙サイトでは一応、格闘と鎌ということにしておきます。
理由
格闘…スキル100でハートブレイクショット(高確率で敵を即死、ボスにもマヒ効果を追加で与える。コークスクリューが変化)…が使えるとべにいも的に嬉しいから。
鎌…かまいたちが使えるから。ザラキーマとか死神の鎌とか、激しく物騒な技を使えて欲しい!!さらにビジュアル的にすげえかっけーと思うから。

兄は回復呪文が苦手だと嬉しいです。ええ、Lv1でうっかりザキを覚えちゃうくらいの苦手さ だと嬉しいですね。

という訳で、この後ククールがどうしたかというと、「オレの兄貴らぶらぶけーかく」に続いたわけです、ええ。

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