私が○○で○○になっても

せっかく 2月1○日はニノマルの日 なので、べにいもも優しい心になり、心温まる話を書きたいと思いました。

え?去年とニノマルの日が違う?
気にしない、気にしない。一休み、一休み。

“いい話”ですので、みなさま、 感涙を拭うためのハンカチを用意して お読みください。










前略、世界最強の美青年のこのククールさまは、最愛の兄貴を求めて全世界をさすらっています。



ちなみに、この旅に出るにあたってオレは女神さまから啓示を受けた。





「汝、 アホの子ククール よ。汝の兄は我に対して反逆いたしました。よって、我はかの男に罰を加えました。汝、 アホの子ククール よ。汝は罰を得し兄を それでも愛することが出来ますか!?」





オレの回答はもちろん

「超ヨユーだぜ、女神さま!!」

に決まってた。



だって、どんな罰をくらってたって、兄貴はオレの唯一の家族で、そして 最愛のハニー に決まってるもんな。



って言ったら、女神さまは 生暖かい笑み を浮かべて、そして啓示は消えた。












そして。

オレの超高性能兄貴レーダー は、ついに兄貴の気配を捉えた。





「ククール…」

夢にまで見た エロすぅえっくしーバリトンっ!!!


「あ、兄貴…兄貴…」

オレは、 股間を押さえ ながら、声のする方への歩み寄った。





「来てしまったか、ククール…貴様にだけは、 罰を得しこの姿を見られたくはなかった がな…一応、兄として忠告しておいてやる。 貴様は見た事を必ずや後悔するぞ? それでも良いのか?」

茂みに隠れてるらしー兄貴は、顔も見せずに自嘲気味にオレに言う。

「もうっ、兄貴ってば相変わらず 恥ずかしがり屋さんっ♪ なんだからっ♪どんな姿になったって、 オレは兄貴のことを心から愛してるよっ♪」



「ふふん…」

冷笑が聞こえた。



「貴様の愚かさは重々承知のつもりだったがな…まあいい、そこまで言うならば、今の私の姿、見せてやろう。」

がさごさがさ(茂みから出てくる音)。





















「…」。

























ダレ?アンタダレ?。













「分からんか、私だ、マルチェロだ…」。











































「う゛ぎゃんっ!!」





オレは、 不意にサイクロプスに踏んずけられたワンダーフールのような悲鳴 を上げた。

















「だから言ったろう…」

「ぎぃいやああああああっ!!その外見で、兄貴の声で喋らないでーっ!!!!」



オレは ダンゴムシに進化したキャタピラーのように丸まって あたりを 絶望のあまり転げまわった。











だってさ…だってさ…オレの兄貴が…オレの愛する兄貴が、 オレのエロセクシーな兄貴 が、 頭がバーコードで、腹の弛んだ中年のオッサンになってたんだもんっ!!!!!!(血涙)





兄貴はなんやかんやとシンガクテキにむつかーしコト言ってたけど、オレはそんなモン頭に入っちゃいなかった。



ただただ兄貴の、 デコが広いゆーより、デコとアタマの境目が完全になくなった上に、無理にごまかそうと、横じゃなく後ろから無理やり持ってきた縦バーコードのドタマ とか、 タテじゃなくて横に、もう何段だか数えるのもイヤになる、メタボ度250%のタルタルな腹 を眺めて、 体内の血が全て血涙になって流出した んじゃないかと思うくらい、泣きまくった。















「さてククール…」

どういう原理だかわかんねーけど、 声だけは昔のまんまのエロセクシーボイス で兄貴は言う。


ケド、ソレって、 ヨケー痛イ!!



「貴様は先に言ったな。

『どんな姿になったって、オレは兄貴のことを心から愛してるよっ♪』

と…さて、再び問う。ククールよ… 今の私を本当に愛せるのか?」










分かってる…これは兄貴得意の嫌がらせだ。

オレが笑顔で

「もっちろん♪」

と答えればイイんだ…それは分かってる…分かってるケド…














「ムリーっ!!!!!!」





オレは、ムリーちゃんの気持ちが、痛いほどよく分った。












「クックックックッ…」

兄貴は、 やっぱり声“だけ”は昔のまんまのエロセクシーボイス で冷笑する…ああ…オレは初めて、 自分の良すぎる視力 を恨んだ。













「自らの行いが生んだ結果だ、今更繰り言は申すまい。そして、貴様に敗れ、

『あんたはみじめに生き延びるんだ。』

と言われた身だ、自ら命を断とうともしまい…だがククール…」

兄貴はそして、


ニヤリ

という、昔の兄貴にはイヤというほど似合ったけど、 今の兄貴には無残なほど似合わない 表情で言った。








「貴様がこんな姿の兄など消し去りたいと思うのなら、黙って殺されてやる。」














オレは、我知らず、腰のレイピアに手がのびていた。










「待つのじゃーっ!!!!」

でっかい声がして、オレと兄貴は振り向いた。



「…ニノ大司教…」

兄貴が茫然と呟く。



聖堂騎士を引きつれて、それでもいい年して全力ダッシュしてきたらしいニノ…今は法王だけど…は、ぜひぜひ息を切らしながら、 見るも無残なクリーチャー と化した兄貴を見て、言った。



「…本当に…女神の仰った通りじゃ…」



兄貴は、ある意味オレよりニノのオッサンには、今の姿を見られたくなかったみたいだ。

ま、そーだろーけど。



でも、今更隠れようもねーし、開き直ったように言った。



「こんな無残な姿の私を見て、さぞや御満足であらせられるかな、ニノ大司教…いや、今はもう法王であらせられたか。」

ニノのオッサンは何も言わない。それでも兄貴は続ける。


「御覧の通り、涜神者マルチェロは、いと高き全能の女神の罰を蒙り、かくも無残な姿と成り果てました。女神の裁きの正しきを説かれる貴方には、さぞや御満足に御覧になられるでしょう。」

それでも何も言わないニノのオッサンに業を煮やしたのか、ついに兄貴はマジギレしたように叫んだ。



「貴様はかつての私を愛したかもしれんがなっ!!その姿は無残に成り果てたのだ!!貴様は満足だろう!?貴様を裏切った者の“正当な”末路をその目で見たのだからなッ!!」




「…」

兄貴の叫びを黙って聞いていたニノのオッサンの目から、 一筋の涙 が流れた。






ニノのオッサンは言う。



「儂の不明であった…」

「な…」

絶句する兄貴に、オッサンは続けた。



「確かに儂は、そなたの整った目鼻立ちや、 超絶的なナイスバディ や、ちょっと額が秀ですぎているとはいえ 艶々した黒髪 を愛した。それは事実だ、じゃが…それは 儂の不明であった…」

「…」


「煉獄島に堕とされ、死の危険を感じ…そして先日、女神の啓示を聞いて、儂はようやく悟ったのじゃ。 儂が真に愛するべきは、そなたの傷つきやすい、美しい魂であることにっ!!」


「…奇麗ごとをッ!!貴様は今の私のこの 弛みまくった腹の肉 や、 もう誤魔化しようもない薄い髪 を、 それでも愛せるというのかっ!?」



腹をタプタプ揺らし ながら、 バーコードを風に靡かせ ながらの科白に、ニノのオッサンは、 春風のように爽やかに 笑った。



「はっはっは、マルチェロよ、笑わせるな。腹の弛みも、髪の薄さも、そなたの専売ではないわ。」

そして、腹をたぷたぷと叩きながら、続けた。


「加えて、儂なんぞはチビじゃぞ?まだまだ甘いわッ!!」


「…」

そして、ニノのおっさんは、 オレだったら直視したら正気を失いそうな 兄貴をしっかと見据えて、そして言った。














「昔と変わらず…いや、昔以上に、愛しているよ、マルチェロ。」














ドン引くオレと、ニノのオッサンのお供の聖堂騎士ズ
























兄貴の瞳から、一筋の清らかな涙が零れおちた。














「その御言葉…地獄の業火に、千万回焼かれ、そして崩れ落ちようとも、決して我が魂から消え去ることはありますまい…」

「マルチェロ…」


二人は、


ひし

と、抱き合った。














再びドン引くオレと、ニノのオッサンのお供の聖堂騎士ズ
























「汝等の真の愛情、確かに見届けました。」

天から声が降り注いだ。



「愛は世界を救います。」

女神さまらしき声は、 二十四時間テ○ビ みたいな、 限りなく陳腐な科白 を吐いて、そして続けた。



「ならば、ニノよ、そなたの愛が、マルチェロを救ったと考えましょう。なにせ我は、自分で言うのもなんですが、 ゴッツい慈愛深い女神 ですので。


女神さまらしき声は、 自分で言うにはかなりズーズーしい科白 を吐くと、またまた続けた。



「ですからマルチェロよ、ニノの愛に免じて、そなたに与えし罰、取り消しましょう。」




















しゃららららららららんっ

無駄に演出過剰気味な神々しさの光 が兄貴に降り注ぎ、そしてその後には、 前より、当社比2.5倍はエロセクシービュディフォー になった(なんだかデコの後退も微妙に直ってる気がする)兄貴がいた。



























どうべきごきばきいっ!!

兄貴は、まだ抱きついてない(もちろん、めいっぱい抱きつく気は満々だったけど)オレの、 アバラを十五本くらい殴り折る と、ニノのオッサンに、 咲き誇る花のような笑み で向かい合った。



「マルチェロ…」

「ニノたま…」




































そして二人は、 やっぱりドン引きまくる聖堂騎士ズ と、 心と体に負った深い傷の痛みで地獄の亡者のように転げまわるオレ完全にムシ して、 いつまでもいつまでもひっしと抱き合っていましたとさっ!!













2008/2/10




































「君がどんなに年をとっても、どんな姿になっても愛しているよ。」
という科白ほど信じてはいけないものは、この世にないと思います。

だから、第四部の康平クンは 真の漢 だと断言します。
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