我が愛しの母上さまに
前にさまに
「遅くなってごめんなさい」
というメールと共に頂いたこのイラを
見せびらかすだけのため
の駄文です。
サーベルトが非業の死を遂げ、そして、ただ一人残った娘のゼシカが旅に立って、火の消えたように静かになってしまったアルバート邸。
アローザ奥さまが、一人静かに読書なさっていると、村の老女が赤い花束を手にして立っていました。
「あらあら、美しい花束を手にして、どうしたというのです。」
アローザ奥さまが穏やかに微笑まれながら立ち上がると、老女は赤い花束を奥さまに手渡しなさいました。
「あら、わたくしに?」
奥さまは受け取られて、その花束が赤いカーネーションであることにお気づきになりました。
「これは…」
「母の日の、贈り物ですよ、奥さま。」
そして老女は、淡々と続けました。
「サーベルト坊ちゃまから。」
「まあっ!?」
驚きのあまり花束を取り落とした奥さまを、老女は黙って見つめます。
「冗談だとしたら、あまりに悪質ですよ、あの子は…」
そして奥さまは、じっと沈黙なさいます。
奥さまの大事な「女神の愛しい子」は、とうに、女神のお膝元に召されてしまっていることを、このリーザス村の者で知らぬ者はいないのです。
「ご覧下さい。」
老女は花束を拾い上げ、奥さまに再び差し出します。
「こちらを。」
奥さまは、老女が示した小さなメッセージをご覧になります。
その小さな紙には、本当に小さく、サーベルトの字のクセを持った字で、こう書いてありました。
我が愛しの母上さまに
奥さまは、花束を再びお受け取りになります。
老女は淡々と語ります。
「ええ、この婆がサーベルト坊ちゃまの墓守を致していることは奥さまもようご存じでしょう。その婆が保証致します。この花束は、間違いなくサーベルト坊ちゃまからですとも、何せ、下さったご当人が、
『サーベルトさまからだ』
とおっしゃったんですからねえ。」
奥さまは黙って、花束の香りを愛しそうに嗅がれました。
「ええ、確かにわたくしの大事な子どもからです。あの子は本当に、母親思いの子ですから。」
そして、寂しげに微笑まれました。
「ええ、ええ、本当に、お母さま思いの立派なお子さまで。」
老女は淡々と答えました。
終
2010/5/9
メノさまのお描きになる奥さまは、
チビおくさまも
少女おくさま
も大変可愛らしいですが、やはりリアル奥さまもお美しいという、まったく文句のつけようがない素晴らしい奥さまだということが、よくお分かりであると思います。
ありがとうございます、メノさま。
ようやく掲載することができました。ほんとうにありがとうございます。
メノさまに乾杯っ!!