はじめに その二




「メラゾーマ!!」
おもいっきし聞き覚えのある声の、暴れ牛鳥っぽい外見をしていたそれは、割りとあっけなく燃えあがりました
「…ゼシカ?」
ククールがちょっとおそるおそる尋ねると、ゼシカはすごくいい笑顔で
「まだ狂暴な魔物もいたんだ。危なかったね♪」
と答えました。


めらめらめら…


暴れ牛鳥らしき物体は、勢い良く燃えていましたが、やがてもそもそと中から這い出してきました。追加でベギラゴンを放とうとしたゼシカをなんとか押し止めたククールの耳に入ったのは


「…会いたいんじゃないのか?」


という、ちょっと恨みがましい呟きでした。


「今更なんなんだよ…」
ククールは、メラゾーマを至近距離でくらった癖に、軽く焦げただけのやたら丈夫な物体に話し掛けました。
(てゆーか、もっとロマンチックな再会したかったよ(泣))
ククールの中での再会シーンは、もっとこう…なんと言えばいいのでしょうか?そう、腐女子の妄想を掻き立てるような、ロマンと含みと含羞に富んだものだったはずなのです。決してこのような、暴れ牛鳥っぽい外見をした生物が兄っぽい声を発し、最愛のゼシカにこんがりウェルダンにされた中から、微妙に焼け焦げた兄が出てくるなんて、つまんない不条理漫画みたいな展開を望んでいた訳ではないのでした。


「ちょっとぉ!!なんで即死してないのよ!?」


やはり殺す気だったのかゼシカ、というククールの突っ込みもなんのその。悠然とベホイミで傷を完治させると、兄…マルチェロは言いました。


「とりあえず、私に話をさせてくれ。話が進まん。」


「だったら話が進むような登場をしなさいよっ!!」
愛するゼシカの、至極もっともな突っ込みにうなずくククールでした。


さて、マルチェロが語ったのは以下のような事でした。


聖地ゴルドでの戦闘のあと、ボロボロになった心と体でさまよった兄は、自らの罪深さをひしひしと感じたそうです。そして、四人の旅人たちが、自らが復活させてしまった暗黒神を倒して世界を救ったと知ったとき…
「私は、もう一つ、自分の罪を購わねばならないと悟ったのだ…ククール。」


マルチェロはまっすぐな瞳でククールを見つめました。

物心ついた時から、兄にはいびられたり嫌味を言われたり無視されたりする事こそあれ、こんな目で見つめられた事がなかったククールはどきどきしました。


「…私は自分の狭量から、罪もないお前をただただ不幸にしてきた…すまない…」
ククールは夢かと思いました。


あの兄が!!
あの大人気ない兄が!!
あのプライドの高い兄が!!
あの、弟を憎むあまりに世界まで滅ぼしかけた兄が!!
自分に謝罪している!!!!
ククールはあまりの幸福感に、今ならバギクロスをくらっても痛みをかんじないんじゃないかとさえ感じました。



「それと暴れ牛鳥となんの関係がある訳?」
ゼシカの一言で、ククールは一瞬にして天国から引きずり落とされました。

それはもっともな質問だったのですが、もう少し長く幸福感を感じていたかったククールは、ちょっとだけ彼女を恨みました。


兄は続けます。


「購いに、私はお前を幸せにしてやりたいと思ったのだ。」


ククールは、これが天国の幸福感かと思われるほどの絶頂感に襲われました。
「あに…き…」
嬉しさのあまり半泣きになったククールは、なんと言うべきか分かりません。


「だーかーらー!!あんたが暴れ牛鳥の皮をかぶってここにいた事となんの…」
「だが、いったいどうやったらお前を幸せにしてやれるか分からなかった」


兄はゼシカの突っ込みなどなかったかのように喋り続けますが、ククールは気にもなりませんでした。 兄が人の話をまるきり聞かないのは、今に始まった事ではないからです。


「あに…き…オレは…オレは…」
兄貴がオレを無視しないで優しい言葉をかけてくれて、弟と認めてくれるだけですげえ幸せだよ。

そう告白して、兄の胸にすがりつきたかったククールでしたが、当の兄ことマルチェロはちいともそんなククールの様子に気をとめる様子がありません。ですが、ククールは気にもなりませんでした。

兄が人の事を完全に無視してかかるのは…(以下略)




「だから私は、お前の幸せとは 何かを知ろうとここ三ヶ月ほど、ずうっとお前を付回していたのだ。」




兄はさらっと、すげえイヤな台詞を吐きました。






別にこの駄文はマルククではありません。このククールはただ 純粋に兄貴がすげえ大好きで、仲良し兄弟になりたいだけ です。ちなみにマルチェロって、絶対に人の話を聞かないタイプだとおもいます。
ところで、いつになったらアローザお母様が出てくるんでしょうね。




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