人はそれを“恋または変”と呼ぶか? その二




拙サイトみたいな貧弱なサイトで、ジャンルごとに色んな兄を、脆弱な筆力で書き分けようとしていたら、どれが兄の性格なんだかわかんなくなってきました。
うーむ、そろそろ設定資料作らなきゃな…






奥様はようやく正気に戻りました。




「まあ、きれいなお星様ですこと…」




いえ、やっぱりあんまり正気に戻ってはおられないようです。

なにせ奥様は、四十うん年の人生で 初めて!!恋のときめき 体験中なのです。そんじょそこらの十代の小娘どもとは 溜めが違います!!溜めがっ!!




奥様はうっとりと窓の外のお星様を眺め、 恋しい人と満天の星空を眺める自分の姿を想像し、さらにうっとり なさいました。






「ご覧なさって下さい、マルチェロさま。綺麗な星空ですこと。」

「マダム… 貴女の瞳の方が、何万倍も美しい…」

「マルチェロさま…」







そんじょそこらの小娘なら、転がりまわるような妄想ですが、もちろん奥様はレイディなので、 そんなはしたない事 はなさいません。ただちょっと くるくると踊ってみた りはしましたが、まあレイディとして許容範囲でしょう。




「まあ…そんな事を言われてしまったら、どういたしましょう…(ぽっ)」


マルチェロはそんな事は言わない…とも限りません。

少なくとも 寄付金の5000Gも弾んだ ら、言ったというのは紛れも無い事実です。

もちろん、アローザ奥様はそんな事とは露ともご存知ありません。
マルチェロの事は 高潔で誠実な騎士 だと思い込んでおられます。








「はあ…マルチェロさま…いとやんごとないお育ちだと思っておりましたのに…お辛い境遇でいらしたのね…」




さて、 筋金入りの血統主義者 の奥様が、 悪逆非道の領主がメイドに生ませた子 というマルチェロの生まれを聞いても、恋心が冷め果てなかったのはなぜなのでしょうか?



ええ、それが恋心の摩訶不思議なところです。



そもそも、恋の始まりは相手の長所を好きになるところから始まります。

ところが、一旦、恋モードに突入してしまうと 相手の短所も好きになってしまうのです。



たとえば奥様の場合…まあ、 あの電波な演説 が恋のきっかけになったというのは常道から激しく外れますが、そもそもマルチェロは 性格とデコ以外はカンペキ♪ な男です。むしろ、そのデコとて チャームポイントと言えない事もない ので、あの性格さえガマンできれば、激しく理想の男なのです…ええ、 その性格の破綻っぷりは、全ての長所を打ち消して余りある かもしれませんが。



ともかく、そんなマルチェロに 恋モード全開な奥様 です。今更、生まれに難があると言われようが、その難は 恋心に油を注ぐ 役割すら果たしてしまうのでした。つまり



「マルチェロさまが、実は不義の子だなんて…いえ、そんな事、わたくしは気にしませんわ。 相手の欠点を受け入れてこそ、本当の恋ですものっ!!」


という、つまりは 自己陶酔モード に入ってしまったのです。








逆境は人と恋を育てます!!


そして奥様は、逆境になると燃える方でいらっしゃいました。










しかも


「法王庁は、高貴な生まれのお坊さま方ばかりですもの。そんな中で、あのお若さで法王にまでおなりになられたのですから、さぞや大変なご苦労がおありだったのでしょう。」


もちろんです。その立身出世のためにマルチェロは、

賄賂
刺客稼業
恩人讒訴
法王暗殺

と、まあ、なかなかキョーレツな悪事を積み重ねてきたのですから。



「お生まれでいじめられた事もおありでしょう…そんな辛い…人には知られたくない事を わたくしに打ち明けてくださるなんて…」

恋する者は、恋する相手の打ち明け話を聞くのが大好きなものです。




奥様は軽快で優雅なワルツのステップを踏みながら、くるくると客間を踊りまわりました。


そして、再びうっとりと窓の外の星空を眺めると、 きらりと光る流れ星 がありました。




「あ…」

奥様はあわてて流れ星にお願い事をなさいました。





奥様はなにをお願いなさったのかって?











それは あんまりこっぱずかしい事 なので、ちょっとここでは言えません。











2006/9/5






純真で無垢で貞淑なレイディ!!
というものを書くのが、こんなに楽しいとは思いませんでした。人妻バンザイ!!未亡人バンザイ!!




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