さて、変わってゼシカです。
彼女の
駄目フィアンセ
ククールは、
兄貴とアローザ奥様は、ぜってぇなんにもねえッ!!
と断言しましたが、なんせ、あの兄貴大好きの男の発言です。
「アテにならないわッ!!」
かくして彼女は、直接母親に談判に行くことにしました。
…なら、最初からそうすれば良かったのに。
なーんてツッコミは、彼女には通じません。なにせ
思い込んだら一直線乳娘
ですから。
奥様の部屋に入ると、奥様はレース編みをしていらっしゃいました。
「おやゼシカ、貴女がわたくしの部屋に足を運ぶとは珍しいことですね。」
「お母さん…聞きたい事があるんだけど…」
「まあなんです?ああ、結婚式の日取りの相談ですか?そうね…わたくしの実家の方の親戚にも案内状を出さなければなりませんから…」
「ぶっちゃけ、マルチェロとはどこまでいったの!?」
奥様は、レース針を思いっきりその麗しいお手に突き刺してしまいました。
「…今、なんと…?」
ですが、奥様は驚愕のあまり、痛みすら感じられませんでした。
「だからー、
マルチェロとはどこまでヤったの!?
って聞いてるの!!」
奥様は、目の前がぐるぐると回るのをお感じになりました。
まさか…わたくしの
秘めに秘めた恋心
が、娘にバレていたなんて…
奥様は、今度は目の前が真っ暗になるのをお感じになりました。
ですが、より客観的な事実を奥様に申し上げることが出来るなら、奥様の内心なんて、ゼシカはちいとも読んではいません。
ただ、
仮定に仮定に仮定を重ねまくった妄想が、気付いたら真実ど真ん中だった
だけの話です。
…まあ、未来の娘婿には、バレバレだったのは事実ですが…
奥様は、
思わず卒倒しそうな衝撃
にも気丈に耐えると、ゼシカを強い眼差しで、
ぐい、
と睨みつけました。
「いくら実の娘とはいえ、わたくしの名誉を傷つけるようなその言葉…許せるものではありませんよ、ゼシカっ!!」
びくうっ!!
ゼシカは、母親のその剣幕に思わず震えました。
「そもそも、なんですか、ゼシカ!!お嫁入りも決まった身で
ヤる
などと…
破廉恥なっ!!
レイディの口にすべき単語ではありません!!」
「ご…ごめんなさい…」
母親の、
美貌の般若のような怒りの形相
に、暗黒神を倒したさしものゼシカも、ついつい謝まらされてしまいます。
「それに…何を言い出すかと思えば、わたくしとマルチェロさまが“そういう関係”ですって?一体、なにを証拠に…」
「だって…お母さんてば最近、あのデコ団長とやたら仲良くしてるじゃない?部屋に二人っきりで、何時間も一緒に話し込んでたり…」
「リーザスの塔の再建計画を練っていたと、知っているでしょうっ!?」
「…その前からじゃない…」
「ゼシカ!!貴女は、我がアルバート家を破滅から救って下さったのが、あの方と、貴女の婚約者のお二方だと知らないわけではないでしょうっ!?それともなんですか?貴女が、
相続税対策や、投資信託に堪能だとでもっ!?」
「…」
そういわれると、ゼシカは黙るしかありません。なんせこの母子は、
経済や経営にはとんと疎い
点ではそっくりでしたから。
「…だって…あのM字デコにエスコートされて、楽しくお散歩…」
「本当に頑是無い事を…淑女というものは、エスコート無しで出歩くなどしないものです!!それとも何ですか?エスコートした殿方とは、必ず恋愛関係になければならないとでも?だとしたら、わたくしがサーベルトにエスコートされていたことは、どうなるのです!?」
「だって…サーベルト兄さんはお母さんの子どもじゃない…」
奥様に
血相変えて怒られて
ゼシカは当初の勢いを失っていきました。
なんせ、そもそも妄想の産物ですから、なんの証拠がある話でもありません。
「そもそも、わたくしとマルチェロさまと、
いくつ年が違うと思っているのですっ!?姉というにも離れた年ですよっ!?
それをまた、この子は訳の分らないことを…」
そして遂に、ゼシカは母親に謝りました。
「…ごめんなさい、あたし、ちょっと錯乱してたみたい。…そうよね、お母さんがあのデコと付き合ってるハズなんかないわよね。なんせ、
あのデコとお母さんの年の差より、サーベルト兄さんとデコとの年の差の方が
遥かに小さい
もんねっ♪」
「…確かにそうですね…」
「あー、あたしってば、なに悩んでたんだろ。でも、おかげでスッキリしちゃった♪じゃ、お母さん、ゴメンねっ♪」
ばたむ
ゼシカは
スッキリるんるん気分
で帰っていきましたが、それとは対照的に、奥様は…
「…年の差…」
暗黒神が復活した時の空の色
よりも暗い気持ちに襲われていらっしゃいました。
「わたくし…マルチェロさまより、
そんなにも年上
でしたわね…」
奥様は、ご自分で口になさっておきながら、激しく落ち込まれました。
そして、
うっかり勝負下着を買っちゃった♪
事を含め、
猛烈な羞恥心
に襲われました。
「わたくし…何を舞い上がっていたのかしら…」
続いて、
胸を締め付けるような苦しさ
に襲われました。
そして
ぽたり
レース編みの上に、清らかな液体が一粒、零れ落ちました。
とんとんとん
ノックの音に、奥様はあわてて目頭を拭い、
「はい、どうぞ。」
内心の動揺を悟られないよう、できるだけ平静を装った声でおっしゃいます。
かちゃ
「失礼いたします、マダム…」
「…あ…」
入ってきたのは、マルチェロでした。
2006/10/24
べにいもはこのシリーズを書かなければ、決して!!
少女漫画的コテコテさをえがく真の快楽
を知らずに人生を終っていたと思います。
畜生…
乙女展開バンザイっ!!
どんな美しい花よりも貴女が その一へ
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