売らない☆占い その二




「王を殺せ!」とどっちを更新しようか迷いました。
迷いましたが、こっちの方が書きやすいのでこちらを更新。









「えっとぉ…占いじゃないんですかぁ?」

さすが天ボケキャラだけあって、地獄のサーベルを突きつけられても泣き出しはしない占い師の娘に、だが 同じく天ボケキャラ(邪悪) なマルチェロは、 恫喝の眼差し を突きつけます。





「あの、お兄さま…この子はただの、新米…以前かもしんない占い師だから…」

ククールはやんわりとたしなめますが、マルチェロは占い師から視線を外しません。



「そうでガス、この子はパルミド生まれのパルミド育ちのチャキチャキですガスが、 水洗便所のように ぴかぴかの心をもった子でガス。アッシがまだ駆け出しの頃から知っている子だから間違いないでガスよ?」

本気で古馴染みらしいヤンガスもそう口ぞえします。




「えっとぉ…恋占いとかですかぁ?」

あくまで天ボケな占い師の娘がマルチェロを見上げて言います。



「運がいいですねー、なんと、な、なんとっ!今ならわたしの占い師開業記念セールで、占いは無料…」

「まだ開業セールやってたの?君、オレが初めてパルミドに来たときからやってんじゃん。」

「だってぇ、お客さんが来てくんないんですものぉ。」

占い師が可愛く口を尖らせて言うと、



「とうとう馬脚を現したな、女!!」

なぜかマルチェロはそう言いました。




「兄貴?今の台詞に一体なんの…」

「開業以来占いが無料だと言うのなら、貴様は一体、どうやって食べているというのだ?」




成る程、確かに一理は有ります。





「兄貴、若い女の子なんだから、実家から通いとかだろうとか、おうちが金持ちだとか…」

「いや、この娘の親はとうに死んでるぜ?」

さすが古馴染みらしく、個人情報を得ているヤンガスです。




「いやでも、同棲してるカレシが生活費は稼いでくれるとか、実は夜はホステスだとか…あ、いいな、それ。君、お店はどこ?良ければ客になりたいんだけど…」

ちょっとカワイイ娘と見るやナンパを始める ククールを押しのけ、マルチェロは言います。





「まず…その水晶玉は本物の水晶だな?」

「そりゃあ…占い師ですものぉ。」

「宝石の価値は大きさと純度に比例する。つまり、それだけの大きさで、かつ透明度の高い水晶玉は、それなりの値段がするはずだ… 両親がいない若い娘が手軽に買える値段ではない値段 がな。」

「…」

「成る程、確かに借金という手もあろうが、この悪徳の街パルミドに、そう健全な金融機関があるとも思えんし、何より、当たる可能性の低いこのような事業に投資する者がそうそういるとも思えん。なにせ…」

マルチェロはその、 凶悪に威圧感のある緑眼 で、娘を一にらみしました。




「成る程、確かにこの世には、 夢を叶えるためならどんな犠牲をも厭わない阿呆 もいることだから、貴様が自らを借金のカタにした可能性も考えたがな…」



「いや、 占い師になりたいから身売りする って可能性まで考慮するのはどうよ、兄貴?」




「だが見たところ、水商売風ではない…が、かと言ってカタギかというと、そうでもない… 血の臭いがする…」




うら若い娘相手に、 血の臭いがする… とまで言い放つマルチェロです。

彼には 可愛くて天ボケの女の子からは血の臭いなんてしないという ジョーシキというものがないのでしょうか?




「そして、このテント内のしつらえ…確かに一見、ごく普通のいわゆる“ミステリアスな雰囲気”というように装ってあるがな…例えばこの絨毯、これはサザンビークの特産品であり、輸入物である以上、決して安くはない。まして、この品はパルミドではまだ一般には販売されていない品だ。そして…」

マルチェロはとうとうと、室内の家具が実はいかに金がかかったものかという事を暴いていきます。

ククールとヤンガスは呆気に取られて、


どうしてこの薄暗いテント内の品を、一瞬で品定めできてるんだ!?

とツッコム事すら忘れていました。





「そして…この街はいりくんでいるから一見して分かりづらいが、例の“ハッテン場”とこの場所はほとんど同一地点上にある…つまり、隠し通路の一つも用意すれば、迅速かつ隠密に犯罪行為が可能な場所という訳だ…違うか?」



「おお、ホントでガス。パルミドに住んで長いアッシですら、こことハッテン場が実はめっちゃ近いなんて気付いてやせんでした…」

「兄貴ってば、 空間把握能力がめちゃ高い よなあ…やっぱ、 男脳度が高い のかなあ…確かに、男性ホルモンはバシバシ出てそうだけど… あのデコからして…あいたッ!!」




びしゅうッ!!

マルチェロがククールにツッコミを入れた、そのほんの一瞬のスキをついて、 眼にも留まらぬ速さ で飛び道具が放たれました。







「…ついに本性を現したな。」

当然のように避けると、マルチェロは地獄のサーベルを構えなおします。




「うふふ、せっかく人の売り買いでお金を稼いだからって、室内調度に凝ったのがマチガイだったわね…」

さっきまでの天然キャラぶりはどこへやら、 いっそ気持ちいいくらいの悪人顔 になった占い師の娘が言い放ちます。







「そんな…そんな…この子がそんな…」

闇商人に引き続き、古馴染みの化けの皮がまたもや剥がされたヤンガスが、呆然としたまま呟きます。






「フフン、愚かしい。たとえ古馴染みでも 三日見ざれば即ち剋目して見よ と言うだろうが…」

「いや兄貴、それ多分 使用法間違ってるから。」


ククールは一応ツッコミました。

すると、マルチェロは珍しくククールの発言を聞いてくれていたのか、こう、続けてくれました。








「人を見たら悪人と思えッ!!」



ククールは、なにかとても悲しい気持ちになりました。


2007/3/15




さて、一番かわいそうなのは、古馴染みに裏切られ続けるヤンガスなのか、こんな台詞を心から吐く兄を持ってしまったククールなのか、世の中の全てが信じられないマルチェロなのか、さて誰でしょう?




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