売らない☆占い その三

前の話から一月たってスロー更新ですいません。
あたかも、月イチ特番で延々と放映される、朝ドラみたいですいません。









ククールは悲しい気分にはなりましたが、それはそれとして仮にも 世界を救った勇者として 人身売買なんていう犯罪を見逃してはおれません。

いくら外見が 可愛くて天ボケの女の子 であろうが、 人身売買に手を染めた者は、DQ世界的には絶対悪なのですっ!!


…別にFF世界でもどこでもそうだと思いますが。






「…悲しいよ… いつかお茶と食事に誘おうと思ってたのに。」

密かに心中でチェックを入れていたククールは、 その美貌に、ナンパしそこなった憂愁をたっぷり含ませて そう呟きました。

もちろん、愛用のはやぶさの剣・改を手にしてです。






「ガキの頃から知ってたってぇのに…まさかここまでド外道にハマってたとは気付かなかったなんて…止めてやれなかったのが残念だぜ。」

どっかの赤くて銀色の生物 とは違い、渋くも沈痛な声音でヤンガスが言い、覇王の斧を構えて一歩前に出ます。




「ふふん、金のためには悪魔に魂でもなんでも売るのが人間っモンよ。 誰もがサヴェッラの法王さまみたいに清く正しく生きられると思わないでっ!!」


「ナニ言ってるんだっ!!法王さまだって、まるきり清くも正しくも生きてなんていない人がいるんだっ!!なんせ、 法王のクセに就任演説で世界の理を根幹から否定した人をオレは知ってるんだぜっ!?




いくら占い師の娘は知らない事とはいえ、 思わず力いっぱい、入れなくてもいいツッコミを入れてしまった ククールに、ヤンガスは無言で斧で一撃を入れて騙されました。



「…ぐふっ。」


「おやおや、斧の柄で入れるとは慈悲深い事で。いっそのこと 刃の方で入れれば、二度とあの軽い口が開かずに済んだのに。」

マルチェロが軽いイヤミを入れましたが、ヤンガスは耳に入っていないようで、覇王の斧を手にしたまま、ゆっくりと占い師の娘に近付きました。





「…自首しろ…」

静かな声でヤンガスは言いました。


「あたしが何をしたか今知ったでしょ?今更後戻りできるとでも思ってんの?世界を救った勇者のご一行さま?」

嘲笑うような口調の娘に、ヤンガスは強い口調で言いました。



「アッシだって、山賊だった…何度も足洗おうとして、何度も失敗して…でも、エイタスのアニキと出会えて、ようやく生まれ変われた…ああ、お前が親亡くして生活苦しかったのは知ってた。でも、こんな道は選んで欲しくなかった…でも、今からでも遅かぁねえ、やり直せ。 お前が夢で望んでたことは、こんなコトじゃねえだろっ!!」


「ふふん、体育会系のオッサンって、思考が単純よね。今更遅いのよ。」

ヤンガスの、無機物をも感動させそうな説得も、占い師の娘の心を動かしはしませんでした。

これはやっぱりどう考えても、DQ世界的に、




知り合いの渾身の説得をせせら笑う=悪!!




の図式に当てはまってしまったようでした。





「ふん、この手の人間に何を言っても無駄だ…」

身内の心からの言葉を冷笑した人 が、悪魔のサーベルを手にしたまま言いました。

さすが極悪人です、 言葉に説得力がありすぎます。






「女、貴様が改心するだのしないだのは私の知ったことではない…だが、貴様がどれだけ腕がたつのかは知らんが、これだけの人間を相手にして、生きてこの場を出られるとでも思っているのか?」




確かに、彼女は悪人なのでぼちぼち腕も立ちそうですが、いくらなんでもこの場の三人… 竜神王最終形態と互角以上に戦えそうな面子 相手になんとか出来そうなほど強いとは思えません。


一人はDying状態ですが。






「くっくっくっ…こんな稼業やって、保険もかけてないとでも思ってるのかい?おめでたい奴等だねえ…」

ついに ドロンジョさま(伝説の悪女と語り伝えられています)喋り になり、加速度的に悪人度が進行している占い師の娘は、



ニヤリ

と、悪人に相応しい笑いを浮かべて、占い台の上の何かを押しました。




ポチッとな



そんな音と同時に、占いテントが振動し始めました。





「ふふん、そろそろサツどもがここを嗅ぎ付け初めてたからね。そろそろ潮時だと思ってたのさ。 あと六十秒で爆破スイッチが作動 する。どかん、といっちまえば、証拠もあんたら生き証人も含めて、みんなこの世から消え去るのさ、じゃあね、アバヨっ!!」


ついに、 悪人の基本、爆破オチ をキメた占い師の娘は、 悪人の基本、哄笑 と共に、隠し通路に身を躍らせました。





「逃すかッ!!」

だが間一髪、瞬時に閉じられた隠し通路の入口は、もう二度と開こうとはしませんでした。



「大変だ、テントにバリアの呪文かなんかがかけられてる…開かねえッ!!」

「…たいした用意周到ぶりだな… いっそ部下に欲しいくらいだ…」


改心した人とは思えない台詞を吐く元法王は無視して、ヤンガスはククールを起こすことに努めました。




「良いではないか、そんな生物。 このままにしておけば。」

肉親とは思えない台詞を吐く兄に、ヤンガスは言います。


「ククールは開錠の呪文アバカムを使えるんでガス…確か、 カリスマスキル120で習得できる、夜這いに最適な呪文 とか言って…」

「カリスマスキルに、そんな破廉恥な呪文はないッ!!」



「んんーん…」

「おお、気付きやしたか…」

「んー… 「アバヨ」って言う女の子(可愛い)は、ちょっと萌え度高いかも…」


ぐごきっ!!

なにかが激しく折れ、砕ける音が爆破音をかき消さんばかりに響いた後、ククールは再び静かになりました。





「そうだな私の テンション100のグランドクロスで爆弾ごと叩き飛ばす というのはどうだ?」

「バカ言いなさんな、パルミドの街が壊滅するのは一緒じゃねえかッ!!」





なーんて 三十男二人が大真面目にアホな会話をしている間 に、時間はどんどん過ぎていきました。







「爆発するッ!!」×2

直撃くらっても死ぬ気はまったくしない二人 が、それでもそれなりにヒヤっとした時でした。






「…良かった…危ないトコだったな…」



テントの入口を開けて、声をかけた者たちがいました。





「お前はっ!!」×2


2007/4/14




週間少年誌の年末合併号みたいな終わり方が出来て大満足です。
そういや占い師の女の子の名前ってないんだよな…微妙に募集です。良い名前があったらつけてやってください。




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