最愛のお父さん、僕らは… その三

二か月ぶりの更新…この調子でいくと、DQ9が出るまでに、 まだ兄貴は童貞 かもしれませんね…









というワケで孤児院を建設して、はやいくばくか。



「よーし、せーれーつ。今日は郊外に遠足に行くかんな。」

早くも親分気取りなポルクの号令のもと、子どもたちが楽しげに整列します。


「出発する前には、トイレにちゃんと行っておくんだぞ。」

ついでに、こちらもお兄ちゃん気取りなマルクが声をかけます。



「ゼシカねーちゃん、みんな準備出来たって。」

ポルクが声をかけると、遠足モードのゼシカがみんなにお弁当を配りました。

「いい?お弁当は着いてからだからね、勝手につまみ食いしたら、メラをお見舞いするわよっ!?」

ゼシカがウインクすると、子どもたちは笑いました。



「わー、怖ーい。」

「そうそう、ぼく、ククール兄ちゃんみたいになりたくないー。」

口々に言い合う子供たちに、


「誰みてーだって?」

ククールも楽しげに、子どもたちのほっぺたをウリウリしました。




あんなガキどもなんて、どーでもいいじゃん!!

なんて、 非人道的な科白を吐いていた男と同一人物とは思えない ほどの、 なごやかな表情で です。





「じゃおかーさん、マルチェロー。夕ごはんまでには戻ってくるからねー。」

「ええ、お気をつけて行ってらっしゃい。」


「心配しねーでも、危ないことなんかしねーから。オレは無事に帰ってくるって、兄貴♪。」

「貴様なんぞそもそも心配しておらんし、帰ってこずともまるで構わん。」

優しい科白?に見送られて、ゼシカとククールは、子どもたちをつれて遠足へと出かけて行きました。














「…マダム、こちらにおられましたか。」

しばらくして。

書類確認に奥様を探していたマルチェロは、孤児院の台所でお料理に勤しまれる奥様のお姿を発見しました。


新婚一か月の花嫁もかくや とばかりの 純白のレースのエプロンでお料理をなさる奥様 を。




「マダム、御自らそのようなことをなさらずとも、孤児院の料理は村の婦人を雇っておりますのに。」

「いえ、たまには宜しいのです。わたくしだって、サーベルトやゼシカがまだ小さい頃は、母の手料理を教えておこうと、たびたび台所に立ちましたのよ?」



奥様は、そんな昔の日々を思い出されました。


まだまだ、奥さまのご令息のサーベルトがよちよち歩きだった頃のことです。

料理に腕を振るわれる奥様の後ろから、今は亡き旦那様がじっと奥さまのお姿をご覧になられました。






「まあ、あなた。そんなにお見つめになると、やりにくいですわ。わたくしの後ろ姿に、何かついておりますか?」

「いや…料理をする君の後ろ姿に見惚れていたんだ

「まあ…あなたったら… ぽっ








奥様お一人でしたら、 思わず叫びだしそうなこっ恥ずかしい思い出 に身を浸しておられた奥さまは、昔のように後ろから向けられる 緑色の視線 をつよーく意識なさいました。





まさか、マルチェロさまも…


奥様は、 ちょっと強めに期待 なさって、



「まあ まるちぇろ さま。そんなに おみつめになると やりにくいです わ。わたくし の うしろすがた に、なに か ついて おり ます か」

と、 冷静を装い過ぎて不自然極まる棒読み科白 でお尋ねになりました。





「申し訳ありません…」

マルチェロは詫びを言った後、しばし不自然に沈黙し、そして













「なぜか、マダムの後ろ姿に、ふと母を思い出してしまいまして。」

と、続けました。












むっ…

奥様は、そっとですが ムカつかれ ました。




女性とは、たとえ奥さまのようにとても出来た方でも、 年上に見られるのはとても不愉快 なものなのです。


それに、そもそも奥様はマルチェロとの年の差を気にしておられます。

確かに奥様はマルチェロより十以上も年上ですが、それでも…




「まあ、わたくし、マルチェロさまのお母さまとお年が同じでしたのねっ。」

奥様はついつい、 淑女らしからぬ厭味を強い語尾で 口になさってしまわれました。






「あ、これは失敬を。」

さすがの 女心に猛烈に疎い 彼も、さすがにこの非礼には気づいたようでした。

彼には珍しい弁解の科白を口にします。




「その、まことに申し訳ありません、マダム。ただ…」

マルチェロは詫びるために、 奥様の真横に立ち、奥さまの瞳を覗きこんで 言いました。






「…私の母は、今の私の年よりさらに若くして亡くなりました。ですから、私にとっての母の後ろ姿は、 いつまでも永遠に若いままなのです。」



「まあっ、永遠に若いまま、ですかっ!?」

奥様はついつい 淑女らしからぬ満面の笑みで そう口になさいました。女性とは、たとえ奥さまのようにとても出来た方でも、 年下に見られるのはとても愉快 なものなのです。







ですが奥様はさすが 骨の髄まで淑女 であられたので、自らの非礼に即座にお気づきになりました。




「こちらこそ、失礼いたしました。マルチェロさまのお母さまが、そんなにお若くしてお亡くなりになっておられたなんて…きっと、マルチェロさまのお母さまですもの。とてもお美しくて、とても優雅で、とても上品で、とても賢明で、とても魅力的な方でいらしたに違いありませんわ。」




マルチェロは、ちょっと哀しげに笑いました。


「とうてい…マダムと比べることすらはおこがましい様な女性でした。ですが…なぜなのでしょうな。ふと今、思い出されたのです…」




奥様は、 憂いに満ち満ちたマルチェロの瞳 を、同情六割、 恋のドキドキ四割 な瞳で、見上げなさいました。







「…手伝わせていただいても?」

ながい沈黙ののち、マルチェロはそう言って、包丁とジャガイモを手に取りました。




2007/7/24




好きな人と一緒に料理…
ちなみに精神分析によると、食欲と性欲の間には密接なつながりが…って、もう下ネタはいい?




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