Boy Meets GIrl`s Mother その一
リーザス村入り口にさしかかったマルチェロ(+他二人)の行く手を阻むミニサイズの影二つ。
「やいっ、怪しいヤツはこのポルクさまと」
「マルクがたいじしてやるー!」
「ポルク、マルクっ!!!?元気そうね、良かったわ。」
「ゼシカねえちゃん…」
たちはだかっていたのは、
隊長 ポルク
副隊長兼突撃隊長 マルク
の、自称リーザス村自警団(総員二名)でした。
「ゼシカねえちゃん…この見るからに悪人ヅラしたM字デコのオッサンと、なんで一緒にいるの?」
子どもの正直すぎる発言に、だがマルチェロは不快の表情を浮かべずに笑顔で答えました。
「お兄さん達はね、このお姉さんのお母さんに結婚のご挨拶に来たんだよ。」
だが、内心にはやはり不快の思いがあったらしい微妙なアクセントです。
「えっ…」
ポルクとマルクの二人は顔を見合せ、そして気の毒そうにゼシカを見上げて言いました。
「ゼシカねえちゃん…わざわざこんなM字デコした自称お兄さんなんか選ばなくても…」
「そうだよ。ゼシカねえちゃんはサーベルトにいちゃんみたいな、M字デコでないカッコよくて優しい人が好きって言ってたじゃないか。」
「どぅわれがこんなエセ法王なんか選びますかってのっ!!」
灼熱の炎すら吐けそうな 怒りに満ち満ちたゼシカの横で、笑顔ながら額に青筋を浮かべたマルチェロが不自然なまでに優しい口調で言います。
「ははは、このおねえちゃんのお相手は私ではない、私の弟のククールだ。」
私の弟のククール…
何度聞いても、ククールはその言葉の持つ甘い響きにときめきます。
ポルクとマルクは、ククールを下からじいっと眺めると、やっぱり不満そうに呟きました。
「サーベルトにいちゃんはもっと…こう…ちゆーけんびな人だったのに…」
「なんでこんなチャラそーな奴選ぶのさ、ゼシカねぇちゃん。」
「チャラ…あのねえ、ポルクにマルク、こいつにだって…」
いいトコはいっぱいあるんだから。
そう続けようとしたゼシカでしたが、
「こいつにだっていいところはあるのだ、少年たちよ。」
マルチェロにとられました。
「どこさ、一体。」
頬をふくらますポルクに向かって、マルチェロは聖者のような微笑で続けます。
「確かにこやつは軽薄だ。」
「いきなりそれかよッ!!まあ確かに、軽薄か軽薄じゃないかって言われたら、軽薄だろうけど…」
そんなククールの呟きを完全に無視して、兄は続けます。
「取り得は顔とイカサマのみ!! ドニの酒場で、荒くれ相手にカードのイカサマを繰り返し、後で怒鳴り込んでくる無法者と渡り合うのは、いつも私だった。こやつは面倒ごとをすべて私に押し付け、宿舎で高いびきだった。」
「そういや出会いの時もそうだったわよね、ククール。」
「…まあ、そうだな…」
「ドニの村の乙女たちをたぶらかしては、 不純異性交遊 を繰り返し、私はなんど相手の親御さんにアタマを下げたか 数えるのもめんどうなくらいだ。」
「そうなの…ククール?」
「い、いや…それほどじゃないっ!!」
「祈祷に呼ばれた先のお嬢さんに手を出し、 スキャンダルをもみ消すために修道院からいくら出費を私が余儀なくされたか… 今おもいだしても腹立たしいくらいだッ!!」
マルチェロの話はまだまだ続いた。しまいには、幼少期のククールが、八歳のくせに寝小便をしただの、トイレに一人で行けなくて、泣きわめいただの、信徒のお賽銭をチョロまかして駄菓子を買っていただの、しかもそれが一度や二度ではないなど、話のタイムスケールは壮大に、そして話題は多岐に渡って、三十分が過ぎた。
「兄貴…やっぱ兄貴はオレを憎んでるのか(泣)」
「…がまあ、実はそんなに悪い奴ではないのだ。心配するな、少年達よ。」
と、とってつけたような結語をつけて兄の話が終った頃には、ポルクとマルクのククールを見る眼差しは、 オークニスの真冬よりも冷たくなり果てていました。
「…こんな奴にゼシカねーちゃんを渡せないっ!!(びしいっ!!)」
「リーザス村自警団、スクランブル警報発信しますっ!!ふぁんふぁんふぁん。」
「ともかくさっそく、アローザ奥様に報告だっ!!」
「ラジャッ!!」
二人の少年は悪を憎む眼差しでククールを睨む と、走り去っていきました。
「子どもは無邪気で元気なものだな。」
はっはっは、と兄の爽やかに笑う声を聞きながら、ククールは
オレは貝になりたい
と本気で思いましたとさ。
ククールをいぢめるのは楽しいです。女性向けではククールがアホでエロで兄いびりが好きなので、ここらでバランスを取ってみるつもり…なのかな?
次こそ、ホントにホント、アローザ奥様が登場します。