可愛いベイベエ HIHI! その一

いやいや、子孫作成行為への衝動は、人類としてまったくもって正しい衝動に違いないです。
時と場所と場合を選べば、ね。









「アンタ等、バカあ!!??」

リーザス村の、静かなるべき夜のしじまに、ゼシカの大声が響きました。




「オレは兄貴を愛してるだけじゃんっ!!!」


「『等』だと!?この赤い生物と一緒にされるとは心外極まるっ!!!」




青赤兄弟の、それぞれの反論がゼシカに向かいますが、ゼシカは動じません。



とりあえず赤い生物をいつものように燃やす と、マルチェロに向き直り、言いました。





「バカで十分よ。アンタなんて、 ククールと同等扱いされても仕方のないバカ よ。一体どこの誰が、 300人子供を作ったら罪滅ぼしになる!! なんて戯言を本気にするのよ!?」


ゼシカは、指先をマルチェロに突きつけると、強い調子で言い放ちました。






「だいたいねえ、父親の罪滅ぼしのためだけに作られた300人の子供たちはどうなんのよ!?あんた、その子たちを幸せにしてあげられるワケ!?そうでないなら、あんた、 自分をアテツケで作った自分の父親と、やってるコトのレベルは同じ よっ!!!」





禁断の科白 を連呼するゼシカと、血の気の失せた顔で黙り込むマルチェロを見ながら、ヤンガスは冷や冷やしていました。





確かに、マルチェロ(と、その赤い弟)のした事は アホ以外の何物でもない のは、まったくもって間違いはないのですが、ヤンガスとて、マルチェロは 自分の罪を償おうとしてその所業に及んだ ことは百も承知です。

確かにアホ丸出しの発言でしたが、同じ元悪人として、 改心するために足掻く、その無様さ は、寛大な心を以て許してあげて欲しい…そう、ヤンガスは思うのです。











って言うか、ぶっちゃけヤンガスは、 いつ、逆ギレしたマルチェロがテンション100のグランドクロスをぶっ放つ か、気が気でないのでした。




(なんせアッシなら一撃は耐えられヤスが、ゼシカは無理でガス。しかも、アッシは蘇生呪文は使えやせんからねえ。)

そしてヤンガスは、



「なんでチョー美形のオレが毎回燃やされんのさー!!!オレは兄貴の子孫作成行為を手伝う気満々なのにー!!!」

との KY発言(空気読まない発言) を恥ずかしげもなく叫び散らす銀色の生物(ザオリク所持) を 哀しい瞳 で見つめるのでした。

















「…確かにその通りだ、私は愚かだった。」

まったくもって驚いたことに マルチェロは、己が愚かさをあっさりと認めました。





「え…ああ、うん…」

認められたゼシカの方が、逆に事の成り行きにうろたえています。




「親の贖罪で生み出された子供というのも哀れなものだ…子供に罪はないというのに、生まれながらにしてその連帯責任を負わされるのだからな。ふん…それに私の血をひいた子だ。どんな逆恨みをするやもしれん…」

自嘲的なその言葉に、ゼシカもヤンガスも、 あ、この人を傷つけてしまった と感じ、黙りこみました。






「だいじぶだいじぶ兄貴ー♪オレ、逆恨みされたコトとか、ぜえんぜんっ!!気にしてないからっ!!!だって、オレが美しいのは、顔と身体だけじゃなく、心も… ぶべらっ!!!!」




テンション弱のメラゾーマが直撃 したことについては、ゼシカもヤンガスも何も言いませんでした。



だって、どう考えてもこれは 空気読まない赤銀の生物が悪かった からです。

いや、むしろヤンガスは、放たれたメラゾーマのテンションがさして高くなかったことに、 マルチェロの優しさ すら感じ、胸が熱くなりました。










「その…アッシの言い方も悪かったでガスよ。」

まったくなにも悪くないのに、ヤンガスは言います。


「その… 量より質 でガス。300人子どもを作るよりゃ、 生まれた子供に300人分の愛情を注いで、300人分の幸せをあげる 方が、その子の為にもあんたのためにもなるんじゃあねえでガスかね?」

ヤンガスの言葉に、ゼシカも賛同します。


「そうよ、ヤンガスの言うとおりだわ。 その子を幸せにしてあげてっ!!!」





なんだか、だんだんまた主旨がズレてきました。

そもそもは、 どうやったらマルチェロの犯した罪を償う事が出来るのか という話で、子どもの話は二の次三の次だったはずですが。





「ま、子どもを幸せにするためには、 アンタのカミさんになるお人をまず幸せにしてあげなきゃ んねえってモンでガス。 幸福なベイベエは、幸福なセックスからっ!!!」

子持ちどころか、所帯持ちですらないのに、妙に力説するヤンガスです。




「で…ゼシカのオフクロさんとは、一体どこまで…」

「ヤンガスっ!!!」

ついつい下世話に入り込んだヤンガスに、ゼシカの一喝が下りました。

ベギラゴンを覚悟したヤンガスですが、ゼシカは 妙に思いつめた真剣な顔 でマルチェロを見上げると、言いました。





「ねえマルチェロ…正直に答えて。正直… お母さんとのことは、どのくらい本気なの?」








ごくり

ヤンガスが生唾を飲み込むほど、緊迫した雰囲気の中。















「なんでいっつもオレばっか仲間外れで、オレばっか燃やされんのさーっ!!!!!」

どっかの生物が、やっぱりKYな絶叫をしていましたと、さ。


2007/10/4




ククールの叫びへ、だれか回答をお願い致します。




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