choux a la creme その三
新年あけまして…ついにこのシリーズが開始して、二度目の正月となってしまいました。なのに、終わる気配のないのは一体…?
「どうだ?」
「いきなりプロポーズはやりすぎだよ、兄貴っ!!」
部屋から出たマルチェロがそう問うなり、ククールはツッコミをいれました。
「プロポーズ?」
マルチェロは、心から怪訝そうな面持ちで問い返します。
「あの最後の台詞はプロポーズでなくて、一体なんだってんだよ、兄貴っ!!」
ククールは力いっぱいツッコミますが、マルチェロは少しも思い当たるフシがないようでした。
「…まあ、ゴーカク…
オレが想像して期待した展開とはまるで違う
けど、
間違いなく奥様のハートはゲット!!
したから、すげえ合格。さすが兄貴、
魔性のマダムキラー
だよ。」
さて、そもそもマルチェロが奥様とお茶をしようと思い立ったのは、遥か昔のような気もしますが、ヤンガスとの会話が発端なのです(とりあえず、「可愛いベイベエ」あたりを読み返して見ましょう)
そこでヤンガスに、
「一緒の時間を持つっ!!一緒に笑いあうっ!!!それが一番だっ!!」
と力いっぱいそそのかされたマルチェロは、彼にしては珍しく
「そうかな?」
と思うに至りました。
しかし、なにせマルチェロのこと。
ビジネス以外で
女性とそんな時間を持ったことがないのでした。
んで、ゼシカとヤンガスの助言を要れて(ククールも何やら言っていたかもしれませんが)
二人でお茶でも一緒にしてみるミッション
を開始してみたのでした。
で、結果はこの通りです。
ハッキリ言って、
歴戦のツワモノなククールでも
ヒジョーに評価に困る展開
でしたが、まあ結果オーライです。
「しかし…未だによく分からんがな。なぜに
時間を共にしたら愛情が増す
のだ?」
マルチェロは、
フツーはそんなこと問わないだろう発言
をブチかましました。
「いや…そりゃさ、兄貴。そりゃ
オレみたいな絶世の美青年
相手なら、見た瞬間に心から愛しちゃうだろうけどさ…フツーはそうじゃなくて、長い間一緒にいるうちに、少しずつ相手の良さが分かっていくものじゃん?」
「そうか?私はお前とかれこれ十五年は一つ屋根の下で過ごしていたが、
時が流れるごとに憎しみが増した
がな。」
「ゼシカー!!兄貴がいじめるーっ!!」
とりあえずククールは、どさくさに紛れてゼシカの乳に抱きついてメラを食らうという、もう文字の色を変える気にもなれないお約束をカマしました。
「もう、マルチェロ!!そりゃククールは
見た目の素晴らしさが、性格のドアホさでどんどん相殺されて、最後にはマイナスになる
けど、フツーはそうじゃないでしょ!?
ククールが特別に最悪な例なのよっ!!」
「成程、大方の点は理解できた。」
「ゼシカもいじめるー!!!!」
等々、
和やかな会話
を三人が交わしていると、孤児院の子どもが駆け込んできました。
「大変だよ、トディーがまたエミリーやマークをいじめてるんだ。」
ちなみに、トディーとは孤児院の子どもたちの中で、特に問題を起こす子どもの名前です。
「それはいけないわ、
いじめは絶対にいけないことよっ!!」
「もっともだ。
特に見返りのない自己満足行為など、時間と労力の無駄だ!!
早速止めに行かねば…」
「あのーゼシカ、そして兄貴、
自分等が今してたコトはナニ!?」
ククールは一応ツッコミを入れましたが、もちろん、反応はありませんでした。
ええ、ゼシカはともかくとして、だったらマルチェロがいままでククールにしてきた数々の行為は一体なんなのでしょうね?
ま、
「あれはイジメなどではない、
ただの虐待だ!!」
と爽やかに言い切られてもこまるので、細かいことは気にしないようにしましょう。
ともかく、三人が駆けつけると、トディー少年は大暴れしていました。
孤児院のお手伝いのおばさんも困り果てていたので、とりあえずゼシカとククールが止めます。
「なんで他の子をいじめるの!?」
ゼシカが言うと、トディーはふてくされた顔で黙り込みます。
「特に理由がねーなら、仲良くすりゃいいじゃん。
ヤローはどうでもいい
として、
可愛いリトルレディとならさ。」
ククールが、微妙に教育上良くない台詞を発します。
トディーはしばらくだんまりを決め込んだ後、ついになにかが爆発したのか、叫びました。
「なんだよ、こいつら弱虫じゃないかっ!!弱虫はいじめてもいいんだよっ!!」
「…」
その台詞を聞いたゼシカの視線が、マルチェロに向けられました。
「…」
その台詞を聞いたククールの視線も、マルチェロに向けられました。
「…」
そして、その台詞を聞いた
空前のイジメ大魔王
たるマルチェロは、
オセアーノンくらいなら、恐怖でその体色を青色にせんばかりの緑の視線
をトディーに向けました。
「ほう…弱ければいじめてもいいのか?」
普通の子どもなら、間違いなく
恐怖でショック死
しそうな視線を、なんとトディーは見返しました。
なんと勇気のある子でしょう。
ゼシカとククールは、その一事だけで、トディーを見直してしまいました。
そして
「いいんだよ!!だっておれは強いんだぞっ!!」
小さな勇者トディーは、
緑眼の邪神
相手に、なんとも無謀
勇気有る発言
を返したのでした。
2008/1/3
みなさま、トディー少年の無事をお祈り下さい。
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