セキレイ その一

「セキレイは一度教えて呆れ果て」
という川柳がありますので。









さて、 み○もんたバリに思いっきりいい雰囲気 になってしまった二人を横目に見ながら、ゼシカは届いたお手紙を眺めていました。



宛名には、 アスカンタ国王パヴァン とあります。


正式な国書ではなく私的なお手紙の形式ではありますが、それでも どっかの名前が「リ」で始まる王子 とは、 同じイケメン ながら段違いの、整った品のある字で書かれたお手紙でした。





内容はこうです。


アローザ奥様が、娘が結婚する旨をアスカンタの実家に書き送ったところ、その話がパヴァン王にまで届いたらしく、

「ゼシカさんたちにはお世話になりましたから、良ければ王家に代々伝わる婚礼衣裳をお貸ししましょうか」

という ありがたーい仰せ を賜ってしまい、是非、と奥様が返答されてしまったため、じゃあ受け取りに来て下さい…


とまあ、そんな内容のお手紙でした。




パヴァン王の愛妻のシセル王妃が早死にしてしまったことを思うと 微妙に縁起が悪い 気もしますが、だがしかし、 王家に代々伝わる婚礼衣裳 という点は、やっぱり魅力的です。




「んー…でも今、手が離せないしなー。」

件のトディー少年は、 マルチェロの心温まるお話 によって大分落ち着きはしましたが、それでもまだ不安定ですし、なにより、 当のマルチェロと母親の恋?の行方 も激しく気にかかります。


という訳で、ゼシカは、ククールをお使いに出すことにしました。


















「良く来て下さいました。」

久々に見るパヴァン王は、 天使のように無邪気な微笑み を浮かべて、ククールを出迎えました。




「チーっス、お久ー。」

ククールは、 やる気がない且つ無礼 な返答で返しましたが、パヴァン王は、 さすが育ちが良いだけあって鷹揚 で、特に気にはしませんでした。




「ご結婚なさるそうですね、おめでとうございます。」

「ありがとっス。でも、まだ日とかぜんぜん決まってないんスけどね。」

「決まったら教えて下さいね、ぜひぜひお祝いに行きたいので。」

「そりゃありがたいっスけど、王さまが来るっつったら、大騒ぎになりますよ?」

「もちろん、お忍びで伺いますとも。」


などという挨拶の後。




「で、これがお話の プリンセス・ローブ です。」


パヴァン王は、錬金で作るよりさらに豪奢な プリンセス・ローブ を差し出しました。




ククールはまず、 胸の部分のデカさ を確認しました。


なにせ、あの くるくる舞い踊る一夜 の時に、ククールがまずチェックしたのは、今は亡き美しき王妃さまの チチ だった男ですから。




感涙に噎びまくるパヴァン王を尻目に、

「カオとか見た目は全く文句ねーケド、 やっぱチチはゼシカ だよなー」

なんぞと、 バチあたり極まりない 事を考えていた男ですから、まず胸のサイズをチェックして、そして言いました。




「あのー、せっかく貸してもらえるのはスゲー嬉しいんスけど、なんかこー、 サイズが合わねーと思う んスけどー?」


さすがに王さま相手に、


チチの

とは言わなかったのが、ククールの 謙譲の心 というものだったでしょうか。





「ああ、サイズですか?ご心配なく、それはアスカンタ王家に代々伝わるものですから、 当然、魔法の品 です。 着る女性によって、自動的にサイズが変わる んですよ。だから、ゼシカさんにもぴったりになります。」


「へー。」

ククールは、 69へえ くらいの反応を返しました。



確かに、代々の王妃さまはいろんな体型の方がいらっしゃるはずですから、そのくらいの魔法はかかっているかもしれません。




「ああ、そのドレスを着こなしたシセルの姿が、今でも瞼に浮かびます。満面の笑顔でわたしの腕を取るシセルの…」




ぼたあっ

パヴァン王の瞳から、いきなり大量の涙が零れ落ちました。




ヲイヲイヲイ…

さすがにヒいたククールを前に、パヴァン王はしばらく泣き続け、そしてようやく涙を拭うと、爽やかな笑みを浮かべました。




「いやいやすいません、どうしてもシセルの事を思うと涙が出てしまって…」

「…そんな大切な思い出のあるモン、借りてていいんスか?」

「ええ、どうせしばらくわたしには用のないものですし…」


また泣き出しそうになったパヴァン王の気を逸らすように、ククールは話題を逸らしました。


「いやー、でもマジキレーっスね、このローブ。ゼシカに似合いそうっスよ。」

「そうでしょう、そうでしょう、代々、我がアスカンタの王妃たるべき 処女を守護するローブ ですからね。 清らかな処女たる ゼシカさんにも、さぞやお似合いになるはずですよ。」




ククールは、ちょっと気になったので、聞いてみました。




「あのー…今、 処女を守護するローブ って、言いましたよね? 処女でないと守護してくれない んスか?」


ククールの問いに、パヴァン王は、 心から不思議そうな表情で 答えました。



「ええ。でもゼシカさんは未婚ですよね。 未婚なら処女 ですから、 なにか問題があるんですか?」




2008/3/14




セキレイは、イザナギイザナミ両神が最初の交合をする時に、やり方を教えてあげたという、 大和民族の恩人 であります。




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