セキレイ その二

しかしまあ
「私の体には余っているところがあります」
「まあ、わたしの体には足りないところがあります」
「じゃあ、足りないところに余っているところを合わせて国を産みましょう」
と言っておきながら、実際の行為が分からなかった二柱って、一体…









「…」

さて、ククールは困りました。



どんだけ育ちがいい のか、この王さまの頭の中には、 婚前交渉という概念がない ようです。




しかも、 処女でないと守護してくれない ということは、処女でなければ魔法の力が働かないということのようですので、ゼシカはこのドレスを着ても サイズが合わない という事になりそうです。




ソコをアローザ奥様にツッコまれたらどうしよう

ククールは、 冷たい汗が背中を伝う のを感じました。










さて、とうのパヴァン王は さすがお育ちがいい だけあって、ククールの様子にはまるで気付きませんでした。




なんとか難癖をつけて、借りるのを断らねばっ!!

ククールは頭をフル回転させますが、なかなかみんなを納得させる良い知恵は浮かびません。







「あれ、ククールさん。どうされたんですか、お顔の色が優れませんが。」

さて、さすがにククールが青ざめていくのに気付いたパヴァン王が声をかけました。



「いや…その…ああ、ソウですよっ!!このローブがあんまりに素晴しすぎて、 このローブに見合うだけのオレの服がない んスよ。いやー残念だなー、いくらオレが 咲き誇る花のような美男子 だからって、このローブを着たゼシカと並んだら、見劣りしちゃうじゃないスか? ソレってやっぱ、結婚式の主役の一人の花婿としては寂しい モンじゃないスか?」




そもそも結婚式の主役は花嫁で、花婿なんぞは脇役です

とはパヴァン王は言いませんでした。




「そうですね、確かにそれは人生の何度もない晴れ舞台としては寂しいものですね。」

「でしょー?ですから、 ヒッジョーに残念 なんスけど、 今回のお話は、本当に勿体ないお話なんスが、一つなかったコトに…」


「でしたら、花婿用の衣装もお貸ししましょう!!」

パヴァン王は、 心からの好意に満ち満ちた声 で、そう言いました。







「…え?」





意外な展開に絶句するククールの顔色など無視して、パヴァン王は嬉々としてメイドのキラに花婿用の衣装を持ってこさせます。







「はい、ククールさん。 アスカンタ王家に代々伝わる 国王の婚姻用の プリンス・タキシード です。」



パヴァン王が広げて見せてくれたのは、 DQ的にはかっこよさは100くらいありそう な、花婿用のタキシードでした。





「もちろん、それも魔法の品ですから、 着る男性によって、自動的にサイズが変わる んです。ですから、ククールさんも安心して着てもらえますよ。」

「…」

何も言わないククールに、パヴァン王は心配そうに聞きました。


「お好みに合いませんか?」

「いや、カッコいいとは思うんスけどね…まさかソレも、 清らかな童貞を守護 したりしませんよね?」



パヴァン王はその言葉を聞いて、 にっこり微笑む と返答しました。





「守護するに決まっているじゃないですか?」









「…」




アスカンタ王家に代々伝わる ということは、 歴代の国王はみんなこのスーツを着ている ということです。


というコトはつまり、





「アスカンタの歴代国王はみんな、結婚するまで ど○ていだったンスか!!??」



ククールの大絶叫に、パヴァン王は 心から不思議そうに 答えました。




「どうしてそれが驚くことなんですか?」




「…」




もはや返答も出来ないククールに、パヴァン王は哀しそうに続けました。




「わたしもそのうち、また王妃を迎えなければなりませんが、その時にはさすがに着れませんからね。ですから、結婚までお預かり下さっても全くかまいませんよ。」

そして、絶句したままなにも言わないククールに問いました。




「何かおっしゃりたげですね。まさか結婚された事があるとか?いや、ククールさんは聖堂騎士でしたから、ご結婚は出来なかったはずですよね。 未婚なら童貞 ですから、 なにか問題があるんですか?」







どうやら、パヴァン王には お布施を集めるためにククールがお金持ちのおうちでしていたこと なんて、 想像も出来ないこと のようです。








「いや…その…亡き王妃さまとは、 無垢で清いご結婚 だったんだなー…と思って…」




内心では、 どこの「ふたりえ○ち」だよっ!? と思っているとはおくびにも出しません。




「ええ、もちろんですよ。なにせ結婚するまで、 赤ちゃんはキャベツ畑に埋まっていると思っていました から。」



「…」




さすがに、 どっちが!? と聞く気力もない、ククールでした。




2008/3/18




パヴァン王の治めるアスカンタは、きっと「ディズニーワールド」なんだと思います。
だから、そんな国の人たちに、革命とか血筋の否定とか危機管理能力とか国王としての責務とか そーゆー現実的なことを求めちゃダメ だったんですよ、多分。

…マルチェロとは全く相容れない国なのは、間違いがなさそうですね。




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