あーる・えー・ぴー・いー? その二

今回の冒頭は、イベント直後または直前のように、無音背景をご想像下さい。
あの、音がしない中に「ピッ」っていうコマンド入力音だけが響く、あの状況です。









音がしません。










音がしません。











音がしないのです。










誰も、声すら立てませんでした。


ククールとゼシカは気まずいあまり。

そして奥さまは、ショックのあまり。















かくん

奥様は、ようやくショックから解き放たれたのか、一歩足をお進めになろうとして、そしてそのまま崩れ落ちなさってしまいました。






「お母さん!!」

駆け寄って抱き起そうとするゼシカの手を奥様は払いのけなさいました。




「お母さん!?」

いぶかしげに問うゼシカに、奥様は仰います。






「触らないで。」

「お母さん、どうして」


「触ってはなりません、ゼシカ。」

「どうしてよ、お母さん!!」



奥様は、 蒼白なお顔で、絞り出すように 仰いました。





「この母は… 穢されてしまいましたっ!!」



















え゛え゛え゛え゛え゛え゛ー!?




ククールも、そしてゼシカも、声にはならないですが、間違いなく心の中で絶叫しまくりました。





















奥様が 穢された と仰っている内容は、つまりはマルチェロが奥様に 唇にかする程度のキス(ほんの0.3秒程度) に他なりません。






舌すら入れてねーじゃん。 キスですらねーよ。

百戦錬磨のククールは思います。

この程度で 穢された なんて言われていたら、ククールなんてとうに 人類史上最凶の強姦魔 になっています。








なんて未来の娘婿の心中なんてもちろん奥様はご存じなく、奥様はその頬に 真珠のような涙 をお流しになりました。



ええ、 この気丈な奥様涙をお流しになる なんて、娘のゼシカですら、ほとんど見たことがない光景です。










「酷い…あんまりです…マルチェロがあのような 野獣のような所業 をなさるなんて…」




何度も言いますが、奥様が 穢された と仰っている内容は、つまりはマルチェロが奥様に 唇にかする程度のキス(ほんの0.3秒程度) に他なりません。






ですが、ゼシカがそっと差し出したハンカチで眼尻をお拭いになる奥さまを見ていると、全ての状況をその両の眼でしっかりと見ていた二人でさえ、 本当にマルチェロが鬼畜にも劣る行為を奥様にしたように思える のが不思議です。




ククールがもし、あの一連のマルチェロの行動を見ていずに、この奥様のご様子だけをみていたとしたら、間違いなくそのような行動が起こったと思い込んだことでしょう。


この広場のど真ん中で!!








ま、そもそも 聖地ゴルドの大神殿内の法王就任式の真っ最中にあんな電波演説ブチカマしちまう兄貴 だから、 お屋敷の広間で奥様を押し倒して行為に及ぶ くらい、出来ちまうかもな。


ククールは仮にも血のつながった兄に対し、そんな感想を抱きましたが、そこで


ハッ

と気付きました。




唇にちょっとちゅっ♪ した程度で、 野獣 呼ばわりされたマルチェロは、 奥様よりさらに思い込みが強く、かつ、一般人には及びもつかない思考回路の持ち主 です。


超モテまくる天然カリスマ のくせに 人間の限界を超える精神力 でもって、 30まで恋愛にも女性にも一切関わり合いを持たなかった男 です。


超絶の純潔主義者のマルチェロなのです!!



そんな彼が、 急に目覚めてしまった恋愛感情 から、 ちょっぴり、ダ・イ・タ・ン♪ な行動に出てしまった その反動はどうなることでしょう!!??









「悪いっゼシカ、アローザ奥さまは頼んだっ!!」

そう考えた瞬間、ククールは ゴルドのあの時のように風よりも速く 兄の後を追いかけていました。




2008/8/26




間に合うか、ククール!?




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