たたかうおとこのこ その一

10台のエイタスが「たたかうおとこのこ」なのは良いとして、三十路にはまったマルチェロを「おとこのこ」として良いのか、激しく悩みました。
悩みましたが
「男はいつまでも少年の心を持っている」
らしいので、多分いいだろうコトにしました。









二人の激闘は、終わる気配を見せません。

それは、見物者のククールの心を 激しく削り倒す ような、熾烈な斬り合いでした。




小鳥は愛を歌い、

花は咲き乱れ、

空は何処までも青く、

風はどこまでも柔らかいのに



「なんでわざわざ本気で斬り合うんだよーっ!!!!」

と、ククールは 血の涙を流さんばかり に叫んでみるのですが、 完全無視 をくらうだけです。




「うう…兄貴に無視されるのは慣れてるけど… エイタスまでオレを無視するなんて…」

ククールは恨みがましい目で見ますが、超本気で斬り合っている人に自分を心配しろなんて 無茶すぎる要求ですよね?







そんなこんなしているうちに、二人の息がだんだん上がってきました。




そしてどうやら、先に息苦しくなってきたのは、若いエイタスのようです。




まあ、 マルチェロの体力は人間としておかしい ので、仕方ないかもしれませんが。




もちろん、マルチェロがそれを見逃すはずはありません。

ここを好機 と、大きな攻撃モードに入ります。






ククールは、エイタスの唇に、 不敵な笑み が浮かぶのを見ました。






かんっ

エイタスの剣が叩き飛ばされるのと、 マルチェロが足払いを見事にくらって後ろ向きに仰け反る のと、ほとんど同時でした。





「ちいっ!!」

倒れながら思わず舌打ちするマルチェロが、それでもすぐさま取り落とした剣を拾おうと伸ばしかけたその肩ごと、エイタスは踏みつけました。





「素手で殴り倒す気か?」

いくらマルチェロが丈夫だとはいえ、地面に倒れた状態で上から殴られては、衝撃の逃がしようがありません。


「やめろ、エイタス!!普通のヤツなら、それでも髪の毛がいくらダメージを緩和してくれるだろうけど、 兄貴はデコに髪がないんだっ!!」

兄を気遣っているのか、 はたまた無意識に喧嘩を売っているのか 微妙に判断し辛い台詞でしたが、マルチェロにそんな心配は無用でした。




さすがマルチェロと言うべきか、エイタスの拳より先に、蹴りを彼に食らわせようとしたのです。




で、結局。

二人とも、痛み分けに終わりました。




両者は再び、剣を握ります。


「少女のようなかわいい顔 をしながら、 なかなか容赦ない攻撃をするではないか!?」


「…顔に迫力がないのは生まれつきですよ、気にしてるのに酷いなあ。」

エイタスの言葉に、ククールは言います。


「気にすんなよ、エイタス。兄貴なんか、 魔王顔 だぜ?」

兄を気遣っているのか、 はたまた無意識に喧嘩を売っているのか やはり微妙に判断し辛い台詞でしたが、とりあえずマルチェロはそれにツッコミを入れはしませんでした。




「ただの策略かと思ったが…息が上がっているのは、事実らしいな。」

「…て言うか、マルチェロさんてばHPあり過ぎですよ。 そろそろ中ボスモードは終わって欲しい んですが、暗黒神も倒されたことですし。」




ふふ

マルチェロは、口の端で笑いました。




これが世に言うマルチェロの 大魔王顔 の所以なのでしょうが、もちろん当の本人は気付くよしもありません。




「ではお疲れのエイタス君、次で終わらせようか。」

マルチェロはエイタスを挑発する瞳で見詰めました。


「君の 最強最大の攻撃 で来給え。」




ふう

エイタスはため息のように、一息吐きました。




「自信家ですね。」

「自信という名の精神力が強くなくては、生きてはいけんだろう?」

「だからゴルドであんな事言ったんですか?」




ぴく

マルチェロのデコに、ほんのり怒りマークが浮かびました。




「僕はお言葉に甘えますよ…」

ですが、エイタスは 超涼しい顔 です。




「では僕の 最強最大の攻撃 で参ります… ギガデインっ!!」

エイタスは、この勝負で初めて、呪文を唱えました。

ですが、その雷撃はマルチェロには落ちず、エイタスの剣に落ち、そこで生き物のようにエイタスに纏わりつきました。








「お、おい、エイタス、それは…」

ククールは、冷や汗が流れ落ちるのを感じました。




「これが僕の最強最大の攻撃ギガブレイク です。」



そしてエイタスは、剣を構えました。




「受け切ったら私の勝ち…受け損なえば…」

「死にます。」




2008/12/15




マルチェロより、エイタスの方が好戦的な気もしてきた。




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