=(いこーる) その三

お菓子を飽食しすぎて胃がもたれているべにいもです。
飽食の時代と言われて久しいですが、DQ世界も含め、そんなのって「ありえない贅沢」で「女神さまに叱られちゃう」ことなんだろうな…と反省。

ということは、今回のお話にはまったく関係ないですから。









「…とまあ、そういうオチです。復興して間もないトロデーンにはいろいろ痛いことなんですが、仕方ないですね。トロデ王もそう言ってくれました。だからその埋め合わせは、みんなで全力でします。だってクラビウス王も言いましたもの。

『全力で幸せに成るが良い。』

って。 幸せに成るための全力なら、望むところです。」


マルチェロは言います。


「君の話は分かった。で、君は結局何が言いたいのかね?まさか自分がサザンビークの血を引くと暴露したら、私の君への評価が上がるとでも思ったのか?」

「まさか。」

エイタスはあっさりと答えます。



「上がるどころかむしろ、 いきなり斬り付けられる覚悟までしてましたよ?」

マルチェロは不快そうに言います。


「私はそれほど非常識な男だと思われていたのかね?」

エイタスは答えます。


「自分の今までの人生と行動を振り返ってください。」




エイタスは、そこでもう一度笑顔に戻りました。

どうやらエイタスの非常にナチュラルに見える微笑みは 実はなかなか努力を要するもの のようです。

若いのに苦労していますね、えらい若者です。




「でね、僕の言いたいことに戻ります。今回の騒動で、僕は思ったんです。 僕とマルチェロさんのとった行動って、根本は同じなんだろうな って?」

「…何?」

マルチェロは、いっそ睨むような目つきです。


「その…貴方は力を得るためになんでもして、そしてゴルドのあの場に立った。僕はミーティアを手に入れるために、サヴェッラでああした。 結局、自分の”欲望”の思うままに他人の迷惑を顧みなかったという点では、僕と貴方の行動は=(いこーる)だと思ったんですよ。」


「…」

マルチェロは渋い顔です。


「そりゃ確かに世間さまは 野心のための行動よりは、愛のための行動の方に点が甘い でしょうけど、 結局、世間さまに大迷惑をかける結果となれば同じ ですよね?そりゃ、貴方は結局、ゴルドの女神像を破壊し、暗黒神を復活させてしまったげれど、僕の方は表面上はなにも巻き起こさなかったという違いはありますが。」


エイタスは付け加えます。




「ソレって、結果論でしょ?」




「この世は結果が全てだ。」

マルチェロは間髪いれずに、 自らを断罪するように 言いました。




「僕は貴方のことを極悪人だと思っています。」

エイタスは言います。




「でも、それはそれとして すごい人だ とも思っていますし、まあいろいろありましたが、 貴方のことは結構好きです。」


エイタスは付け加えます。


「今のところは ね?」




「私のような極悪人 の、いったいどこを好いてくれるのかね?」

皮肉気に問うマルチェロにエイタスは言います。





「昔、ミーティアと読んだ本にあったんです。

悪に強き者は、善にも強き

と。昔の偉い聖者さまの言葉だそうです。でも、僕には意味がよくわかりませんでした。悪い人は悪い人じゃないかって。そしたらミーティアが言ったんです。

『とっても悪い人は、とっても良い人になれるってことですわ。』

僕はさらに聞きました。納得できなかったんです。なら、どうやったら悪人は善人になれるのか。ミーティアはこともなげに答えましたよ。

『愛の力ですわ。』」




エイタスは、マルチェロをじっと見つめます。




「僕には両親はなかったけど、ミーティアもトロデ王もいました。もちろんトーポも。お城の人も良くしてくれました。仲間たちもいました。貴方にはオディロ院長がいたんですよね、でも、失ってしまった。そして… 貴方は暴走したんです。」




「…」


「反論しないんですね。」

「…」




「僕は思うんです。貴方に他に大切な人がいたら、貴方はああはならなかったんじゃないかって。貴方の意志の力は強すぎるから、貴方は貴方自身で自分を止めるしか方法はなかった。でも、結局止められなかった。」

「そして、君たちが止めたのだ。君たちの方が強かったから、な。」

「…貴方を心配する人の意志の力が、強かったんですよ。」




ちら

エイタスは視線を下の方に向けました。




でも、 それはそれとして見なかったこと にして、視線を戻しました。





「だから、愛してください。」




「…私は誰かを愛する資格などない男だ。」


「誰かを愛することに資格など要りません。 いえ、むしろ 誰かを心から愛し、大切にすることが資格なんです。」

「…」




「ミーティアは僕がじゃがいもの皮むきでも愛してくれました。そして僕は、彼女がお姫さまでなくても彼女のそばにいました。 それでいいと思います。」


「…」




「貴方の高い能力は、強い意志の力は、良い方向に向けば多くの人たちを幸せに出来ます。 そしてそれは、貴方も幸せにします。」




「マルチェロさん。僕は 貴方が愛と幸福に包まれることが、貴方の一番の贖罪だと考えるから、貴方がそうなることを心から祈ります。」









長い沈黙。

マルチェロは、エイタスにそっと視線を戻すと、唇を動かしました。




「…私は…」














「そうそう、オレっ!!オレを愛そうよ、兄貴っ!!兄貴のビュディフォーブラザーのククールを愛しまくろうよっ!!そしたら兄貴を愛情いっぱいに包んであげるからさっ!!!!!ねっ!?ねえっ!?ねえってば!?」



















せっかくの 素晴らしすぎる雰囲気超盛大にブチ壊した ククールが、


誰に、

どうされた


かを知るものは、当のククールと、そして 加害者二人 だけだそうです。






2009/2/11




ククールを長い間黙らせた報いがコレ。
さすがククール、 兄の幸福を祈りながら、兄の幸福を阻害する男

マルチェロがエイタスの言葉をそのまま受け取れるのは、ほら、アレですよ。
全力で殴りあった番長同士がクサい言葉を応酬して、そして男として一回り成長する という、あの王道パターンだからです。

王道バンザイっ!!!




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