Moon Light Revenge その一

前回はお菓子を飽食しすぎて胃がもたれていましたが、今回も酒食を飽食しすぎて胃がもたれています。
どうやらこういう時には何も食べずにおなかがすくのを待つ方が良いらしいので、待ち中。

ということは、今回のお話にはまったく関係ないですから。









「マルチェロさま、美しい夜空ですわね。」

「真ですな、マダム。」


「マルチェロさま、本当に美しい星空ですわ。」

「左様でございますな、マダム。」


「…」

「…」




アローザ奥さまは、会話を続ける術を失ってお黙りになりました。

そして、マルチェロも何も言いません。




ほう

アローザ奥さまがため息をつくと、マルチェロはその顔を見ようとしましたが、奥さまは失礼にならない程度にそれから顔を背けました。




(…難しいですわね。 自然な会話 というものは。)




リーザス村にお忍びで遊びに来たミーティア姫から


「ご自分の恋心を、『レイディ』の言葉で覆い隠していらっしゃるだけですわ。それこそ、レイディに相応しくないなさりようじゃありませんの?」

との キッツイ一撃 ならぬ、一言をくらった奥さまは、改めてご自分の気持ちを振り返ってごらんになりました。









自分はマルチェロのことを愛しているのだろうか?












答え

愛している








結論が出てしまっては仕方ありません。


確かに、理想としては今頃は内孫の世話でもしながら老いを養っているはずでしたが、なにせ当のサーベルトが女神のお膝元に召されてしまいました。

そして、今一人の娘は 取り柄は見た目だけ の婚約者なんぞを連れ込んでいますので、 楽隠居なんて贅沢を言っていられる身分ではありません。



そして、 ビジネスパートナーとしてとても頼りになるマルチェロ男性として愛してしまった というのは、ちょっとはしたないと思わないでもないですが、 女神さまも許して下さるでしょう と、マダムは結論をおつけになりました。




ええ、許しますよ。




相手が誰であれ、とりあえず 愛することは素晴らしいことですから。




かくして奥さまは 「勇気」という名の素晴らしいもの を振り絞る決心をなさったわけです。









というわけで、まずは かなり気まずくなっていた マルチェロとの仲を 通常モード にお戻しになることからはじめましたが、なにせ奥さまのこと、 なかなかナチュラルにはいきません。




そして今宵も。









(マルチェロさまも、いま少し、自然な会話をなさってくれれば良いのに。)

奥さまはお思いになりますが、 まともに女性と付き合ったことがないマルチェロにそんなことを期待するのは、いっそ野暮というものです。




奥さまはお気づきではありませんが、今、二人が 二人っきりで 見ている夜景は 恋人同士で語り合うには絶好の美しさ です。



「マルチェロさま、美しい夜空ですわね。」

「真ですな、マダム。」


「マルチェロさま、本当に美しい星空ですわ。」

「左様でございますな、マダム。」




と、もう幾度目なのか良く分からないほど繰り返された会話を再び繰り返し、奥さまがまた黙り込んで、そしてため息をつこうなされた時です。




きらり

何かが遠い空のかなたに輝きました。




「まあ、流れ星ですわ。」

奥さまは思わず身を乗り出しました。




(流れ星が消えるまでに願い事を言えば、願いが叶うと言いますもの。 マルチェロさまと、もう一度自然な会話が出来るようにお祈りしないと…)



ですが、いじわるな流れ星はバルコニーから見えない方向へと消えていこうとします。

奥さまは精一杯背伸びをしようとなさいますが、背伸びには限度があります。




「ああ見えなくなってしまう。わたくし、もう少し背が高ければ良かったのに…」









ふわり

奥さまは、ご自分の足が宙に浮く感覚を味わいました。




「え…?」

状況が良く飲み込めずに、思わず振り向いた奥さまは、 鼻先のほんのすぐ近くにマルチェロの顔がある のに気付き、慌ててお顔をお戻しになりました。



「ま、マルチェロさ…」

「視界を高くしたいとのことですので。」

「…」

ええ、間違いなく 視界は高く なりました。

そう、 マルチェロの身長よりなお高く。


だって、奥さまは マルチェロにお姫さま抱っこされていらっしゃる のですから。






2009/2/22




実はマルチェロも、 いろいろ狙っていた に3000000000000ジンバブエドル!!




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