Moon Light Revenge その二

今回のシーンは年末、寒いさむーい中家路を急ぐ途中で、ド田舎なんで妙に美しい夜空を眺めながら考えていた代物です。
美しい夜空って…寒い。









こうなってしまっては もう、流れ星どころではない というものです。




寒いバルコニーでありますから、 かなりダイレクトに人肌の温かさが感じ取れ ます。



もちろんそれは マルチェロのぬくもり な訳です。





ドキドキドキドキドキドキ…

アローザ奥さまは、ご自分の心臓が爆発するのではないかと、気が気ではありません。




いえ、爆発するなら爆発するでいっそ構わないのですが、それが、 マルチェロにお姫さまだっこされたのが原因だ と知られたらと思うと、 奥さまには死ぬほど恥ずかしく感じられる のでした。




「ま、マルチェロさま…」

というわけで、何とか気をそらそうとマルチェロとの会話をお試みになる奥さまですが、通常でも不可能なことが、 こんな非常時に可能になるわけはありません。


もはや、


「星がきれいですね。」

の一言すら出てこない、奥さまでした。









「マルチェロさま…」
「マダム。」

出てこない奥さまの言葉を遮るように、マルチェロが言いました。



「失敬、御言葉を遮りました。」

「いえいえいえ、いいのです、マルチェロさま。」


「ですが、私に何か…」

「いえいえいえいえいえ、本当に良いのです。大したことではありませんものっ!!」

奥さまは いやに力いっぱい断言 なさいました。




マルチェロはちょっと不審そうな顔をしました。

奥さまは、レイディには相応しくないかもしれませんが誤魔化すように にっこり微笑み なさって、おっしゃいました。




「で、マルチェロさま。わたくしにご用事とはなんですか?」

「マダムに御願いがあるのです。」

「まあ、マルチェロさまがお願いをなさるなんて珍しいこと。わたくしに出来ることでしたら、なんでもおっしゃってくださいませ。」

会話が成り立つのが嬉しく て、 テンション20くらい の奥さまです。




「左様ですか、では、お言葉に甘えて。」

「ええ、なんでしょう、マルチェロさま。」

「口付けさせていただいても、宜しいですか?」



















は?




















奥さまは、 微笑みのお顔のまま、完全にフリーズ なさいました。









「御耳に入りませんでしたかな?」

何事も即断即決 のマルチェロは、奥さまがお返事なさらないのを、聞こえなかったからだと早合点したようです。




「キスしても、良いですか?」

とまあ、 誤解のしようがないくらいハッキリ と言いました。









「…」











奥さまは思わず、マルチェロの顔をまじまじと見つめてしまいました。




マルチェロは超真顔です。



しかも、優しく微笑んでくれたりしてくれたら、 いくら奥さまがツンデレ乙女だから って、優しく微笑み返したりも出来たでしょうに、 今から戦陣にでも赴きそうな大真面目さ なのです。




奥さま、とてもお困りになりました。









「れ、レイディは…」

奥さまは、自らの根幹を形作る レイディとはこんな時、どうあるべきか集 から、解答を検索してみました。




そして、一応、解答らしきものが見つかったので、そのまま仰いました。




「レイディは、そのような問いに

『はい』

などとは、決して言わないものです。」





「…そう仰るとは思っていました。」

「…」

奥さまは、そう呟いたマルチェロの表情に、 またやってしまったかしら と、微妙にはしたなくもお思いになりました。

















!?




身なんて背けようもなかったのです。

なにせ、 お姫さま抱っこ中 なのですから。









「御無礼。」




奥さまにマルチェロは、


短く、

しかも

冷静に


そうとだけ言いました。






2009/2/23




レイディがその問いに「はい」とは、決して言わないものだからといって、それが「いいえ」を意味するとは限りません。
けど… またやるか、マルチェロっ!!

しかも今回は 間違いなく確信犯 です。




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