我が最大の敵 その一

本日は童貞聖者シリーズを書き下ろしてのせるはずだったんですが、うっかり家のパソコンには入っていないソフトで話を書いてしまって開けない…ので、今からアロマルを書くことにします。
みなさま、インストールソフトのことはよく考えておきましょう。









「なんかついにこの二人、 正真正銘の恋人同士 みたいになったわね。」

ゼシカが言います。


「だよな、 兄貴もとうとう脱童貞したかな?」

ククールが、 彼が超美形でなければものすごく品が無く見える笑み で返します。


「ちょっと、相変わらずゲヒンなんだからっ!!」

「何言ってんだよ、ハニー。 愛し合う二人相手の体を求め合うのは至極当然 の事じゃねーか?」

「ま、二人で合意の上だったら、あたしたちがどうこう言うことじゃないんだけど…」

「んー…でもやっぱアレかな。 カラダの関係はまだ かな。だって 兄貴からはまだ童貞臭がする し。」

「…そんな臭い、あるの?」

「モチロンっ!!」

妙に自信満々に断言するククールです。





まあククールはさておくとしても、確かに最近、奥さまとマルチェロは変わりました。

いえ、特に何が変わったかと問われると難しいのです。

やはり「マダム」「マルチェロさま」と呼び合っていますし。



ですが、もはやアルバート邸の者も、リーザス村のみんなも、


あの二人は公認の恋人同士である

と認識しない人がいなくなりました。




そして、実はゼシカとククールの結婚の準備も着々と進んでいるのですが、むしろみんなの興味は、 奥さまとマルチェロは式を挙げないのか? の方に集まっています。


…ゼシカとしては、微妙なところではありますが。









さて、そんな日々ではありますが、ちょっとした異変が起こりました。

奥さまが、ひどい高熱で倒れられたのです。

いわゆるインフルエンザという病気のようですが、もちろんこの世界の人たちは知る由もありません。




そして…

「…マルチェロさま…」

「なんでしょう、マダム。御喉でも渇かれましたか?」

マルチェロは つきっきりで看病 していました。


「いけませんわ、そんなに付きっ切りで看病なさっては…うつると大変です…」

高熱にうなされながらも、マルチェロの心配をする心優しい奥様と


「何を仰るのです、マダム。 私に病魔が取り付けるとでも御思いですか?」

と、それでも看病を続けるマルチェロ。




確かに間違いなく、奥さまの心配は杞憂でしょうね?




「…それは…そうなのでしょうけれど…」

奥さまはため息をつかれます。


「でしたら、早く御治しになって下さい。」

「ええ、早く治さねばなりませんわ…本当に早く…」

「何故ですかな?」

「だって… 夫の命日がもうすぐですもの。」

「…」

熱に浮かされた奥さまはお気付きになりませんでしたが、近くに人がいれば マルチェロに微妙に殺気が走った のに気付いたはずです。


何故って…奥さまの言葉つきには 恋のきらめき が感じられたからです。









幸か不幸か、奥さまのお熱はなかなか下がらないまま、とうとう命日を迎えてしまいました。




「あーあ…やんなきゃならないな。」

ゼシカはマルチェロに言いました。


「何をだ?」

マルチェロが問い返します。


「ウチね、ちょっと変わってるの。歴代当主の命日の晩には”一人だけ”そのお墓に行くのよ。翌日は普通に法事とかするんだけどね。」

「一人だけ?」

「そう。 死んだ人が会いたい人を指名する のよ。」

「死人が指名など出来まい。」

「だから、親しい人が紙に自分の名前を書いて池に浮かべるの。そして最後まで浮かんでた紙の名前の人が 死んだ人が会いたい人に選んだ って考えて、その人が行くのよ。」

「…」

「お父さんが死んでから何回かしたけど、やっぱりお母さんが一番多かったな。 お父さん、お母さんのことがほんとに大好きだった って、サーベルト兄さんも何度も言ってたし。」

「…」

「でも、兄さんも死んじゃったし…今年はお母さんも無理だし。どうしよう…」

「私も名前を書いても構わんな?」

「…え?」

「親しいかどうかはともかく、ムッシュ・アルバートとは面識もある。もっとも、向こうも覚えているかは知らんが。」

「あ、ああ…いいわよ。経緯はともかく、もう家族も同然だしね。でも、なんで…」

ゼシカは問いかけましたが、 マルチェロがあまりに厳しい顔をしているので それ以上問いただすのはやめました。









そして、ゼシカとククールとマルチェロが名前を書いた紙の中で、唯一、マルチェロのものだけがいつまでもゆらゆらと水面に浮かんでいました。




「…という事だ。」

そしてマルチェロは、 宿敵でも打倒しに行くかのような面持ちで 墓に向かうのでした。






2009/3/11




ということで、またまた愉快な展開になってきましたよ?




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