Pures その三

行きつけのジムが改修工事中で泳げません。
かといって走れもせず…体がなまって仕方がないです。









「もう兄貴は童貞を卒業してもいいと思うんだっ!!」

ククールの恥ずかしげもない絶叫に、アルバート邸のメイドたちが視線を向けます。


「…あんた、いい加減下ネタからアタマ離しなさいよ。」

婚約者の アホピンクい脳みそ にツッコミを入れるゼシカです。




チッチッチ

ククールは指を立てて左右に振ります。

話が話だけに、とんでもないアホに見えて当然の仕草なのですが、 残念ながらククールは非常な美形なので それでも決まってしまうのが、悲しいところです。




「愛し合う恋人たちは“愛し合わ”ねばならないっ!!」

ククールは叫びます。


「なぜなら女神さまはオレたちにその為に 愛し合う道具をお与えになった からだ。」

もう、何に訴えているのだかよく分りません。




「そう思わねーか、ゼシカ?使っちゃいけないものなら、最初からついてるワケねーじゃんな?なっ? 付いてるってことは使わなきゃいけねーんだよ、出来るだけ速やかにっ!!」

「とりあえず そろそろ燃やしていいカナ?」

可愛くも 殺気まみれ で問うゼシカです。




ククールは、その台詞を聞いてため息をつきます。

あれだけアホな発言を繰り返していたにも関わらず、その姿は 周囲のメイドたちがため息をつくほど麗しい のは、とても哀しいことです。




「何のため息?」

ゼシカは思わず問います。


「ううん…今の君の台詞で思ったんだけどさ… 最近、兄貴が燃やしてくれなくてさみしいな って…」

「…」

ゼシカは、 何でこんな男と結婚なんてしようとしているんだろう、どうしよう、まだ婚約破棄とかイケるよね? という瞳になりましたが、ククールは気付きません。



「いや、オレ、兄貴の幸福を心から祈ってるから、兄貴がまっとうに恋愛とかしてくれて嬉しいんだ。君のママもステキな人だしさ。でもさ…やっぱ 弟のオレへの愛情表現も欲しいな っていうか…」

ククールは、 ウソみたいなカッコよさで振り向く と、ゼシカに言いました。



「コレって贅沢かな?」

「ゴメン、ツッコみたくもないんだけど。」

そしてゼシカが、本気で婚約破棄の算段をしはじめた瞬間、メイドが手紙を2通持って来ました。




「トロデ王からの私信と…」

「サザンビークの印章つきの手紙?」

2人は顔を見合せます。


「君は好きなモンと嫌いなモン、どっちから食う人?」

「あたしは嫌いなものから食べるわ。」

ククールは、サザンビークの印章のついた手紙を開封しました。




チャゴス




その単語を目にした瞬間、ククールは手紙を閉じます。




「ちなみにオレは好きなモンから食う派なんだ。先に食っとかねーと、もしかしたら次の瞬間、食えなくなってっかもしんねーし。」

そして、トロデ王からの手紙を開けます。




挨拶だの、手紙言葉だのは抜きにするぞい。

もうサザンビークからの手紙は届いとるかの?いや、もしかしたら同時くらいに届いとるかもしれんのう。

いいか、先に頼んでおくが、依頼は受けてくれい。 イヤなのは重々承知じゃが、頼むから受けてくれい。

ミーティアやエイタスからも聞いておるじゃろうが、ウチはそーゆーワケでああなんじゃ。





2人は顔を見合せます。


「どっちも美味しくなさそうね。」

「仕方ねーから、サザンビークからの、読むか。」




サザンビークからの手紙は、半公式文書のような形式で、時候の挨拶からきちんとした形式で書かれてはいましたが、その内容は要約するとこうでした。




チャゴス王子がアルバート村に遊びに行くからヨロシク




「拒否不可?」

「不可みてーだよな、トロデ王からすると。」

そして2人は、トロデ王からの手紙の続きを読みだすのでした。






2009/6/10




はい、大物登場ー。




莫魅力王子 その一へ


アローザと元法王さま 一覧へ

inserted by FC2 system