莫魅力王子 その一

欧米版の彼の名前が「チャームレス王子」だったと思うのですよ…え?スペル?知らないそんなの。英語とかムリだし。
で、訳したらこうなるかな…と…え?誤訳?知らない、そんなの。英語とかムリだし。









トロデ王の手紙は、冒頭のいやにはっちゃけた調子から少し落ち着いていました。


いやスマン、ちょっとテンションが20くらいになったのう。
では、テンション0で語りなおすぞい。


まず、例の あの生物 の訪問の話はウチに先に来たんじゃ。


うん、なんでかと思うじゃろ?

ワシも思ったが、とりあえず「拒否」と思って断ろうとしたんじゃ。

…まさか来てほしくなどないじゃろ?

ソコはなんもないとか、かんとか。

そしたらのう、使者はとんでもない事を言い出したんじゃ。


「では、あの村に背教者マルチェロが隠れているという噂は真実なのでしょうか。」

と。


ククールとゼシカは顔を見合わせました。




「…バレたの?」

「…まさか。」

ククールは自分の顔が青ざめるのを感じましたが、強いて強がってみせます。


「誰がバラすってんだよ。」

「でも、誰もバラさなくてもバレる可能性はあるわよ。なにせ、 あの、どこでもイヤミ だもの。」

ゼシカの言葉に、ククールはうなだれます。


「そうだよなあ、 あの兄貴 だもんなあ。存在してるだけでカリスマ飛ぶからなあ。 存在自体が華麗に目立ちまくる、オレの兄貴 だもんなあ。」

「どーでもいいツッコミだけど、今の『存在自体が華麗に目立ちまくる』は、あんたか、マルチェロか、どっちに掛ってるの?」

「両方。」

「…」

何故か得意げなククールはムシして、ゼシカは続きを読みました。




まさか疑ってはおらんじゃろうな?

ワシが口を滑らせたなどとは。

もちろん、ワシの可愛いミーティアはそんなうっかりさんではないし、エイタスがそんなことをせんというのも、また、知っての通りじゃ。

じゃが、都合の悪い情報というものは千里を走るもの。

下手にこれ以上拒んではよけい相手に疑心を抱かせる。


てか、ホントの魂胆は分かっとる、ワシらへのイヤガラセじゃ。

さすがにトロデーン本体で傍若無人するのは外聞が悪いので、あの駆け落ちの時に助力したそちらでウサを晴らそうというコトなのじゃ。

分かってはいるが…止められん、スマン、カンベンしてくれい。

なにせあの事件以降、サザンビークにはカシを作った形なのじゃ。

じゃから、ほんとーにスマンが、あの バカ王子 が来て傍若無人したとしても、堪忍してくれい。

損害なら弁償できる範囲で弁償するから。

どーか、どーか一つっ!!!





2人は顔を見合せます。


「どう思う?」

「どうもこうも…」

ククールは続けます。


「兄貴がここにいるって情報が、どんだけの確定情報なのか気になるよな。」

「でも、ホントに確定情報だったら法王庁から来るでしょ?トロデーンに先に話が行ったってことは、やっぱりあたしらへの嫌がらせじゃないの。」

「…分からん、カマかけられてる可能性もある。」

ククールは真面目な顔です。


「このリーザス村はそんなに強くじゃねーとはいえ、一応、トロデーン勢力下になんだろ?もし、兄貴がここにいるって法王庁がいきなりめっけたとしたら、トロデ王は

『知りませんでした。』

ってまだ言えるワケだけどよ。もし、今回みてーなコトで、一旦、

『いませんよ。』

って答えて、そして兄貴が発見されてみろよ。」

「…トロデ王が庇ったってコトになる?」

「なるね。当主の娘婿がその弟で、エイタスはその仲間だぜ?言い逃れ不可。国際問題だ。トロデーンは更にヤバい状況に追い詰められる…」

「じゃ、こんなトコでグダグダ喋ってる場合じゃないわ。さっそくお母さんとマルチェロも呼んで、」




「わざわざ御呼び下さらなくとも、とうにここに控えておりますが、ゼシカ嬢。」

いつものイヤミです。


「あんた、いつの間に…」

「重大事項を話し合うのに、そんなに大声を出すとは信じられん。聞いて欲しいと言わんばかりだ。」

「ちょ、誰のせいで…」

ゼシカは言いかけますが、


「心配しないで、兄貴っ♪」

やたらと嬉しそうなククールは、そのまま続けます。


「兄貴は大丈夫、オレが守るからっ♪」




「でもホント、居場所とか考えなきゃならないわね。どうしよう、ポルトリンクだと人が多いかな?いっそトラペッタとかにいる?」

「ねえねえねえっ!?オレの発言に対するリアクションは?ねー?兄貴ー!?」

「どのみち人が多い事実に相違あるまい。」

「兄貴ー、せめて燃やしてよーっ!!!ねーっ!?」

大泣きするククールですが、もはや誰も攻撃すらしてくれません。




「話はお聞きしました。」

そこへ、硬い表情をした奥さまがお入りになられました。


「マルチェロさまの仰ること、尤もだと考えます。下手に人ごみの中にお入りになるよりは、このリーザス村にいらっしゃる方が良いでしょう。大丈夫、村の人達はみな信頼できます。」

「…それでは、万が一のことがあった場合、この村に…そして貴女に御迷惑がかかります。」

マルチェロの言葉に、奥様はかぶりをふられます。


「貴方は大事な…このアルバート家の大事なお客人です。迷惑など仰らないでください。それに…」

マダムは昂然と頭を挙げられ、気高くもお勁い瞳でおっしゃいました。




「マルチェロさまは大丈夫です、わたくしがお守り致しますからっ!!」




「奥さまがオレの台詞パクったーっ!!!!」






2009/6/18




レイディは「パクる」などという下品なことはなさいません。




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