莫魅力王子 その二
ペルソナの企画に参加を申し込んだけれど、一行しか書けてない自分がいます。
だから、現実逃避でDQを更新します。
…すいません、ダメ人間です、ボク
「…マダム。」
マルチェロはそう呟くと、しばし沈黙しました。
「なんと気高いお心遣い、このマルチェロ、勿体無さの余り言葉を失いました。」
そして、勢い込んでそう言い放ちます。
「オレが先にゆったー」
「まあ、淑女として…そして…マルチェロさまの為を思えばこそ、当然の言葉ですわ。」
そして2人は見つめあい、ゼシカが思わずため息をつくまで、そうしたまんまでした。
「あら…」
「…」
そして、
恥ずかしげにそっと視線を逸らす
と、先にマルチェロが口を開きます。
「ですが、マダムの御好意に甘えてばかりもいられません。追われる身であるのは云わば身から出た錆です。貴女に御迷惑はかけられません。」
「まあ、なんと他人行儀な。わたくし、アルバート家の女家長として、我が屋の人間は守る責務があります。」
「…マダム…こんな私を
我が家の人間
とお認め下さるのですな。」
「まあ、マルチェロさま、それは…
ぽっ」
「みんなオレをムシするー」
そして再び、
思わずいたたまれなくなったゼシカが咳払いをするまで
2人は見つめあいました。
なんと言いますか
公認であると自他共に認めるカップルというのは、なかなか始末に悪いものではありますね
「ともかく、マルチェロさま?この村から出て行くなどとはおっしゃらないで下さい。へたに余所においでになられた方がむしろ危険です。そのチャゴス王子の接待はわたくしたちが致します。どうかマルチェロさまは、この村で、王子がお帰りになるまで目立たぬようにお過ごしください。」
「そうね、きっとそれがいいわマルチェロ。最悪、チャゴス王子のおとり捜査の可能性もあるワケだし。ね、ククール?」
「そーだよ、何度も言うけどオレが守るからっ!!」
いじけていたククールですが、ようやく話をフられて、嬉しそうに復活しました。
しつこく自分の台詞にこだわるあたりのうっとおしさは、
かつてのマルチェロなら、二度と復活できぬ消し炭にしたレベル
ではありました。
「…御言葉に甘えます、マダム、そしてゼシカ嬢。」
マルチェロは、奥様とゼシカに頭を下げました。
「いいってコトよ、兄貴。だってオレたち、家族じゃん。」
しつこく会話に割り込もうとするククールのウザさは、
かつてのマルチェロなら、その存在する大地ごと抹消することを切に望んだレベル
でしたが、マルチェロは何もしません。
ああ、人をかくも寛大にする愛の力とはなんと素晴らしいのでしょう。
「では、話は決まりましたね。」
マダムは仰い、マルチェロは再び一礼したその場を去りました。
「では忙しくなりますね、チャゴス王子を歓迎する準備を致さねばなりませんから。」
そんなマダムの台詞に、
「あの生物に歓迎なんかしなきゃなんないの?」
という、ゼシカとククールの台詞がハモって返されました。
「まあ、何を言うのです、ゼシカ、そしてククールさん。お忍びとはいえ、一国の王太子がいらっしゃるのですよ?」
そして、マダムは少し嬉しそうに、
「大国サザンビークの王太子でいらっしゃる方ですもの。きっと
気高くも麗しい貴公子でいらっしゃる
に違いありませんわね。」
「…………」
ゼシカとククールは顔を見合せ、
いかにチャゴスが気高く麗しい貴公子
とは
真反対というか真逆というか
を説明しようかと眼と眼で相談しました。
「えっと…お母さん?どうしてチャゴス王子が
気高くも麗しい貴公子だ
って思うの?」
ゼシカが遠慮がちに問います。
「あら。わたくし、サザンビークのクラビウス王がまだ王子でいらした時に、アスカンタにいらっしっゃたのを拝見いたしました。ええ、エルトリオ王子もご一緒でしたけれど、どちらの方も素晴らしい王子さまでいらっしゃいました。」
そして、
「どちらにお似かは存じませんが、きっと素晴らしい王子さまでいらっしゃるのでしょうね。」
と、またうっとりした口調でおっしゃいました。
ええ、いくら奥さまがお堅い淑女でいらっしゃるとはいえ、やはり
王子さま
という響きには
乙女をうっとりさせる魔力
があるようです。
2人は再び眼と眼で会話しましたが、
どうせ実物見たらガッカリする以外なにも出来ないことだから、今のうちだけでも美しい想像をしといてもらおう
という結論に達し、口をつぐみました。
そして、当日。
やって来たチャゴス王子をご覧になった奥さまからは
ええ、もちろん奥様はレイディでいらっしゃるから、お口はもちろん、表情にだってお出しにはなりませんでしたけれど、
がっかり
という
かなりキョーレツな効果音
が発されるのを、一同は確かに聞いたということです。
2009/6/28
はい、チャゴス登場ー。
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