莫魅力王子 その三

前回の更新時には1行しか書けてなかったペルソナ企画への投稿作品が、ようやく完成しました。
嬉しいので更新。









お忍びとはいいながらも、リーザス村としてはじゅうっぶん 多すぎる レベルのお付きを引き連れてきたチャゴスは、 もしかしたら、くだんの事件でちょっとは反省して、ちょっとはマシになっているかもしれない…てか、してるといいなあ、期待はあんまりしてないケド という、ゼシカとククールの淡い期待を いっそ気持良いほど粉砕 してくれるほど、 よりふてぶてしくなって いました。




「サザンビークの王太子殿下におかれましては、このような鄙びた田舎にわざわざご足労いただき…」

「ホントにド田舎だな。なんにもないにも程がある。」

「…」

なにせ お育ちの良い奥さま は、 こんな無礼な生物 に今まで出会ったことがございませんでしたので、一瞬、お言葉を失なわれました。


「まことに申し訳ございません。ですが、村の者たちも王太子殿下に少しでもご満足いただけるよう…」

「こんなチンケな村に、ボクが満足できるようなものがあるとも思えないけどなっ!!」

「…」


「ま、来てしまったからには仕方がない。いいか、このサザンビークの王太子たるこのボクが、チャゴスが、 わざわざこんなクソみたいなド田舎に来てやった んだからな。 感謝しろよっ!!」





誰がてめェなんぞに来て下さいって頼んだって言うんだ。燃やすぞ、このブタ王子がっ!!

もちろん口に出しての言葉ではありませんが(なにせ彼女も奥さまに教育された淑女ですから)、ゼシカのそんな心の罵倒は、 チャゴスと奥さま以外の全ての人間に 痛いくらいに伝わりました。




ちょいちょい

ククールはゼシカをつつきました。


なにっ!?今のあたしに触れたら、このベーコン王子の前にアンタを先に燃やすわよ。

殺意まみれなゼシカのガンに、ククールは目で訴えます。


いや、頼むからこらえてくれよ。何度もいうけど兄貴が…




「ああ、忘れていたが…」

ククールの内心を読み取ったように(もちろん、読み取っているわけはありません。むしろ、彼に そんな高度なコミュニケーション能力は皆無 に決まっています)チャゴスは言います。


「ボクがこんなつまんない地の果てに わざわざ来てやった 理由はほかでもない…」

そしてチャゴスは、ククールをにらみつけます。




「背神者マルチェロ のことで、だ。」

「…」


怒りに腸が煮えくりかえりそうだったゼシカも、そして奥さまも、もちろんククールも、チャゴスのその言葉に反応します。




「我がサザンビークは、敬虔なる女神の僕だ。」

チャゴスが言うと それだけでうさんくさい ですね。


「もちろん、現法王のニノ聖下にもそれは認めて頂いている。我がサザンビークは法王庁の厚い信頼を頂いているし、また、更なる信頼を得ることに吝かではない。」

そしてチャゴスは再び、ククールを睨みつけました。

もっとも背の低い彼のこと、 睨み上げる と言った方が間違いなく正確な表現でしょうが。


「ニノ聖下は、背神者マルチェロが未だ捕獲されていないことを非常に気に病んでおられるのだ。」

「捕獲って、兄は動物じゃありませんケド?」

「ふんっ!!」

チャゴスは、豚のように鼻を鳴らしました。


「ニノ聖下は、ここまで奴が見つからない以上、 誰かが奴を匿っている のではないかとお考えだ。そして、ボクも同意見だ。さぁて、 一体、誰が匿っているんだろうなあ…」

チャゴスは嬉しそうにそう言いました。




「まさか、オレだとでも言うんですか、王子?」

ククールは、 不敵に笑い ます。


「大国サザンビークの情報網があるのでまさかご存じないとも思わないんスけど、兄を法王即位式の場で倒したの、オレらですよ?で、大国サザンビークの情報網でご存じないとも、ま・さ・か、思わないんスけど、オレが兄にどんだけ虐待されてたかってコトも、ついでに付け加えときましょか。」

チャゴスは、露骨に嫌な顔をしました。


本当に知らなかった…のだとしたら、 いっそ大笑い ですけれどね。



「オレには、麗しの婚約者と、雅なその母君と一緒に、長閑やかなるこの村で幸せに過ごすっていう今の生活があるんですよ。わざわざそれをブチ壊してまで、あいつを助けたいなんて思いませんね。よって、安心して、 こんなド田舎 から、都会のサザンビークにお帰りください。」

ククールは、 あたかもマルチェロが乗り移ったかのように そう言うと、優美に失礼の挨拶をしました。



「口先だけでは何とでも言える。」

チャゴスは不愉快そうにそう言うと、


「ああクソ、ボクは腹が減ったぞ。さっさと食事を用意しろっ!!」

とわめき出しました。


「…ええ、もちろんお食事はご用意してございます。さ、王太子殿下にお食事を差し上げて。」

ようやく気を取り直した奥さまが、慌てて使用人たちにそう言います。




バタバタする中、ククールはほっと一息つきました。

















「ああクソ、ブタのエサかこれはっ!!」

チャゴスは壮大にわめきました。


「ボクはサザンビークの王子だぞっ!?こんな不味いものは口に入れたことすらない、高貴な生まれなんぞだっ!?」

不味いとわきめちらしながら、 ガツガツと無作法に食い散らす チャゴスは、 アルバート邸に足を踏み入れてわずか数時間 にして 邸中の人間からの敵意と憎悪を受けることに成功 したのでした。






2009/7/8




常人にはなかなか為し得ないことを天然でやってのける…それがチャゴスの スゴいところ だと思います。




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