ククールももちろん内心は、その服の色ほど怒っています。
怒ってはいますが、いくら
アホの子
とはいえ、なにせ
権謀術数渦巻くマイエラ修道院育ち
ですから、チャゴスのあんまりにあんまりな態度に、一抹の臭さも感じていたのでした。
よって彼は調査を開始します。
まず彼は救国の勇者たち一行であり、マイエラでは鳴らした
ホスト
聖堂騎士であり、
何より超絶美形
(中身はアホですが)でしたから、チャゴスのお付きたち一行(の特に女性)に口を割らせるのは、けっこうカンタンでした。
「で、何だっての?」
もんのスゴく不機嫌な婚約者に、ククールは言います。
「ブッチャケ…八つ当たり。」
「…」
「ホントはトロデーンに行くって言ったんだってさ。けど、クラビウス王が止めたらしい。」
「そりゃそーでしょ。そんなの、
火薬庫の中でメラの練習するようなもの
じゃない。」
「うん。
トロデーンとの全面戦争になっちまう
のは間違いないからな、ソレじゃ。」
「サザンビークの兵士たちには悪いケド、あたしそうなったら、
敵のど真ん中でマダンテる
わよ?」
「エイタスも似たよーなコト言ってたが、クラビウス王の狙いは、
あの事件をネタにチクチクとトロデーンから利権を削り取るコト
であって、全面戦争じゃない。」
「ソレも嫌なやり方よね。」
「王サマだの貴族サマだのってのはドケチでこすからいモンさ、基本。トロデ王やパヴァン王が別格なんだよ。ま、クラビウス王は平和な世の中じゃ名君でいられるだろーが、戦争が得意ってのは聞いたコトねー。しかもいざトロデーン相手に開戦ってコトになったら、オレたちがいるのは嫌ってほど分かってるからな。明らか損するコトはしたくねーだろ、あの人も。ま、そしたらあのブタは
『じゃあリーザス村へ行く』
って言ったんだってさ。」
「トロデーンの代わりにウチってコト?なんでウチ?」
「そりゃ、エイタスと姫さんを逃がした憎っくきカタキどもの住処だから、だろ?しかも、王国とかじゃねーから、ソートーチョーシぶっこいても、国際問題にはならねーし。クラビウス王も
安心して
息子をやれたんじゃねー?」
ククールのかなり投げやりで皮肉めいた言い方に、ゼシカは激怒します。
「ジョーダンっじゃないわよ、人んちにっ!!!てか、あのお付きたちはナニ!?チャゴスがナニしたって、黙ってはいはい従ってるだけじゃないっ!!!」
ククールはさらに皮肉な笑みを浮かべます。
しかしこうしているのをみると、
アホの子ではあるものの
本当に、よく似た兄弟ですねえ。
「はいはいハニー、お腹立ちはごもっとも。ですが、彼らの立場も考えてあげなよ。サザンビークを遠く離れたここじゃあ、クラビウス王の目も届かない。
直属のご主人サマはアレ
だ。理屈や諫言の通じる相手じゃねー。下手に逆らったら、
サイアク無礼打ち
だぜ?アレに無礼打ちくらって死ぬなんて
まさにサイッテーの死に方
じゃねーか、な?だとすっと、どんだけ良心が痛もうが、
お説ごもっともと拝聴
するのがイチバンだろ。永遠にここに滞在するワケじゃねーしな。」
そしてククールは、体をソファーに投げると続けました。
「しっかし、未来の王はアレだし、配下は、監視の目がなきゃ正義も秩序もなく保身に走る奴らばっかだし、官僚主義のワルいトコばっか、コト無かれ主義ばっか出てやがる。
サザンビークも先が見えたな。」
「…」
「おっそらく、
未来の王がバカ
でも成り立つように、官僚でキッチリと国のシステムまとめたんだろうがよ…ま、ご苦労なコトだけどな…
対象者がバカでも成り立つどんなに立派なシステム
でも、
大バカってのはそれごと破壊する
んだよな、悲しーコトによ。」
「アンタの憂国の言葉は確かにゴハイチョーツカマツリましたっ。はいはい、ご立派な体制ヒハンですよ。でっ!!
とりあえずサザンビークの未来とかはどーでもいい
のよ。一番の問題は、
今、あの生物をどうするか
でしょ?ったく…お母さんってば
箱入り奥さま
だから、あんな生物に関わるのなんて初めてなのよ。いい加減にしないと、お母さん、ストレスで倒れちゃうわ。」
ゼシカを横目で見て、ククールは体を起こします。
「オレだって何とかしてーのはヤマヤマなんだけどさ。ソコでネックになるのが…」
ククールは、癖で周囲を見回します。
ええ、確かに姿はわずかなりとも現わしてはいないのです。
いなくても、きっとどこか近くにいて、全ての会話は見聞きしているのでしょう
彼
は。
「法王庁さ。」
2009/7/15
サザンビークが治安が良いのは、多分、組織がしっかりしているからだと思われます。またバザーが盛況であるところからもわかるように、モチロン経済的には豊かで、施策も計画的に運用されているようです。そして、私人が公然と王太子をバカ呼ばわりしてもお咎めがない所をみると、検閲なんかも緩やかそうです。それもこれも全部
チャゴスがバカでもサザンビークが成り立つように
クラビウス王が心血注いでいろいろ整えたんだろうな…とは思うのですが、どー考えても、
チャゴスが王になった瞬間、すべてが壊滅する
んじゃないかと思うのです。チョーシ乗りでワガママな彼のこと、奸臣を登用して重税を課し、身の悦楽を恣にすることが王の役割だとか勘違いしそうで…そして、そんな王を批判する者は秘密警察が捕えに。もちろん、そんなことで民の怨嗟の声が止められるはずもなく、国内の貴族の中には、王の奸臣と癒着して甘い汁を吸うもの、そして「君側の奸を排除せよ」という名目で反乱を企てる者などあらわれてしっちゃかめっちゃかになり、そのうちどこかから漏れた「トロデーンのエイタスはエルトリオ王子の落胤だ」という情報から彼を担ぎ出そうとする者が現れ、「もうこのままほおっておいては大変なことになりますわ。エイタス、仕方がないので
わたくしたちが何とかして差し上げましょう」
と
にっこりほほ笑むミーティア女王
の決定の元、エイタス王婿元帥の指揮下、トロデーンの全軍がサザンビークへ向かって進軍を開始した…
アレ、こう考えると、ミーティアが一番の悪人じゃないか?
まあ、
緑の目をした人だから、仕方がない
ですよね?
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