Miss&Mr Detective そのニ
ルーラでポルトリンクに到着した二人は、べつべつに行動することにしました。
なんでかというと、マルチェロが準備してくれた
たんてい活動のしおり
の最初のページに
たんていのこころえ@:たんていは、ぜったいに目立ってはいけません。だから、団体行動はとらないようにしましょう。
と書いてあったからです。
「あたしたちは、社会見学の小学生なワケっ?」
ゼシカは激しく不満そうでしたが、ククールは大人しくしおりの通りに行動しようと思っていました。なにせククールもゼシカも、暗黒神を倒して世界を救ったとはいえ、こういう諜報活動というヤツには素人も同然なワケです。だったら、プロの手口に大人しく従っておいた方がいいでしょう。なにせ、マルチェロがいかにこういう裏の道の凄腕かということは、ククールは嫌というほどよく分かっています。仮にも聖職者としてどうかとも思わないでもないですが、女神さまの天罰が直接あたってないということは、女神さまの許容範囲だったのでしょう。
「んじゃゼシカ。オレは夜になったら迎えに来て活動すっから、別の街の宿屋で寝てるよ。危なくなったら呼んでくれよ、ハニー♪」
「だぁれが呼びますか。」
甘い口論なんぞしつつ、ルーラですっとんでいくククールを見送るゼシカでした。
たんていのこころえA:まずは、情報をせいりしましょう。すべての基本です。
「ふん、あたしだってちゃんと情報くらい持ってるわよっ!!」
ゼシカが用意していたのは、父の代からのアルバート家家計簿(という言い方も変だとゼシカは思いますが、なにせそう書いてあるのです)亡き兄サーベルトの秘密日記(ゼシカだけがありかを知っていたのです)でした。
マルチェロに自分の家の財政状況も知らんのかとバカにされたのが悔しくて悔しくて仕方がないので、まずはここらへんからおさらいする事にしたわけです。美貌の敵、徹夜をして読み込んだおかげで、ゼシカはなんとか金銭感覚を掴みました。
「ふーん、あたしの服とかって、こんだけかかってたんだー。」
お嬢様育ちで金銭的に不自由した事のない彼女は、一晩でいろいろ分かった気がしました。確かにエイタスたちと冒険はしていましたが、お金はリーダーのエイタス及び、トロデ王が管理していたため、彼女はほっとんど自分で買い物をしたことがありませんでした。なにせ、気付いたら
「ゼシカ、水の羽衣買っといたよ。君はみのまもりが低いから、防具は優先しないとね。(にっこり)」
とエイタスが防具を買ってくれていたのです。今思えば、なんて心優しいリーダーだったのでしょう。ゼシカは今更ながら、馬姫にエイタスを渡して、自分はククールで我慢したことを激しく後悔しました。
が、まあ後悔先に立たずです。ククールにだっていいトコはたくさんあります。
剣スキルが100になって覚えたジゴスパークをカッコいいと褒めたら、バカの一つ覚えみたいにジゴスパークを連発し、肝心のボス戦にMPがカラだとか、ちょっと人様よりキレイな顔をしているからと言って、行く先々で女の子に声をかけ、「ねーねーゼシカ、見た見たー?オレってばモテモテー♪」と激しく鈍感なコトを言ったので、メラゾーマでこんがりボイルドしてやったことが一度や二度ではないとか、守備力上、ファントムマスクをエイタスが錬金してやったら、街中でもそれをつけてうろついてたとか、またはダンシングメイルを素肌につけようとして、激しく止められ「なんで?」とキョトンとした表情をしたとか、なにより異母兄がアレとか…
怒
ゼシカはそれ以上ククールのことを考えると、見た瞬間撲殺しそうになったので、もうやめることにしました。
ともかく、父の代にはポルトリンクと特にもめた様子はなさそうでした。問題は、父がまだ若いのになくなって、兄が跡をついでからでした。
ドラゴンの月 女王の日。やはり最近、ポルトリンクから送られてくる筈の金額が少ない。なんど催促してもきりがないので、自分で行くことにしたが…はかばかしくない。向うはサーベルトぼっちゃん、サーベルトぼっちゃんとおだて上げてはくれるけど、お金の話になると言を左右にする。やはり、僕が若いから軽く見られているんだろうな。
ワイバーンの月 賢者の日。いくらなんでもあんまりだ。アルバート家と僕をバカにするにも程がある。ザバンドは、僕の祖父の代からポルトリンクで働いてくれているけれど、最近、あんまりに増長がすぎる。このままだとトロデーンに訴えてでも未納の税金をとりたててやるとまで言ったが、それでも予定の金額の半分程度だ。
…確かに、母さんと僕とゼシカが生活していくだけなら、リーザス村の収入からでもなんとかなる。けれど、母さんや僕はともかく、ゼシカはまだたくさんの未来があるのだ。遠くの町に留学したくなるかもしれない。あの子は古のリーザスの魔法使いの血が濃く流れているみたいだから。それに、結婚するのだったら、素敵な結婚式をあげてやりたい。ラグザットはまあ…僕としては相手としてどうかと思うけど。ともかく、そのためにもお金はためておきたい。
女神の月 魔法使いの日。僕は本気でトロデーンへの告訴を考えている。そもそも、ポルトリンクは僕の祖先が出資して出来た港町で、その投資の見返りをうけるのは女神さまにも守られた正統な権利のはずだ。なのになんで…いや、愚痴を言うのはよそう。
でも、今日までためらっていたのは、これが表立った問題になると、恐らく間違いなく、大量の解雇者が出るということだ。中にはつい出来心から不正に手をかしている人だってたくさんいるはずなのに、それまで一括処分になってもいいのか、正直僕はためらっている。
そういえば今日、村のひとたちから聞いた話によると、リーザスの塔の入り口が開かれていたらしい。村人しか開け方を知らないはずなのにどうしてだろう。ともかく、ちゃんと調査して対処してから、この件には本格的に取り組もう。
日記はここで止まっていました。
「サーベルト兄さん…あたし、なんにも分かってなかったのね。」
ゼシカの目に涙が浮かびました。
ゼシカは昔から、出来の良い…というか、良すぎる兄が大好きでした。大好き過ぎて、 兄が村の女の子とちょっと親しげに話をしているだけで睨んだり、わざとケンカをふっかけては、叱られて泣いてみたり、そして泣いたら謝ってくれるのが嬉しかったり、兄に比べて劣りすぎるラグザッドにメラの炎のかたまりをぶつけようとしてたしなめられたりしました。それもこれも、兄のサーベルトが大好きすぎてやってみたことなのです。
なにせ彼女のだいすきなサーベルト兄さんは、
温厚で、親孝行、知勇兼備で、責任感に溢れ、誰からも好かれる人柄の良さを持ち、しかも美形
だったのです。
そんな兄が、笑顔の内にこんな苦悩を秘めていたなんて…
「それなのに、あたしとお母さんに心配かけまいと、全部だまってたのね…」
ゼシカの大きな胸は痛みましたが、そんなステキに兄を持てた喜びもそのデカい胸いっぱいに広がりました。
どっかのブラコン聖堂騎士(赤色)の異母兄(性格と口が激悪)に、サーベルト兄さんのつめの垢でも飲ませてやろう。だから、帰ったら兄さんの切ったつめを捜さなきゃ♪
ゼシカは決心して、ポルトリンクに駆け出しました。
が
ハッキリ言ってゼシカは顔と胸 が割れすぎていました。これではいくらなんでも、極秘諜報活動はムリってものです。多少手荒な聞き込みなんぞしようものなら、即情報がいってしまいます。
たんていのこころえB:顔が相手にバレてしまっている人は、深入りはよしましょう。相手に無用のけいかい心を与えるだけです。
結局、ゼシカに出来たことと言えば、
・ポルトリンクの今の元締めは、ザバンドという中年の男である。
・どうやら、南の大陸との貿易であがる収益の大部分をピンハネしているらしい。
・ポルトリンクの実力者の多くは、こいつにたぶらかされている。
・しかもそれだけではあきたらず、アルバート家の持つポルトリンク営業権を公式に剥奪しようときなくさい活動をしていなくもない。
・元冒険者、強いらしい。
・女好きだけど、気の強い女は嫌い。
・家族は、ネコ一匹。ぶちの茶色で、すげえブス猫だが、まさに猫かわいがりしている。
・家の観葉植物に「ナタリー」と名づけて、毎朝あいさつしている。
・最近、自宅の玄関がキシんでいるので、取り替えようか悩み中。
という、サーベルトの日記に書いてあった内容の事実確認 +αだけでした。
たんていのこころえC:行き詰ったら、無理をするのはやめましょう。むだです。他の人の助力を仰ぎましょう。
「アンタがゆーか!!」
人生 是 無理。
のマルチェロ製作のしおりにツッコミをいれたゼシカでしたが、まあ確かにこれ以上は無理そうです。限りなくアテにはならなさそうですが、ククールにバトンタッチすることにしました。
「オレに任せろって、ハニー♪」
「あんたしか任せられる人がいないのが、あたしの不幸ね。」
甘辛い会話を交わし、そして次はククールが活躍する番です。
前回、今回とわりとマトモですね。ちなみに管理人の書く主人公は、とても立派な人みたいです…おかしいな。
サーベルト兄さんは、公式設定どおり、完全無欠の美青年にしてみました。そりゃこんな立派で優しい兄ちゃんがいたら、
すげえはすげえけど人格に難がありまくり
のマル兄はムカつくよな、ゼシカ。