Miss&Mr Detective その三
ゼシカに 「役立たず」 と酷評されたククールでしたが、ちいとも気にしてはいませんでした。 なにせ、罵声は修道院に入ったころから毎日のように兄から浴びせられていました。あの兄から受ける罵声は、もういっそ芸術的といっていいくらいこっぴどいものでした。普通の神経をもった人なら、三年で衰弱死しそうなものを、かれこれ十五年は聞き続けていたのです。言うなければ、罵声を浴びることのプロですので、ゼシカの悪口くらい、ちょっぴりすっぱいレモンキャンディーみたいなものでした。 たんていのこころえE:だれが得をしているのかよおく考えてみましょう。もちろん、そのまわりのひとたちのことも忘れずに。 「ザバンドって奴がぶいぶい言わせてんだよな。確かに、デケえ邸に住んでやがったな…しかも悪趣味な。まだピカピカしてっから、本格的に儲け始めたのは最近か。」 ゼシカには無能とか役立たずとか言われてしまいましたが、ククールはハッキリ言って、腐敗した金持ちを見ることにかけてはプロでした。聖堂騎士団見習いの頃から、 「どうせお前の中で役に立つのは顔のよさだけだ。」 という兄の褒め言葉をありがたく拝聴しながら、天使のようなつくり笑顔で金持ちの邸でお祈りをしていたのです。そしてククールは知っていました。 ほとんどの成金は、ケチで人望がない。 想像通り、ザバンドは玄関の修理もケチるほどで、ほとんど感心するくらい人望がありませんでした。もちろん、彼のこの町での権力と財産に群がる輩は多いようですが、彼に忠誠を誓う、というような者はほとんど一人もいないようです。 「なーんだ、小物の悪党かよ。兄貴の足元にも及ばねーな。」 一応、聖職者の身としてはかなりどうかとも思いますが、ククールの知っている兄は、感心するくらい大物な悪党でした。 坊主丸もうけと言うにしても、丸もうけにすぎる寄付の強要や、なににつけ巻き上げる拝観料その他。しかも、そうやって得た収入を巧妙にバラまくその手腕の的確さ。 人というのは、それで些少なりとも利益をえることがある不正には目をつぶるものだ。 なんて言いつつも、圧倒的な人望を得ていたのは、まさに賞賛に値するでしょう。きっと、女神さまだって褒めてくださるに違いありません。オディロ院長は泣くかもしれませんが。 ゼシカは灼熱の炎を吐くほど怒るかもしれませんが、ぶっちゃけククールには、兄が悪党だろうが聖者さまだろうが割りとどうでもいいことでした。 兄貴がオレと仲良くしてくれればいいや。 と思っているからです。 だから、兄が仲良くしてくれる今は、とっても幸せです。なんだかその割りに泣いてばっかりな気もしますが、きっとアレが兄の愛情表現なんだ …と、ククールは無理に思い込むことにしていました。 たんていのこころえF:とりあえず必要なことはぜんぶ調べましたか?それでは、じぶんがとるべき解決方法をかんがえみましょう。それによって、さらにしらべるべきことがわかります。 「別にフクザツなワケじゃあねえんだよな。つまりはザバンドのおじさんがいなくなってくれりゃ、とりまきもちりぢりになんだろうし。こんな小物にゼシカんちが悩まされてんなんてよ…」 確かに、ザバンドを合法的に辞めさせることはむずかしそうです。ゼシカが力いっぱい訴えていたように 「サーベルト兄さんでも頭悩ましてたんだからねっ!!」 ということです。 「合法的ね…よし…」 ククールは小さく呟くと、酒場へと向かいました。 「いらっしゃーい(ウッフン)」 露出度と色気が過剰な声で出迎えてくれたのは、ザバンドのレコだと言われる、チチとケツがイイ、バニーちゃんでした。 「ヨロシクーっ♪(魅惑の笑み)」 ズギュゥウウウウウウンンンンンンンン!! ククールの魅惑の笑みは、バニーちゃんに会心のヒットをしました。
そしてククールは、別のムードのいいバーで、バニーちゃんに酒とエンジェルスマイルを大量追加し、ザバンドの個人情報+αとその邸の見取り図+βをバニーちゃんから聞き出しました。
本当はその後、もっといろいろといいコトをしたかったのですが、
「バレたらオレのびぼーが、過去のものになってしまう。」
と思ったので、お別れのあっついちゅーだけで我慢して、ポルトリンクを出ることにしました。
たんていのこころえG:忘れ物はありませんか?
「ったく兄貴ってば、オレは小学生じゃない…魔封じの杖バーに忘れたー!!」
というわけで、痒い所に手が届く兄の「たんていかつどうのこころえ」と、ゼシカのやる気と、ククールのエンジェルスマイルのおかげで、必要な情報は手に入りましたとさ。めでたしめでたし。
2006/7/4
というわけで、次からは活動編に入ります。兄好きのみなさん、次回は兄が出てきますよー。
ちなみに拙サイトのククールは、IQは高いです。でも、アホなんですよ…