おたんじょうかい その一

生まれて初めてバタフライをしました。
あの背筋と腹筋をフル稼働させたクネクネした泳ぎ方がさっぱり出来なかったので、ものすごくがんばって(負けるの嫌いなんで)練習しました。
そしてら翌日の今日…疲労で苦しすぎて、いったん起きて朝ごはん食べたけど昼過ぎにもっぺん寝ざるを得なくなりました。
そして、今です。恐るべし、バタフライ。
でも、まだ手がどうなってんのか分かりません。来週のスクールまでひたすらクネクネします。









リーザス村のみなが、とても忙しそうに働いています。

そしてアルバート家のみんなも。



「ねえ、この飾り付けどう?」

「うーん、いいカンジ。この色は?」

「ステキよ、 奥さまにとってもお似合いになる わ。」

メイドたちも、 とても楽しそう です。




なぜって?




「本当に楽しみね。奥さまのお誕生日会 なんて。」

だからです。




「おかーさまー、ちょっとお聞きしたい事がー」

ククールが言います。


「あ、ダメダメ。今お母さん、ドレス合わせ中なんだから。」

ゼシカが止めると、


「おっ、気合い入ってんな。」

ククールは嬉しそうに答えました。


「なんか…お誕生会とか久しぶり。サーベルト兄さんが生きてた時まではけっこうしてたのに…あれ以来、旅とかいろいろで。」

「その時も村総出でやってたのかい?」


「そんなに派手にじゃないけどね。でも、兄さんは村のみんなに好かれてたから、結局、村の人たちと一緒に楽しくはしゃいでた。でもお母さんってば元々レイディな上に、お父さんが死んでからは特にね。」

ゼシカの言葉に、ククールは


ちっちっち

と指を横にふりました。


「あんな美人がパーティーでおすまし顔なんてもったいないぜ。君のママにアドバイスしてよ、 とびきり派手でセクシーなのでヨロシク って。」

「…するけど、聞いてくれるかなー?」

ククールはもう一度指を横に振ると、


「だって兄貴に気合い入りまくりなんだぜ?」

と、 奥さまへは一番の殺し文句 を付け加えました。



「…なんか、マルチェロがそういうことに気合いいれるのって…意外。」

「だって兄貴ってば元は マイエラ一の稼ぎ手 だぜ?パーティーとかも慣れまくりだって。それに加えて、 オレの兄貴だから元がイイし。」

どっちを褒めているんだかよく分からない台詞ですが?



「マルチェロ、何着るの?」

ですが、ゼシカも喰いつきました。


「まだナーイショ!!」

ククールは、 兄と秘密を共有できているのが嬉しくてたまらない ようです。


「もーイジワル。いいもんね、お母さんのドレスだってまだナイショよ。」

「ふふん、きっと君のママだからスゲーステキだろうけど、 それでも今回の兄貴には絶対食われちゃうねっ!」

「もー、負けないんだから。」

何だかよく分からない代理戦争 が勃発しつつあるようです。




「でも、ほんっと楽しみ、お母さんのお誕生会。」

「オレも楽しみ。」

二人は嬉しそうに笑いあいます。


「イヤな記憶 なんかブッ飛ばっちゃうくらい、楽しもうね。」

「だな。 あの物体のコトなんて奇麗さっぱり記憶からトバしちまうくれー 楽しもうっ!」


「みんなもね、すっごい楽しみにしてくれてるのよ?ご馳走とかもスゴいんだから。」

「飾り付けとかも、気合いが違うよな、気合いが。」


「お母さん、ほんっとにこの村の人たちに愛されてるよね。」

「そしてモチロン、オレの兄貴にからが一番!!愛されてるかんな。」




二人はそして、もう一度顔を見合せます。




「なんか…ホントいろいろあったけど…その、今でも完全に納得してるワケじゃないんだけど…」

「ど?」


お母さんが幸せなのが、すごく…嬉しい。」

「オレも、兄貴が幸せなのがすげえ嬉しいっ!!」


二人はちょっと黙って、そして言います。




「でも、あたしたちもそろそろ…ね?人の世話ばっか焼いてないでさ。」

「だよな。このお誕生会が終わったら、本格的に用意しようぜ。」

「招待状書いて、式の用意始めなきゃね。」

「君のドレスはもう借りてるから、オレのな。」

「うん、ククールに似合う、とびっきりの注文しようよ。」




そして二人は見つめ合い、




むちゅうっ




という音がしました。




「幸せよね。」

「幸せだよな。」

そう言いながら、ククールはちょっと浮かない顔です。


「どうしたの?」

「ううん、なんでもねーんだ、ねーんだけどさ…」

ククールは奇麗なほほ笑みでごまかしました。







2009/8/20




Q 奥さまのお生まれは何月なのですか?
A 乙女なのでおとめ座です。

べにいもとお揃いですね、奥さま?




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