Shall We Dance? その一

奥さまのお誕生日話を書いていたら、自分の誕生日が来ちゃったよ、ヒャッホイ!!
という訳でしばらくこのシリーズは 奥さまの姿を借りたべにいもの誕生日ネタ になったり…するわけないような、なるような。
ともかく、 お誕生日にものすごくカッコいい男にエスコートされてダンスしてみたい なあ…









「…」

奥さまは、 凍れる時の呪法をかけられたかのように硬直 なさいました。




そして、ようやく解凍なさった奥さまは、 ぜんまいじかけの人形のようにカクカクと腕を伸ばし なさいます。




もちろん、マルチェロが嫌だからではありません。

マルチェロのカリスマチャームに当てられてショック状態 なだけです。




マルチェロは


にこり

とほほ笑むと、




パチン

と、いつぞやのように指を鳴らし、


「曲を始めたまえ。」

と、 遅れて入って来た癖にあたかも主催者のように命じ ました。




まあともかく、それでようやく周囲の時が動き始めます。

アスカンタの楽隊は音楽を奏で出し、マルチェロは 実はまだククールが開式の挨拶を述べていないのですがそんなことは当然無視で 奥さまをリードして、踊り始めました。




「…どしよっ、か?」

ゼシカが問います。


「…」

ククールは 唇を尖らせてしばらくスネ ていましたが、しばらくして、


「踊ろーぜ。」

と、我が婚約者の手をとって、踊り始めました。




そして続々、お客たちは手に手を取って、広場を舞い滑りはじめました。









「マダム?」

マルチェロの声に、奥さまは


はっ

と我にお返りになります。



「如何なさったのです、御顔が固いようですが。」

「…マルチェロさま…」

奥さまは、その固いお顔のまま、お返事なさいました。



「ええ、すみません。 あなたがあまりに素敵すぎて。」

マルチェロは、ふ、と失笑します。


「それは光栄。ですが、毎日マダムとは顔を合わせておりますのに。」

「いえ…その… 今日のマルチェロさまは、一段と素敵でいらっしゃいますわ。」




聞いているだけで、赤面するか失笑するかどちらかしかない台詞 ですが、幸い、 二人っきりの会話 なので平気です。





「わ、わたくし…その… あなたのような素敵な方とダンスを踊ったら天罰が当たる気がします。」

「何を仰います、マダム。そんなことごときで天罰が下ると言うなら、 まず私が貴女のような麗人を独占した罪で罰されねばなりません。」


うーん、 聞いてるだけでムズ痒くなるような台詞 ですね。

まあ奥さまはともかく、 マルチェロには罰されねばならない罰が多すぎてどこから罰していいのか困ります けれどね。




ともかくも、二人は周囲で誰が踊っているかなんてなんのその、 完全に二人だけの世界 で踊ります。




「…」

奥さまの唇が小さく動かれました。


「…?」

問う瞳のマルチェロに、奥さまは小さな声で仰います。


「わたくし、歌のお姫さまになった気分ですわ。」

マルチェロはしばし沈思黙考し、そして唇を動かします。


「わたしは今夜はお姫さま♪」

その唇から洩れたメロディーに、奥さまはお顔を輝かせます。


「まあっ、わたくしの生国の童歌ですのに、どうしてご存じですの?」

「…方々を喜捨集めに奔走しましたから。」

「さすがマルチェロさま、知識が該博でいらっしゃいますわ。」

「アスカンタの民謡ですな。丁度良い。」

マルチェロは踊りながら再び、

パチン

と、いつぞやのように指を鳴らし、


「マダムのご要望だ、曲を。」

と、 主催者でもなんでもないのに、完全に仕切り倒して命じ ました。

けれども恐ろしい事に、 その命令口調があまりに板に付きまくっていた


ため、アスカンタからの楽団は、おそらくパヴァン王から命じられるよりはるかに俊敏に命令に対応しました。

まあ、 奥さまがふと口になさっただけの童謡のメロディーのみならずタイトルまで瞬時に脳内検索を成功させた彼の記憶力と知識力 に免じて、今回は勘弁してあげるべき傲慢さでしょう。




そして、曲の演奏が始まりました。




2009/9/6




マルチェロ、仕切りすぎ!!
とツッコムのは野暮ですね。

まあともかく、アロマルのトップにも置いてありますが、結末予測アンケート設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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