愚弟三昧 その三
みなさま、燃やされククールが本当に好きなことが良く分かりました。
何かに渇いていらっしゃるんでしょうか?
ククールとゼシカは、
お茶碗に山盛りにしたお赤飯
を、漬物で食べていました。
「…オレ、思うんだ…」
ククールが、お赤飯の粒をほっぺたの端につけたまま、真剣なまなざしで言います。
「聞きたくないけど、ナニ?」
「兄貴、巧くいかなかったんじゃないかってっ!!」
「…」
ゼシカはものすごく予想通りの発言だったので、何も反応せずにお赤飯を口に入れます。
材料から吟味され、きちんと炊き上げられたお赤飯はとっても美味です。
これでちゃんとオカズがあったらなあ
ゼシカはそう思いながら、漬物をぽりぽりと齧ります。
「だってさ、
ドーテー卒業したらエラくなった気がする
ワケよ男ってっ!!しかも兄貴ってば、
元からエラさフルスペックキャラ
だからさ、それはもう尊大さネ申レベルとかになっててもおかしくないのに、何、あの
『ありがとう』
って謙虚さ?おかしいだろ?おかしいよなっ!?」
ゼシカは、せめて卵焼きくらいでも焼こうかしら?と思いながら、お赤飯を食します。
「だから、ぜってー巧くいかなかったんだって!!」
だむんっ!!
ククールは力いっぱいテーブルを叩きます。
「兄貴ってばプライドの塊みてーな人だから、奥さまとの大事な初夜が上手くいかなさすぎて、
人格崩壊とか起こしちまった
んだってっ!!どーしよー!!オレの大事な兄貴が、
自殺未遂とか試みちまったらっ!!
ゼシカは、まともに聞くことすら苦痛なのでツッコミを返さないため、我が代わってツッコミをしましょう。
良いですね?
では、行きますよ?
お前の兄にとって、世界を滅亡させかけたことより、童貞喪失が上手くいかなかったことの方がはるかに重大なのかよっ!?
ともかく、ククールが姉さんかぶりと割烹着をかなぐり捨てて、
大真面目ではありながらどこか嬉しそうに
マルチェロを探しに行こうとした時です。
「ゼシカお姉ちゃん、ククールお兄ちゃん、お赤飯もらいに来たよー。」
孤児院のチビっこたちがやって来ました。
「ありがとー、取りに来てくれたのねー。」
ゼシカは優しい微笑みを浮かべると、いくつかのおひつに分割したお赤飯を子どもたちに渡します。
「重いけど大丈夫?」
「うん、力持ちの子ばっかで来たんだよ。」
子どもたちは二人ずつくらいで、よいしょよいしょとお赤飯を運ぼうとします。
そのうち一人が、ふと気付いたように言いました。
「ところでゼシカお姉ちゃん、
お赤飯ってお祝い事がある時に炊く
ものなんだよね?昨日はアローザ奥さまのお誕生日だったけど、
今日はどんなお祝い事があったの?」
子どもたちは
無垢なキラキラした瞳
でゼシカに問います。
「えっとぉ…」
「いやっ!!やっぱりオレは兄貴の男としての名誉を重んじるっ!!」
ククールがいきなり
男前に叫び
ます。
「いいかおチビさんたち、よく聞きなっ!!今日はなあ、オレの大事な兄貴が、どう…」
「メラゾーマっ!!」
深紅の火球がククールを呑みこむのを、孤児院の子どもたちははっきりと見ました。
「わー、ひさしぶりだねー。」
子どもが言います。
「畑のおばさんが最近見なくなってさみしいねー、ってゆってたのにー。」
子どもが言います。
「裏のおじさんも言ってたよ、黒こげのククールお兄ちゃんが最近転がってないねえって。」
子どもが言います。
どうやら、
ククールが黒こげにならないことを、村人たちも物寂しく思っていたよう
です。
しかし、一人の女の子が厳しい顔をしてゼシカを見上げました。
「お姉ちゃん。」
「…何?」
「ククールお兄ちゃんを燃やすのは全然いい
んだけどね?
室内で燃やすと火事になるかもしれないから危ないよっ!!」
ゼシカは深く頷くと、女の子に軽く頭をさげました。
「そうね、ありがとう。ちょっとカッとしちゃって…
次からは、ククールを燃やす時は周りに他に燃えるものがない屋外にする
わ。」
女の子も満足そうにうなずき、そして子どもたちはお赤飯を抱えて孤児院に帰りました。
そしてゼシカは、子どもたちが立派に育っていることに深い満足を覚えました。
「さっ、お赤飯たべちゃおっかな。」
そしてゼシカがもう一度テーブルにつきかけた時です。
「ゼシカねーちゃんっ!!」
にぎやかな足音と共に、ポルクとマルクが入って来ました。
「うわっ!!ククール兄ちゃんの焼死体だっ!!」
マルクが叫びます。
「ホントだ。
なんつーか、懐かしいよなー。」
ポルクがしみじみと口にします。
「なーに子どものくせに懐かしいとか言ってんの?」
「おっ、オレをガキ扱いして。」
ポルクは不満そうに口を尖らします。
「ポルク、そんなことより…」
「おっと、そうだった。はい、これ郵便。」
「郵便?」
ゼシカが受け取った簡素でカワイイ手紙には、一言こう書いてありました。
赤ちゃん生まれました。by ミーティア&エイタス
「うそー、おめでたすぎーっ!!」
2009/10/25
焦げククールに対するみんなの反応はこんなもの。
ある意味、教育上よくないかもしれません。
そして、最近赤ちゃんネタが多いのは、なんとなくべにいもの中で
ベビーブーム
が起こっているからです。
いいよね、赤ちゃん。
そして結末予測アンケートまだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。
Happiness その一へ
アローザと元法王さま 一覧へ
結末予想実施中