Tales of Hissatsu!! その二




ククールのルーラでポルトリンクまですっとぶと、街の外でマルチェロは言いました。


「ククール、もう一度聞こう。お前はアルバート家の婿になりたいのだな?」


ククールは

違うんだ。オレはゼシカと結婚して、周りにも祝福されて幸せに暮らしたいだけなんだ!!

と兄にもう一度説明するのは億劫だったので、黙ってうなずきました。

 兄は

愛のために努力する

という概念を理解出来なさそうだったからです。



「そうか、ならいい。」

それはそれとしても、兄が自分のために尽力してくれるというシチュエーションが激しく嬉しいので、ククールは兄の好意?に甘え?ることにしました。




「ククール、名家の婿に必要なことはなんだ?」

「見た目の良さ?」

「貴様のアタマの中に入っているのは、豆腐か!?」

「だって、逆玉にのるには外見必須じゃん!!」

「外見は確かに取り入るには必要かもしれん、だが!!それだけでは飽きられたら終りだ!!貴様のとりえは、他にイカサマくらいしかないだろうが。」

「なんだよー、オレは簡単に飽きられるていどの美青年じゃねーもん。世紀のびせーねんだもん。」

「もういいからその軽い口を閉じろ!!」

「兄貴が先に聞いたんじゃん。」

「(悠然と無視して)役立つことだ!!そして、自分の居場所を確立することだ!!顔とイカサマ以外の取り柄を持て!!無理だったら捏ね上げろ!!」



「…オレ、暗黒神倒して世界を救ったのに。」

「人に知られん善行などに何の意味もない(断言)」

「ぶー」

ククールは不満そうにほっぺたを膨らませてみました。

アンタいくつよっ!?

ゼシカがいたらツッコんでくれたのでしょうが、兄は気持ちよくスルーして続けます。




「自己の存在理由はうっとおしがられるくらいにアピールしろ!!今回の件は、お前の婚約者にとっては不運かも知れんが、お前にとっては好機だ。白馬の騎士になれ!!アルバート家の危機を救った役に立つ婿だと全力でアピールしろ。」

「分かってるさ。で、それでどうするワケ、兄貴?」

ククールは、ザバンドの屋敷内見取り図をぴらぴらさせながら言いました。

ククールには、兄のしようとしていることがけっこうハッキリと分かっています。


ええ、サーベルトみたいな立派で善良な青年なら、けっしてしないようなコトだろうと。




「…現世の法と、女神の法、重んじるべきは?」

「女神さまです、団長どの♪」

「よろしい。では指令だ…」








と、ある倉庫。


「コレはいい品ですなあ、ザバンド様。」

「当然だ。遠くパルミドの地下組織から手に入れた一級品だぞ?トラペッタあたりに流せば、さぞやいいもうけになるだろう。」

「ほっほっほ、ザバンド様も悪人でいらっしゃいますなあ。」

「なんの、おぬしには負けるわ。」

気持ちいいくらいの悪人会話をしている人々が居ました。

中央にいる、いっちばん凶悪そうな顔をしているのが、どうやらザバンドらしいです。

 周りの商人たちも、あからさまにいかがわしい商売をしてそうなツラがまえの奴等ばっかりなので、ククールは安心しました。なにせなで斬りにしても、良心がちいとも痛まなさそうだからです。


 

てか、ハッキリ言って、こんな極悪人顔の人物を登用するゼシカのじいちゃんって、どうよ?


密かに思いましたが、それはそれ、これはこれです。

きっと、元々は善良な人物だったのに、うっかり悪の道にハマりこんで、魂どころか顔まで歪んでしまったのでしょう。

 ククールは、そんな彼らの魂が救われるように、慈愛深くも十字をきってやったら



「…誰だ!?そっから出てきやがれ!!」

バレました。



「何モンだ?」

「通りすがりの白馬の騎士様だよ。」

騎士らしく優雅に一礼してやったのに、


「ええい、誰だろうがこの場を見られたからには生かしちゃおけねえ!!野郎ども、かかれっ!!」

激しくお約束に沿いまくった台詞しか返ってこなかったので、ククールはちょっとガッカリしました。


「ま、いいや。ヘンな手間が省けるしな。」

そしてククールは、腰のはやぶさの剣を抜き放ちました。

2006/7/8






もう、いろいろ考えるのがめんどかったのでもお約束に悪代官と越後屋にしました。お約束って素晴らしいです。

Tales of Hissatsu!! その三

アローザと元法王さま 一覧へ








inserted by FC2 system