十面埋伏 その一

張芸謀(チャンイーモウ)監督の 「LOVERS」 という武侠映画があります。そう、金城武がびゅんびゅん跳ぶあの映画ですが、その原題がこの「十面埋伏」なのです。
個人的には、こっちのタイトルの方が好きです、カッコいいし、三国志だし程cだし。
という訳で、十面埋伏ですよ、マルチェロ?









その 殺気を押し固めた疾風 は、ひどく正確にマルチェロの喉元を狙っていました。




ごうっ!!

風の音と、


だんっ!!

勢い良く跳びのいた音。




マルチェロは、先ほどまでドルマゲスの 姿 があったあたりに立ち、喉元を拭います。


「…当たらなかったのに、な。」

血の色を認めながらも、地獄のサーベルの刃先は「敵」から離しません。




もはや、ドルマゲスの姿はどこにもありません。

そして、リーザス像の前にはただ、 長い杖 だけがぽつねんと転がっています。


かこん

マルチェロはブーツの先でその杖を前に蹴り出しました。

「暗黒神の杖…だな。」


そして、 眼前の敵を一睨み します。




「本当は『神鳥の杖』って言うんですよ。」

「知っている。」

しかしまあなんと無礼な男でしょう。

知っているにもかかわらず、神鳥の杖を足蹴にするなんて。



「なかなかいい一撃だった。」

マルチェロは、自分に向けられた一撃を冷静に論評しはじめます。


「速さも威力も素晴らしかった。 当たっていれば、私の首は一撃で吹き飛んでいた に違いない。」

「なんで気付かれたかなあ…完全にあなたの死角から放った上に、 本気であなたを一撃で殺す気 だったのになあ。」


「殺す」という単語に、マルチェロは薄く笑います。

こうして見ると、 マルチェロの方が悪 に見えてしまいますね、やっぱり。

殺されかけたのはマルチェロなのに、どうしてなのでしょうね?



「では説明しようか。」

「お願いしますね。」

応答は和やかに聞こえますが、両者の間にあるのは、 一触即発の殺気 だけです。



「私は亡霊は信じん!!」

マルチェロは、 いきなりそう一喝しました。



あの、じゃあ僕と彼の会話は彼の中でどう処理されているんでしょうね。

え?

おほほ、まあマルチェロですから仕方ありませんよ。


彼は、「自分の存在しないと信じるものは、故に存在しない」と考えるんですね、やっぱり。

今更ですが、そうなのでしょうね。


はあ…ですがまあ良かった。 アローザとの愛は信じてくれて いて。

ま、まあそうですね、愛を信じる事は良い事です。

閑話休題、会話に戻りましょう。




「故に、ドルマゲスの亡霊の存在など信じるものか。亡霊などは、臆病者の恐怖心が生みだしたものに過ぎん。」

「こんな場面だけど一応ツッコミを。あなたのいたマイエラにある旧修道院では、疫病で病死した元院長こと、 なげきの亡霊 がれっきと存在してたんですけど。」

「私は見た事がない。よって信じん。」

「はあそうですか、まあいいや。」

「よって私は、何者かが意図的に流した噂であろうと考えた。そして、ポルクとマルクが見たドルマゲスらしき姿だが、行動が毎回ワンパターンに過ぎる。よってあれは幻影か何かで、何者かの魔力の元に使役されたものであると想定したのだ。しかも、子どもに危害を加えず、しかもポルクとマルクと面識がある人間、更に『若い男』の声。」

マルチェロは、地獄のサーベルで相手を指示しました。




「君以外思い浮かばんよ、エイタス君。」

指し示されたエイタスは、苦笑いを浮かべました。


「しかし、罠としては拙劣極まるな。トロデーン王太女の婿たる君の権力をもってすれば、もう少しましな計略が立てられたのではないのかね。」

「生憎だけど、独力で事を済ませる必要があったので。」


「暗黒…いや、神鳥の杖に自らの魔力を込めてドルマゲスの幻影を作り出してまで、私をおびき寄せたからには、何か意図があると思ったが…」

マルチェロは、その緑色の瞳で 当のドルマゲスですら震えあがりそうに睨みつけ ます。

「私の首を欲しがる理由は何だ!?」



「確かに、おびき出し方は拙劣だったと思うけど、一撃は無理でも傷くらいは負わせられると思ってたのにな。そしたら、 楽にあなたを仕留められた と思うんですけど。」

竜神王の剣を構え、エイタスは 昏い笑い を浮かべます。


「ま、確かに 私の首を狙っている輩はこの世の下に五万といる がな。君が 独力で 私の首を狩りに来た理由を知りたい。」

「教えたら、おとなしくその首差し出してくれます?」

「私がそんな殊勝な男だと思うかね?」

「全く思いもしません。」

そしてエイタスは再び笑います。


「あなたが誰とも知れぬ輩に殺された、下手人は誰だか分からないというのが理想 なんです。」

「君の理想は尊重して差し上げたいところだがね、 闇討ちで私を殺せるという時点で、犯人候補は片手で数えられるほど絞り込まれる と思うがね。」

「はは、そうですね。僕の仲間たちの中の誰かってことになりそうですもんね。」

エイタスの放つ殺気は収まりません。

それにマルチェロも気づいたようです。


「…先日は君とは 戦った。」

「ああ、 楽しかったですね、あの時 は。」


マルチェロは、地獄のサーベルを握り直します。


「そして今度は君とは、 殺し合う か。楽しいと思うかね?」

「殺し合いは楽しいと思える人ですか?」

マルチェロは、 唇の端を歪め ました。




「殺し合いを楽しいと感じる事が出来る生物を『雄』と分類するのだよ、エイタス君?」






2010/1/11




だからどーしてマルチェロの方が殺る気満々なのかと、問いたい。
力いっぱい、問いたい。
エイタスの攻撃は、雷光一閃尽きをイメージしてますが、コレって槍スキル技だよね?でも、ウチのエイタスって剣使いなんだよね。まあ、槍でも剣でも、使う気になればいろんな技は出来ん事はないという風に考えて下さい。会心の一撃キマったと思ったら避けられた、ちぇっ、みたいな感じです。
ウチのエイタスは基本良い子ですが、ある意味内面にいろんなものを抱えているので、このパーティーの中では一番「残酷なこと“も”出来る」人なんじゃないかなと思ってます。ヤンガスはスキルが人情な時点でダメだし、ゼシカも根はお嬢だし、ククールは口では悪いコト言うけど、そこまで残忍には成りきれないかな、と。「必要である残酷な事」が出来るのはリーダーとして必要なスキルなので、やっぱりマルチェロとエイタスは似た者同士なのかもしれない。
まあ、マルチェロは「そんなに必要じゃなくても残酷」かもしれませんがね。

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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