royal その三

先週1週間はムダに忙しくて、忙しくて。
まあヒマだったら更新するわけでもないんですけどね。

あ、来週も忙しいです。









「本当に、誰もの姿も見えませんこと…」

奥さまは、どこまでも続く深遠なる闇を見下ろして、そして廃墟に目をやり、恐ろしくおなりになられたのか、

「まあ怖いっ!」

と、 その腕にしがみつかれ ました。


「…」

マルチェロは眉間に皺を寄せました(まあ不快であったからなのか、たんに癖であるのかは分かりません)が、


「私がついております、ご心配無く。」

と、 優しくその腕をとり ました。


「マルチェロさま…」

うっとりと濡れた瞳 でマルチェロを見上げる奥さまです。




しかしこの人たち、この場所がどこか本当に理解しているんでしょうかね?




聖地ゴルドの廃墟なのですけれどね!?




「マダム…」

ですが、 スーパーな熱視線で見つめ合う二人 にヤボなツッコミはやめておきましょう。

恋人たちは、煉獄の果てとて自分たちの天国にしてしまうもの なのですから。







「…」

ですが、さすがに場所が場所です。

先に正気に返ったのはマルチェロでした。




「…我が罪の場で、貴女と二人とは…」

そして失礼にならないようにマダムの手を離します。


「マルチェロさま?」

せっかくのうっとりシチュ を拒まれて、ちょっとおかんむりの奥さまですが、さすがに聡明な方らしく、すぐに状況を悟りました。




「御覧有れ、マダム。この廃墟を、 深遠なる闇の世界まで続くこの大穴を。」


マルチェロは自嘲します。

「この地が、我が罪の証そのものです。」

何とも言葉をお返しになれない奥さまに、マルチェロは続けます。


「あの時、私は絶頂に有りました。人の子として望むべき最大の力を得、人の子として最高の地位に登り得た、と。」

「…」


マルチェロは、


すう

と大きく息を吸うと、



「王とは何だ!?」

と叫びました。





ビリビリビリ

空気が、その裂帛の気合いに震えます。


奥さまも、突然のこととて大変お驚きなさいます。




「…」

マルチェロが黙って、自らの声が消え去り、ただ廃墟の不気味な静寂が戻るのを待ちました。




「…我が演説は、」

マルチェロは冷笑します。


「世界の全てを変革しうると信じていた…愚かにも。」


「マルチェロさま、あの…」

「この深遠なる穴は、我が愚挙が開けたもの。麗しの女神像に、私は新世界ではなく、 暗黒神を産ませた のだ。そして、我が新世界を信じた部下たちは、この穴の奥底、生きながら地の底に葬られたというのに、私は今こうして、まだこの世に居る。」

マルチェロは、穴の奥底を


じいっ

と覗き込みます。


奥さまはそれを見ながら、マルチェロが今にもこの奥に飛び込むのではないかと危惧なさいます。




「私は惨めに生き延びてしまったのだ。あの愚弟の言葉通りに。」






2010/2/7




というわけで、ゴルドに二人デート編でした。

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




満を持して その一へ


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