法王と王と背教者(元法王) その一

このシリーズが思うように進まないのは、たくさんの伏線を 美しく処理 しようとしているからだと気付いたので、ここは発想転換して とりあえず、ストーリーが出来てるトコまで進めて、伏線うんぬんは後で考える ことにしました。まあ整合が有るも無いも、完結してこその苦情だよねーというワケで。

ってワケで、上記のツッコミは以降、一切受け付けません。









ゴルドに辿りついたエイタスとククールは、見慣れた聖堂騎士の制服を着た一団に加えて、サザンビーク兵らしき一団までいるのを見ました。


「…明らかに、 超サイアクな事態 ってヤツだな。」

ククールはうすら笑って、やれやれと言いながら大げさに手を上げて見せますが、当然のように目はまったく笑っていません。



「…最悪って言うにはまだまだ早いよ。」

エイタスは言って、小山のような聖堂騎士の中央部を指さします。



「…?」

ククールはしばらく目を凝らし、



「ニ…っ!!!?」

と叫びかけた所で、なんとか自ら思いとどまりました。


「お…おいおい、なんで法王聖下おん自らこんなゴルドの廃墟とかな居ちゃうんだよ?もう女神像ねーじゃん!?どんだけヒマなんだ?法王っ!?」

ククールは小声で文句を言いましたが、その後で目を瞬かせました。


「…ニノのオッサンの持ってるの… 神鳥の杖 じゃねー?」

エイタスはククールの指さす方を見つめます。


「…ニセモノだよ。」

そして、あっさりと断定します。


「いやだって、あの形、それ以外考えられねえーっつーか…」

「…あの一連の事件が解決したあと、法王庁から神鳥の杖を献上するように言われたんだ。」

「じゃ、モノホンじゃねーか。」

「けど、いくら暗黒神が封印されていたとはいえ、元はトロデーンの国宝でしょ?トロデ王がご先祖さまに申し訳が立たんとか嫌がってさ…」

「まさか?」

「そう、 ニセモノを献上した んだ。」

「天下の女神の代理人を騙くらかそうたあ、さすが『勇者』だな。」

エイタスは軽く笑います。


「まあ法王庁の言い方も、 あの事件を忘れないために くらいの軽い言い方だったしさ。そもそもトロデーンはマジックアイテム制作技術が高い国だしね。それっぽい魔力とか込めたのを作って、魔力が足りない分は

『神鳥の杖はもう魔力を使い果たしたので』

って言ったら平気かなーって思ったの。」

「ま確かに、どうせレティスはもういないし、実用的価値は皆無だからバレる心配は少ないけどよ…なんつーか、トロデ王、 国を復興させるためにアブねー橋渡ってるわりに、ヘンなトコワガママだよな。」


あはは

軽く笑って、


「笑ってるバアイじゃねーだろっ!!!?」

ククールは 自分ツッコミ をしました。



「…うん。」

エイタスは冷静に頷きます。



「お兄さんの命の瀬戸際だってのに神鳥の杖の心配なんかしてるなんて、君も物事を客観視出来るようになったなーって、ちょっと思ってた。」

「杖なんてどーでもいいってのっ!!兄貴っ!! オレの最愛のマルチェロ兄貴はどこだっ!?」


「しっ!!」

エイタスはククールを掴みます。


「大騒ぎしなくても、すぐそこにいるよ。」

「ハッ!!オレの最愛の兄貴発見っ!!」

「発見しなくてもさっきから…てか君、本当に ブラコンがぜんっぜん治らないっていうか…」

「オレの大好きな兄貴がデコ押さえて苦しそうだっ!!」

「…君がいつまでも変わらない君でいてくれて、少し嬉しいよ… 大部分は迷惑だけど。」


「エイタス…髪の毛という防寒の働きをする体毛がなくて、デコだけ風邪ひくとかあるのかっ!?」

「…」

エイタスは、 超大真面目な顔 のククールに、自分こそ頭痛がして来そうでした。




二種類の理由で、エイタスとククールが沈黙する中、不敵に微笑みながらも苦痛の色を隠せないマルチェロが口を開きます。


「…忘れられるならと、幾度も思った。」

そして、ニノ法王を見据えて、続けます。



「だが、忘れられる筈もないと思い知りましたよ、聖下。貴方が その暗黒神の杖で思い出させて下さったおかげで な。」


その言葉に、エイタスとククールは顔を見合せます。



「はは、女神の御心とは、慈愛深いと同時に、 情け容赦など微塵も無い な。 全てを見てきたその杖から発する邪気が、私の脳髄を蝕む。」




ククールはエイタスを睨みます。


「おい、兄貴の台詞からすっと、あの杖、間違いなくモノホンじゃねーか!?」

「そ、そんなハズないよ。」

「渡す時に間違えたとか、基本のオチ付かねーだろーな!?」

「しないよ、こんなコト。」

「じゃなんで兄貴があんなにあの杖に苦しめられてんだよ。気のせいとか思いこみとかそーゆー甘いコトはな、 兄貴相手にゃぜってえ起きねーってのっ!!」

「間違えてないと思うけどなあ…多分。」

少しずつ弱気になるエイタスの耳に、新たな足音が聞こえました。

聖堂騎士たちが一斉に、威儀を正します。




「…さっすが聖地、 法王と王と元法王って、エラいお方にゃ不自由しねーなっ!!」

ククールが吐き捨てる語尾と重なるように、




「コンニチハ、ボク ハ ゲンキ ダヨ。キョウ ハ イイテンキ ダネ。 ボク ハ ブタ デス」

という、妙にカラッと乾いた声がしました。





2010/3/18




マルチェロとククールの掛け合いも好きですが、エイタスとククールの掛け合いも好きです。
でも、ククールの方が3つくらい年上設定なんですが…でもまあ、大人げない年上と出来すぎた年下って組み合わせは好きなんで。

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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