法王と王と背教者(元法王) その三

最近、体力がめっきり衰えてきたようで、なんかものっすごく疲労しやすいです。
老化か?
老化現象なのかっ?
まあ、縄文時代くらいなら平均的にそろそろ死ぬ年ではありましょうが。

しかし縄文時代って、40で老衰死出来るとんでもない過酷な時代だからな。









誘拐?

マルチェロの発言に、みんながざわざわします。

でも、一番驚いたのは 誘拐されたご当人 でしょう。


「ま、マルチェロさま?一体…」

おろおろしながら問い返そうとなさる奥さま声をかき消すような大声で、マルチェロは叫びます。



「先の法王殺しの大罪人であるこの私が、単独で逃亡するなどという愚にもつかぬ策をとるものか。このように…」

と、アローザ奥さまを 人質であるかのようにはがいじめにし て、



「我が身を守る楯くらい持ち合わせているわっ!!フハハハハハハハハっ!!」




「…」

「…」

物陰から見ていたエイタスは 居たたまれなさ から、そしてククールは 兄の心中如何ばかりかとの推し量り過ぎ から、それぞれ言葉を失いました。


ええ、 なんて子供じみた芝居 でしょう。

休日の朝の特撮並み の(特撮とは何かって?さあ、我も詳しくは知りませんが、ある異世界の用語のようですよ)悪役レベルです。




「何っ?良家の、しかもご婦人を人質にするとはっ?」

「貴様っ!!それでも元は栄えある聖堂騎士かっ?」


人を疑う事を知らない聖堂騎士たち が、怒りの咆哮を上げるのを、ニノ法王とクラビウス王は 生温かい目 で見つめていました。




「フンっ!!貴様らの甘っちょろい戯言など聞き飽きたわっ!!」

それでも、一番滑稽になり得る筈のマルチェロが 意外とキマっている のはきっと、 彼の悪役としてのオーラが強すぎるから なのでしょう。


ですが、そんなこともひっくるめて 兄バカの愚弟 は見かねたようです。




「いい加減にしやがれっ!!」

「あっ…」

エイタスの一瞬の隙を突いて、とうとう一団の中に飛びだしてしまいました。



三者三様の冷たい視線 がククールに向かいます。




その中で、一番最初に視線を逸らしたのが、ご想像の通りマルチェロ。

そして、一番最初にその冷たい視線を消したのが、クラビウス王でした。



「これはこれは、ククール君であったな。こんな所で会うとは奇遇だ。」

「まったくですね、サザンビーク王家とは ご縁がある ようですよ。特に、 そちらの王太子殿下とは、特に!」

そしてククールは、背後のサザンビークの護衛隊を見つめました。


もうこんな状況になっては、 今更 という気もしますが、チャゴスと一緒にアルゴリザードを倒しに行ったのは、まだまだ国民には秘密の筈です。

最悪、兄の命と引き換えになる情報に… なったらいいなあ と、ククールは 甘ーい期待 を抱きます。

まあ無理でしょうけど。



クラビウス王は表情も動かしません。

さすが、王さま一筋で食って来た男の面の皮は違います。


「ハイ ゴエンガアリ マス。 ボク ハ ブタ デス」

明るくも乾きすぎた無機質な声が、場違いな程大きく響きます。


「…君も現住している、リーザス村から戻って来て、ずっとこうなのだよ。」

クラビウス王の言葉に、


「やや、なんと恐ろしい。」

「さては、風土病ではあるまいか。」

などと人の発言以上の事をまったく読みとらない純朴な聖堂騎士たち がざわつきます。


「ふふふ…腐っても王太子なのでな、我がサザンビークでも最高の医者に見せ、学者にも考えさせた。結論はこうじゃ。 常人の許容量を遥かに超える苦痛を与えられた とな。」


クラビウス王は、口元だけは微笑みながら、 もしかしたらコレは兄貴をも凌ぐんじゃねーの? と、一瞬はククールにも思わせた冷たい瞳で、



「そんな真似が出来る人間を、寡聞ながら儂は君の兄以外知らぬのじゃがな。どう思うかね?」

と言いました。




「…」

ククールは、とりあえず会話を引き延ばすために、チャゴスに話をふります。

「ってお父上はおっしゃってますがね、どうですか?チャゴス王子?」

「マッタク ワカリマセン。 ボク ハ ブタ デス」

「……」

ククールの秀麗な額から、汗が流れ落ちました。

精神を破壊しておきながら、 自らの痕跡だけは一切残さない こんな器用な真似が出来る人物は、 三千世界の中でも我が兄、マルチェロしかいない と、骨身に染みたからです。




沈黙が、ククールの体に重く圧し掛かります。

ククールの脳内をいろんな思考が目まぐるしく駆け巡ります。

そして、沈黙に耐えきれなくなったクラビウス王が口を開こうとしたその半瞬前に、ククールは口を開きました。




「誰がやったかなんてオレは知らないね。 女神さまに誓って、オレは見てねえしよ。」

それは真実の誓いです。

ククールは見てはいません。



「でもさ、誰がやったとしてもだな… ぶっちゃけ、そのブ…チャゴス王子の悪業に対する、天罰だと思うケド?」

ククールは、 逆ギレ戦法 を使うことに決めたようでした。





2010/3/28




未だに、ククールは賢いのかアホなのかよく分かりません。

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




親ゴコロ その一へ


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