親ゴコロ その三
しかし、多忙な一週間であった。
ゴルドに轟いた余りの絶叫に、聖堂騎士ずやサザンビークの兵たちが一斉に腰を抜かします。
ククールだって、思わず腰を抜かしそうになりましたが、
暗黒神スレイヤーの意地
でもって何とか耐えます。
マルチェロに効くわきゃありません
が、奥さまにはバッチリ効いて腰を抜かしてへたり込みかけたのを、マルチェロが
抱きとめ
ます。
「まあっ、マルチェロさま…(ポッ)」
赤面なさる奥さまですが、
こんな非常事態に呑気なものです
ね。
そして、
「ボク ハ ブタ デス」
と、チャゴスも眉ひとつ動かしません。
当り前と言えば当り前ですね、精神破壊されている人がびっくりして腰を抜かすはずはないのです。
しかしこう考えてみると、チャゴス王子は今の状態の方がはるかに強化されていていいのかもしれませんね。
そして、やはり泰然とするニノ法王です。
さすが「聖下」と尊称される身だけあって、小揺るぎもしません。
ただ、その目を絶叫した当人に向けただけです。
「『愛の為に犯した罪なら、許されるようなモンじゃねーのっ!?』
じゃと?
親の子への愛をナメるんじゃないわぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあっ!!!!」
更なる絶叫に、聖堂騎士ずとサザンビークの兵たちが、更に深く腰を抜かします。
というか、守護兵の腰を抜かせてしまっては、一身の安全が守れないんじゃないかと老婆心ながら危惧しますが…
いえいえ、決して我が「老婆」という意味ではありませんからね?
まあそりゃ、確かに相当長生きはしていますけれども、
我は人の美的レベルを遥に超越した…
…コホン、そんなことはどうでもいいのです。
ともかく、
怒髪天を衝い
たクラビウス王は、お行儀悪くもククールに人差し指を突きつけ(マナーに反する行為です、良い子は真似をしてはいけませんよ)て、叫びます。
「ええかっ!?確かにウチの息子はバカじゃ、
親の欲目フィルターをかけてすら猶、異論反論を持たない大バカ
じゃわいっ!!」
「さすが陛下、
親バカながら
も冷静な客観視はお出来になりますのね。」
一般人なのに一人腰を抜かしていないレベッカが、
とても冷静にツッコミを入れ
ます。
「バカだって分かってんなら、何とかしろよ、バカ親キング。」
「何とかできるくらいなら、とうになんとかしとるわっ!!」
「陛下、ソレって逆ギレですよ。」
「そんなの言い訳にならねーだろがっ!!
子どもがバカなのはまずいの一番に親の責任
だろっ!?そこのブタが余所で迷惑かけたんならよ、
『ウチのバカ息子が大変迷惑を…』
って、
菓子折り持って謝罪に来やがれってんだっ!!」
「だからと言って、息子が精神破壊されて、大人しく反省などしてられるかっ!!」
ニノ法王は黙って二人の罵り合いを聞いていましたが、さすがにショック状態から回復した聖堂騎士ずとサザンビークの兵たちが、
フクザツそーな顔
で見ているので、二人の目を見て、穏やかに口を開きました。
「深呼吸して、少し落ち着いて喋るが良い。
救国の勇者
と
一国の国王
が衆目の集まる場所で交わす会話じゃと言うのに、
品性と冷静さに欠けるに余りある。」
叱咤したわけではありませんが、さすが法王です。
とりあえずクラビウス王は、面を改め、天を衝いた怒髪はレベッカがセットし直しました。
「…
どうっしようもないバカ息子
じゃが…」
「ハイ ボク ハ バカ デス。
ボク ハ ブタ デス」
元気よく言うチャゴスを、クラビウス王は
愛おしそうに抱きしめ
て、
「この子は儂の命なのじゃ。」
と
スリスリと頬ずり
しました。
サザンビークの兵たちは、
わざとらしそーに視線を外し
ますが、聖堂騎士ずは、
「おお、なんと麗しい親子愛よ」と感動する者と、「そりゃちょっと…」という顔をするものとに分かれました。
まあ、前者と後者のどちらが多数派であったかは、あえて明言いたしませんが。
ちなみにククールは
ものっすごいイヤそうな顔
で、
「いくら息子とはいえ、そんなクリーチャー可愛いなんて、
アタマおかしいんじゃねーの?」
と公然と言い放ちます。
それに真っ先に反論したのは、
「それはあんまりな物言いですっ!!」
なぜか、
アローザ奥さま
でした。
2010/4/11
今、この場にいる人間再確認。
マルチェロ、奥さま、ククール、クラビウス王、チャゴス王子(精神破壊され中)、サザンビークの兵たち、ニノたま、聖堂騎士ず、物陰にエイタス。
テキストだと、台詞喋んないと誰がいるか分からなくなりますね。
そして
結末予測アンケート
まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。
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