奥さまの主張 その一

とても気が張った状態で十日くらい過ごしています。
おかげさまで朝は目ざましが鳴る前に目が覚めるし、昼も睡魔に襲われません。

けど、夜も寝てるのに、なんか疲労が取れないんだよな…









なんで?

という顔をみんながしました。


「みんな」とは誰かって?

そりゃ、ククールとかニノ法王とか、サザンビーク近衛兵たちとか聖堂騎士ずとか、 マルチェロ とか クラビウス王 とかですよ。




そんな 全ゴルドが驚愕 させた一喝を発した当の奥さまは、 軽やかな御足取り でククールの前に進み出ると(奥さまは、マルチェロに 誘拐され遊ばしていたハズ ですが)



「それは、親というものを余りに知らない物言いですっ!!」

気品と厳めしさを芸術的なまでに融合おさせになった麗しい表情 で、


ぴしり

と叱り飛ばしなさいました。



もちろんククールは、


なんでオレ、叱られてるんスか?しかもアローザ奥さまに

って顔のまま ポカン としています。

ですが奥さまは、そんなかなりのマヌケ面をした (もっとも、地顔が良いので そんな表情もまた見られる のですけど)ククールに、 厳めしくも穏やかに言い諭す口調 でお続けになりました。




「よろしいですか、ククールさん。あなたは我が娘ゼシカと結婚し、そしていずれ親におなりになるのですから、よく覚えておくのですよ。」

ニノ法王はその言葉を聞き咎めます。

「…あの赤毛の娘とこのククールが結婚… よくもそんな事を許したもの じゃな。儂は女神の僕故、子は勿論、婚姻の秘蹟にも縁の無い身じゃが、 儂に娘が有ったとしたら、こんな娘婿を取るくらいなら娘を尼僧院に入れるがのう。」

「重ね重ね不肖の愚弟で申し訳ない限りです。」

マルチェロは思わず 間髪入れずに謝罪 してしまいました。

まったく、他でもないマルチェロに謝罪させてしまうなんて、 どこまで救い難い愚弟なのでしょう ね。

しかも、 謝るべき人間は間違いなくニノではないのですけれど。




コホン、まあともかく。




「親というものは、我が子がどんな姿であれ、どうしようもなく愛しいものなのですっ!よぉく覚えておおきなさいっ!」

奥さまが優美な指先でククールをお示しになる(でも、奥さまにしてはちょっとはしたないなさりようですね)と、ククールは思わず 反省のポーズ を取ってしまいました。


が、半瞬後に、


「なんでオレ、ハンセーしてんだよっ!?おかしいだろっ!?」

セルフツッコミ をカマして、反論します。




「お言葉ですがね、アローザ奥さま…じゃなくて、未来のおかーさま。そりゃ、 マイハニーゼシカ みたいな、 赤毛のセクシー巨乳ガール が子どもなら、そりゃ家訓に背いたってカワイイのは分かりますよ?けどね、 今回話題になってるクリーチャー他でもねー、あのチャゴス …王子ですよ?」

ククールは びしり とチャゴスを指さします。

そして指を差されたチャゴスは、



「ハイ ボク ガ アノ ホカ デモ ナイ チャゴス デス。 ボク ハ ブタ デス」

元気よく 肯定しました。



「もしアレが自分の子だと想像してみて下さいよ。いってー、あのクリーチャーのどこがカワイイ…」

「ずぅええええんぶじゃわぁああああああああいっ!!!!!!」

ゴルドを揺るがさんばかりの、雷鳴のような叫びがククールの言葉をかき消しました。

再び、先の絶叫で腰を抜かした者たちのほとんどは腰を抜かしました。




が。




なんと奥さまは今回は、気丈にもご自分のおみ足のみで、お一人でお立ち遊ばしていました。

奥さまの瞳は慧々 となさり、 お口は凛々 と引き締まりなさっています。




そして、 ゴルドを再び破壊するに足るあの絶叫の余韻すら消え去った不気味なまでの静寂を破っ て、奥さまは 毅然 と言い放ちました。




「ええ、その存在全てが可愛いと思いますわ。」

そして、更に力強くお続けになりました。




「それが人の親というものですっ!!」



その断言はその場にいる殆どの人間感激の渦に陥れました。






ただ











「…それはあんまりではありませんか?マダム?」

という小さい呟きは、確かに存在したようですが。





2010/4/15




珍しくマルチェロが可哀想になりました。

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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