判決を下す その二

うつ病じゃないかと思うくらい、何にもする気になれません。
仕方がないので、1日中転がって新聞を読んでました。
ううむ…マルチェロに一喝されそう な休日の過ごし方です。









「兄貴っ!?」

ククールがアローザ奥さまを抱きとめながら、マルチェロに向かって絶叫しました。


「どういうことだよ、兄貴っ!?」

間髪いれずに再び叫ぶククールに、マルチェロは皮肉な笑みを向けます。


「『どういう事だ』

だと?愚弟に相応しい愚問だな。 そういう事だ。」




そうククールに返して、そしてククールから目を背けるマルチェロに、状況を半ば悟った奥さまが、


「分かりませんわっ!!説明して下さいっ!!」

と、 奥さまに相応しくない悲痛な叫び を上げられました。




「…」

マルチェロはしばし沈黙しました。

彼の唇は閉じられ、でも、何か酷く考え込んでいるようです。




「…マダムの仰せとあらば、仕方ありませんな。」

マルチェロはそう言いましたが、でもその目はアローザ奥さまには向けず、ニノ法王たちの方へと向けたままです。




「私は、これでも女神に全てを捧げた身、聖堂騎士であったのです。」

「とうに、そうであった事すら記録から抹消されたがの。」

ニノ法王は、厳粛な面持ちでマルチェロをねめつけます。

ですがマルチェロは、その言葉には反応しません。


「そして、其処に居ます御方は、女神の地上に於ける代理人。如何な理由であれ其の御方が私の死を望まれる以上、従わない訳には参りますまい。」

なんとも驚くべき事に、 マルチェロのくせに 往生際の良い台詞です。

ええ、本当に驚くべきことですよ、 マルチェロのくせに こんなことを言うなんて。




「兄貴のくせにそんな弱気なこと言うなよっ!!」

ほうら、ククールも同じことを思ったようですよ。


「オレの兄貴はなっ!! オレらに完膚なきまでにボコ×2にされ でも、 聖地を完全に崩壊させ でも、 まだ減らず口叩く男 なんだよ。さては…さてはお前、 兄貴に化けたマネマネだろっ!?」


おやおや、フォローしてるんだか、 罵倒してるんだか、 微妙な発言ですこと。


まあ、今のこの状態ではマルチェロも いちいちメラゾーマしている心の余裕は無い でしょうから、代わってツッコミを入れておきますね。




今回はマネマネは登場しませんよ?




「服従と従順さは、女神の下僕の美徳である。」

ニノ法王は、神鳥の杖を幾度も振りあげます。

ククールはそれを見詰めて、エイタスに言います。




「おいエイタス、やっぱりあの神鳥の杖は本物だろ?だって、あの杖をニノが持ってるから兄貴がなんかおかしいんだぜ?」

「うーん…アレはでも、ニセモノのはずなんだけど…なあ…」

珍しく弱気なエイタスです。


「でも、手違いとか、ものの弾みとか、取り違えちまう原因はいろいろあるだろ?」

「うーん…」

そうですね、ニセモノのはずの神鳥の杖が、いつのまにやら本物とすり替わってしまう原因はいろいろありますね。

手違いとか、ものの弾みとか、 女神の御心 とか。




アローザ奥さまは、蒼白なお顔でマルチェロの後ろ姿を見つめます。

マルチェロは、その視線を感じているでしょうに、決して、奥さまの方を見ようとはしません。




「つまりは死ぬ気なのですかっ!?殺される気なのですか、マルチェロさまっ!?」

マルチェロは奥さまの問いには答えません。

ただ、ニノ法王を見詰めるばかりです。




「サザンビークのクラビウス王もいらっしゃる事だ。」

マルチェロは、薄く笑います。


「いと慈愛深き法王聖下 は、 法王弑逆者 だの 背教者 だのといった、 天地開闢以来在り得可からざる罪人 でなければ、御赦し下さるな?」


ニノ法王は、一瞬だけ瞳をククールたちの方へと向けましたが、


「赦す。」

短く、反論を口に出しかけたクラビウス王に言葉を許さない強さで、断言しました。




「そうか…」

マルチェロは口元に微笑を湛え、ようやく奥さまを振り向きました。




「私は死にます。」

マルチェロは静かに言いました。




そして、




どうして




の形に開かれたまま、言葉を発することが出来ない奥さまに、また、静かに続けました。




「それが女神の御心ならば。」





2010/6/20




あれあれ?マルチェロってば 何か悪いものでも食べたのかな?

はたまたククールの言うように、 DQ8世界には存在しないはずのマネマネの化けたニセモノなのかな?

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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