Can You Keep a Secret ? その二




「近づきたいよ、君の理想に…」
というこの歌の歌詞ですが、兄って激しく理想高そうですね。近づくのすら不可能そうです。
ただ、思い込みの激しい人なので、一旦、惚れさせたら死ぬまで愛してくれそうです…ただ、途中で幻滅されたが最後、エラい事になりそうですが。












アローザ奥さまは、表情も変えずにマルチェロに言います。

「あなたにお聞きしたいのですが。」


「なんでしょう、マダム。浅学非才な私にお答えできる事ならよろしいのですがな。」


「この指名手配書で指名手配されているのは、本当にあなたなのですか?」



奥さまはそう言って、マルチェロの額をじっと見上げました。


「左様です、マダム。」

マルチェロは、躊躇無く答えます。



とても口ではいえないような忌まわしい罪 に手を染めたというのも?」

「左様です、マダム。」


「だとするとマルチェロさま、あなたは… 女神に逆らう極悪人 ということになりますわね。」

「左様です、マダム。法王庁からすれば、私は 女神に反逆した極悪人 でしょう。」




ククールはゼシカは顔を見合わせて、 愛し合う二人だからできる以心伝心会話 を交わします。




(これって、フォローかけるべきだよな。)

(でも困ったわ。 あんまりに事実過ぎて 、あたしフォロー出来ない。)

(ひでーよゼシカ。兄貴にだってすげートコはたくさんあるさ。)

(…たとえば?)

(勤勉な守銭奴なトコとか、目的のためなら手段を選ばず、努力を惜しまないトコとか、拷問とイヤミが世界一巧いトコとか…)

(それってスゴいはスゴいけど、 常人から見たら、欠点というべきコトじゃないの!?)

(…)




ククールはたまらず叫びました。

「なあ、アローザ奥さま!! 兄貴は確かに悪人 だけどさ、でも法王庁のヤツらだってじゅうっぶんに悪人なんだぜ!?」


「そうよお母さん、 確かにそのデコ団長はどうしようもない極悪人 だけど、法王庁の人たちだって、割と悪人なのよ?」

ゼシカは、これでもフォローしたつもりのようでした。




「…」

奥さまは、沈痛そうな顔でため息をつきます。



こりゃやっぱ、 兄貴をバシルーラするのがイチバン かな

ククールが兄を吹き飛ばす為に、こないだ頑張って覚えてみたバシルーラを唱える準備をしかけた時でした。




アローザ奥様は、なぜかとても優しい笑みを浮かべて言いました。

「マルチェロさま… あなたは本当は、とても善良な方でいらっしゃるのね。」










はっ!?

















ククールとゼシカは思わずそう絶叫してしまいました。


一体、今の会話のどこをどうつついたら、そんな結論が出てくるのでしょう?


ククールはアローザ奥様が、もう 老人性難聴 にでもかかっているのではないかと、本気で心配になりました。



ですが、アローザ奥さまは優しい笑みを浮かべたまま、マルチェロに言います。


「だって、本当の悪人は、自ら悪人などと言いませんわ。」


「お母さん!!自分で悪人と名乗ろうが、善人と名乗ろうが、極悪人は極悪人よっ!?」

ゼシカが力いっぱい反論しますが、奥さまは気にしません。




「それに…ウチの娘は、確かにワガママで頑固で言い出したら聞かない娘ですが、 悪人に誑かされたりするような娘ではありません。 そんな娘があなたを庇おうとしている のです。それがあなたが悪人でないという証拠と考えるのは…あまりに親の欲目でしょうか?」


「アローザ奥さま!?ゼシカは実はぜんぜん、兄貴を庇ってないよっ!?」

ククールも力いっぱいツッコミを入れてみます。





マルチェロは、冷静な口調で言いました。


「マダム…まあ、あなたの瞳が正しいか正しくないかという話はとりあえずさておくとしても、だ。私に対して法王庁から指名手配書が来ているというのは事実なのだが。」


最強のボケの兄がマトモなコトを言って います。
ククールはちょっと感激しましたが、ちょっと不安になりました。




ここで兄貴が法王庁に突き出されたりしたら、 ゴルドで、腕の筋肉がしばらくツリそうになってまで頑張った、自分のあの努力は一体なんだったんだろう?

てか、兄貴はなんでこんなに自分の罪を認めるんだろう。いくらでも言い逃れの出来る人なのに。




アローザ奥さまは答えます。

「存じております。マルチェロさま、ではあなたを法王庁に引き渡したとしたら、あなたの御身はどうなるのですか?」

「まあ、 良くて一生幽閉 。最も可能性が高いのは、 火刑台に上らされる事でしょうな。」

マルチェロは他人事のようにさらりと答えます。





「そうですか、ならば他言は無用ですね。邸の者たちにも、村民にも、実名は明かされないことですわ、マルチェロさま。ご安心を。リーザス村はそれほど旅人が立ち寄る場所ではありません。この村にいらっしゃる限り、そうそう存在が知れ渡ることはありません。」

アローザ奥さまも、さらりと答えました。




「お母さん…」

こんな電波な極悪人、かくまっていいの!?

と心配そうなゼシカの瞳が向けられます。




「アローザ奥さま…」

半分は血の繋がった兄ではあるけど、 こんなヤバい人かくまうと、かなりアブない橋渡ることにならない?

と、激しく危惧するククールの瞳も向けられます。




そして、マルチェロの不審そうな翡翠色の瞳も向けられましたが、奥さまは三人三色の瞳のどれにも動じること無く、堂々といい放ちました。


「わがアルバート家は、恩人を売るような真似は決していたしません!!」




                       続く


2006/8/5






…ギャグ不調。
疲れてるとダメだな。

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