我、汝の手を取る事叶… その二

前回から2週間ぶりの更新。









「わ、わたくし…を?」

奥さまが呟かれると、マルチェロは頷きます。


「そうです、 貴女を です、マダム。」


「あ、あなたが、 マルチェロさまあなたが望め ば、わたくしをこのまま… 生きたこの身のままっ!! 女神のみもとへ…?」


「マダム、貴女は聡明な方だ。そう幾度も繰り返されずとも宜しかろう…」

「で、ですが…」

マダムはマルチェロの顔を見詰めたまま、言葉を止めてしまわれました。




ですが、マルチェロの発言は無茶というものですね。

そりゃ普通、恋仲の男からこんな発言されたら、質問の意図が激しく明確でも そりゃ何度だって確認してしまうもの でしょう。




というわけで奥さまも、しばし沈黙された後、誰もが予想した言葉を仰いました。

「マルチェロさま、 あなたはそうなさるおつもりですか?」










ククールが開きかけた口を、エイタスが慌てて閉じました。

「何を喋るつもりか分からないけど、 とりあえず、喋るな。」


そうして、モゴモゴするククールを見ながらエイタスは考えます。

同じ瞳と髪の色を持つ ミーティア姫が自分にそう言ったら、自分は何と答えるだろうかと。




「でも、彼女ならきっと 僕に選択権なんか与えないで、強制的に引きずって行くんだろうな。」


そして、 一応予告しているマルチェロは、なんて紳士なんだろう と、思うのでした。








そしてこちらはサザンビーク一行。


国王付き秘書官、レベッカが問います。

「時に陛下、陛下がマルチェロの立場でしたら、愛する人を連れて行きます?」

「絶対行かん。」

レベッカは、 ちょっとドキドキ しながら、重ねて問います。


「まあ、なぜですか?」

「儂の愛と、愛する相手の寿命に関係などあるものか。儂は国王で、生殺与奪の権は握っておるがな、 それを個人の嗜好でどうこうして良いと考えるほど、愚かではない。第一…」

「第一?」

「儂の可愛い可愛いチャゴスは、儂が死んだら国王としてこのサザンビークを治めねばならぬ身だからなっ!!」

「……」

レベッカは、 殺気のこもりまくった目 で、チャゴスを睨みますが、クラビウス王は気付かないようです。

でも、 非常に聡明になったチャゴス は、もちろんその目の意味する所に気付きます。


「愛とは、素晴らしいものでありながら、同時にかくも厄介なものだな。」

父に聞こえないように小さく呟いてから、、深い深い溜息を洩らすのでした。






「ぷはあっ!!」

エイタスの必死の制止も虚しく、 赤銀の生物 の口が自由になってしまいました。


「あのさ、エイタス、オレ思うんだけど…」

「先に言っとくけど、僕が予想したような続きを言葉にしたら、 マジ殺す よ。」

エイタスの目は、 今ならマルチェロだって一目置きそうなほど でしたが、ククールには通じた気配もありません。


「おいおいエイタス、殺す殺すって、ガキの恫喝じゃねーんだから。若いなあ、お前。」

「で、君の最期の言葉は何かな?」

エイタスは腰の竜神の剣に手をやりながら、かなりドスの効いた声で言いました。




「いや、ゼ…」

「え?『ゼ』?」

エイタスは、相当驚きました。

絶対に 「マ」「あ」 が来ると予想していたからです。


「どうして『ゼ』?」

あまりにエイタスが驚いていたので、ククールの方も驚きました。


「は?どうしても何も、 ゼシカ の頭文字だから『ゼ』なんだが…」

「見なおしたよククール!!君は本当はゼシカを愛してたんだね!?」

「えっ…ええっ?」

素晴らしく超本気で感激 するエイタスと、 恐ろしく超本気で途惑う ククールでした。










2010/11/21




ククールは別にゼシカのことを愛してない訳ではありません。ただ、 マルチェロへの愛が常軌を逸しているだけ です。




我、汝の手を取る事叶… その三へ


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