我、汝の手を取る事叶… その三

前回から2日ぶりの更新。
それって「ぶり」って言わないよな。









エイタスはククールの手を握り、


「分かってたよククール!!アホの子だけど、君は本当は出来る子だってっ!!」

と叫びます。


「え?ええ…つかエイタス? アホの子 って、 まさかオレのこととか言わねえ…」

「さっ、言ってごらんっ!!君の口から出る『マ』や『あ』でない話を聞けるのが嬉しいよ♪」


エイタスがあまりに大感激しているので、さしものアホの子ククールもボケもツッコミもしかねたようでした。




「あ、『マ』とか『あ』とかって…いや、つか何の話だっけ?」

「ゼシカの話だろっ!?」


「あ、ああそうだった…いやさ、つか…その…あの選択がオレとゼシカの間に有ったとしたらさ…」

「ホントどうしたんだよ、ごくフツーの人間みたいな発言してさっ!!」

「なあエイタス、さっきからオレ、 ものっすごいバカにされてる気がす…」

「心から気のせいだよっ♪」

エイタスは、 明らかに自分のキャラが変質するほど明るく言う と、ククールに続きを促しました。




「なんつかさ…オレ、 ゼシカがオレを連れてこうとすんならさ、行く ぜ。 やっぱさ、愛する女に命くれー捧げてやんのも、色男のツトメ っつーか…お前だって、馬姫さんに連れてかれんならついてくだろ、エイタス?」

「まあね。」

たとえ断ったとしても、 どうせ強制連行だし とまではエイタスは言いませんでした。


「…でもよ、じゃ 、オレが連れてける立場 だったとしたら、ゼシカ連れてくかってったら…そりゃ、 絶対、連れて行かねーよ。」


「どうしよう、僕、 ニセモノの君と喋っている気がしてならない よ…でも、ここでうっかりヘンなツッコミするのも悪いから、フツーに応答するね。で、その理由は?」

「たとえゼシカが絶対行くっつったって行かねーよ。たりめーじゃん。てかエイタス、お前、馬姫さまだったら連れてくのか?」

「彼女なら、僕の判断なんて完全ムシして、行く気なら無理やり僕の手を掴むだろうし、そうでなかったら掴んだ手だって笑顔で切り落とす気がするよ。」

答えながら、 ならなんで僕はそんな女性と、一国を敵に回してまで駆け落ちしてしまったんだろううっすら思い ましたが、 それ以上は考えないことにし ました。




「兄貴ならさ…」

「あ、やっぱり君、その方向に…」

「アローザ奥さまを どうすっかなあ…」

「……」

大きく沈黙しながら、エイタスは、 僕は絶対、ククールのお兄さんネタに神経質になり過ぎだ と、激しい自己嫌悪に陥っていたのでした。










翻って、再び、アローザ奥さまとマルチェロです。

あなたはそうなさるおつもりですか?」

という、アローザ奥さまの 発してはいけない質問 の後、当然のように沈黙が支配しています。




じりじりじり

見守る周囲も、やきもきしながら見守っています。

そして、そんな周囲に焦らされたのか、いえ、 待ちの戦法は不得手な性質 だからでしょうね。

マルチェロは、沈黙を破りました。




「そうするつもりです、マダム。」

「…」




「…と、申し上げましたら…」

奥さまが、 ほっ

と小さな溜息を洩らされますが、




「如何なさいますか、マダム?」

ひくっ

すぐに奥さまは、お言葉に詰まられました。










2010/11/23




「あなたの為なら死ねます」
と言うのはカンタンですが、実際にその立場に置かれて即断出来る人って、どれだけいるんでしょうね?




雍歯封侯 その一へ


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