立ち上がれ、マルチェロ・チルドレン!! その一




注) アンジェロというのは、マルチェロ兄貴がリーザス村で使っている偽名です。
ちなみに、マルチェロの正体(笑)を知っているのは、公式設定の二人+アローザ奥様です。















「マダム、こちらが今月の決算報告書です。」
「ご苦労様です、アンジェロさま。あら…ずいぶんと収入が増えているのね。それに支出もこんなに減って…」


アローザ奥様の問いに、兄は にっこり営業スマイル で答えます。


「マダムが私に財務を一任して下さったので、 少々、 経営状態改善を目指してみまして…」






少々!? ×2














後ろで聞いていた二人は、心の中で叫びました。


ええ、例の一件以来、 アローザ奥様の絶大なる信頼 を何故か得てしまったマルチェロは、


「貴女の信頼に応えたいのです(スマイル)。」


という、中年女性のハートど真ん中を射抜く 台詞で、まんまとアルバート家の執事 のようなポストに納まってしまいました。



そうやって財務ポストを得たマルチェロがどうなるかというと…そりゃあもちろん、水を得た魚のように、生き生きと仕事を始めました。



ええ、経営状態を改善どころか…言うなれば 構造改革!!



どこぞの赤字国家の、口だけ構造改革とはケタが違います。痛みを伴うどころか、むしろ 麻酔ナシで全身手術みたいな改革でした。





まずは、昔年の旧悪を一掃したポルトリンクです。


首領格のザバンドは行方不明 になってしまったので、残った有力者たちに


「ね、色々あったけどぉ…これからもアルバート家をヨロシクねっ♪」


と、ジゴスパークの一つ二つに、双竜打ちの三つ四つもチラつかせながら 言ってあげると、彼らは 部屋の隅っこでみんなでガタガタ震えながら、


「も、もちろんですとも。だから…だから命ばかりは…(泣)


と、約束してくれました。



実行したのはククールとゼシカですが、シナリオを書いたのは勿論言うまでもありませんね?



かくして、貿易だの定期船だの商店からのだのといった収益が、 とってもクリアーに、そしてダイレクトに、アルバート家に流れ込む ことになりました。


アローザ奥様は
「まあ、なんだか多いわねえ。」
という程度の感想しかお持ちになりませんでしたが、 ケタ違いの増収です。



ククールはちょっぴり、 これって恐喝では? と思わないでもありませんでしたが、兄の


「運営権を所持するものが、商売を保護する代償として、対価を得ているのだ。そして、 秩序から逸脱したものには、制裁が加わるというだけのこと。何か問題があるのか?」


という台詞を聞いて納得しました。


まあ、国家だって暴力団だって、同じ手段をとっているのです。気にしてはいけませんね。



勿論、兄は個人の意思に頼るようなことはしません。ポルトリンクの経済構造自体を組み替えて、システム的にアルバート家に反抗出来ないようにしてしまいました。

 ええ、今までのような大商人の合議制ではなく、中規模商人も町制に参入させ、大商人へのチェック機能としてしまったのでした。

 もちろん、兄はムチだけでは人はついてこない事を知っています。


知っているくせに、聖堂騎士団は、 兄にムチでどつかれる事に歓喜を覚える ような…少々 ヤバい集団にしてしまったのは事実ですが、 そんな輩が少数派である事もちゃんと知っていました。


 今までの大商人にほぼ独占されていた市場を開放し、新規独立商人も参入しやすい環境にすることで、 中小商人のハートをガッチリ掴む事に成功したのです。


 ガッチリハートを掴まれた面々はもちろん、アルバート家…というか、アルバート家令嬢のゼシカと、その婿(候補)ククールに忠誠を誓うことになりました。

 なんでこの二人かって?
そりゃもちろん、 抵抗勢力を押さえつける (正しくは物理的な脅迫ですが)役割を表立ってしていたのが二人だったからです。

 もちろん、裏で全てを操っていたのは誰かさんで、二人は 駈けずりまわされすぎて疲労の極致 にありましたが、おかげで


アルバート家の跡継ぎ娘とその婿は、すげえやり手だ!!


という、ありがたい風評が立つようになりました。これでナメてかかる輩も大分と少なくなることでしょう。






支出削減も、もちろん抜かりはありません。


村内一括購入制度や、消耗品その他の完全リサイクル、そして生ゴミの効率的な堆肥化など、ともかく 金にからんだことは徹底的に、そしてカンペキに見直しまくった結果、 公約(てか、ククールにかつて語った)通り 支出の二割削減を見事達成 したのでした。




 短期間でこれだけの成果を上げられたことには勿論、兄の聖堂騎士団長時代の貴重な体験が生かされているコトは言うまでもありませんが、それに加えて、 アローザ奥様の完全な信頼と委任、そして ククールとゼシカの一日十八時間労働 という尊い犠牲(つまりは兄にこき使われた)の上で成り立っていたのでした。






「ククール…あたし…もう…ダメ…もう…眠らせて…」

「ダメだよ、ゼシカ。今寝たら永遠に寝ちまうよ…」

「じゃあもう、永遠に眠らせて…てか、なんであいつはあんなに元気なのよっ!?」





「本当にご苦労様です…ゼシカやククールさんもよくお手伝いしたわね、ご苦労様。」

「はい、ご令嬢は本当に有能で、そして一生懸命働いて下さいました。さすがマダムのご教育が行き届いていらっしゃるというものだ。」


「ええ、しつけだけは厳しく致しましたから。ところでアンジェロ様はお疲れではありませんの?」

「いえいえ、むかし仕事をしていた時に比べれば。」








「ねえ、あいつってなんだかんだ言って、 あたしたちとおんなじくらい は働いてるわよね?」


「うん。リーザス村から動いてないだけで、 書類とか計画とか全部一人で切り盛り してっから…」

「じゃあさ、それ以上ってコトは、聖堂騎士団長の時は、どんだけ働いてたワケ?てか、 いつ寝てたの?」

「それは、 マイエラ修道院七不思議のひとつ だったんだ。」




ゲームをしていたみなさんはご存知でしょう。マルチェロ団長の部屋は、いつ行ったとしても団長が机に座って仕事をしていた事を。

 彼が、聖堂騎士団長兼院長などという激務を、 嬉々として行っていた のは間違いないのですが、果たして人類は睡眠をとらずに生きる事は可能なのでしょうか!?


まあ、マイエラ修道院七不思議のうち、五つはマルチェロに関すること なので、 存在自体がストレンジ な彼は人類ではないのかもしれませんが。




「スゴいわ…あたし、あいつの事は大嫌いだけど、 うっかり尊敬しちゃいそうよ…」

「うん、それは全くそうだと思う。兄貴はスゲーよ、マジで。なのに、どうしてこのスゴさをもっと 人類の幸福のために使えなかったんだろう…」

「ホントね。そしたら、血筋がどうとかいう事で革命を起こさなくても、 みんなが幸せになれたハズなのにね…」


「ホントそうだよな、こんだけの仕事をカンペキに完了できる人なのに…」





「ああ、マダム。それともう一つ。 税金対策の帳簿が完成 したしましたので…」


「加えてまだ仕事してたのっ!兄貴っ!?」




2006/8/13






まだまだギャグ不調。
マルチェロは多忙でないと死んじゃうだけかもしれませんね。




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