逢瀬に二人

このシリーズの大ファンの方、お待たせしました。

本編を進ませる気力はなかったのですが、 せっかく七夕なので (もう二日も過ぎてますが)織姫彦星な二人でラブってもらいましょう。









昔昔あるところに、アローザ奥様という 美人巨乳寡婦(ツンデレ) と、マルチェロという 極悪非道冷酷無比の元法王(強度の天ボケ) がいました。



二人は互いに…かどうかは分かりませんが、少なくとも奥さまの方は、元法王のことを

「わたくしの理想の騎士様」

だと、 勝手に思い込んで 愛しておられました。













温かい初夏のある日。

二人は腕を組んでお散歩していました。



「マルチェロさま、いいお天気ですわね。」

「ええ、マダム。この天候ならば、きっと今年は豊作でしょう。」

「…(ちょっともぢもぢしてみられるが、マルチェロには通じず)そうですわね。素晴らしいお天気ですわね。」

「ええ、マダム。この好天ならば、ポルトリンクから出ている貿易船が難破するような事もございますまい。」

「…(さらにもぢもぢもぢもぢしてみられるが、やっぱり通じず。)そうですわね。海もよろしゅうございますわね、この好天では。」

「マダム、ではポルトリンクにお供いたしましょうか?」

「え…ええっ!? そんな…そんなわたくし、子どもが大きくなってからは、水着なんて買っておりませんわ。そんな、そんな… 水着姿を見たいなんて仰られてもっっ!!」

「私はそのようなことは申し上げていませんが(超真顔で)」







なーんて二人をひっそりと見守っていた天の神様(今回はそんな役)は、

「だああああああッ!!!!いい加減にしろよ、兄貴っ!!!!」

ついにキレました。








「いくら天ボケだからって程ってモンがあるぜ、兄貴ッ!!そこまでボケるんなら仕方ねー!!自分を一人でじっくり見つめ直す時間をくれてヤルッ!!」














かくして、天の神様であるらしい、 少なくとも見た目だけは神々しいまでに麗しい銀髪の生物 の手によって二人は、 一年に一度、七夕の日にしか会えないように定められてしまいましたッ!!!!






















アローザ奥様は、日めくりをめくられました。




「ついに…ついに一年が経ちましたわ…ああ、本当に長かったこと。今夜こそ…今夜こそ…マルチェロさまと… ポッ」


奥様がナニに赤面されたかは分かりません が、ともかくキュー○ーの三分間クッキングの

「では、こちらが一時間おいたものになります。」

のようにあっさり一年が過ぎ去り、奥さまは 超勝負服(おリボンとレースとピンクとが絶妙な配合になっている服。奥様以外が着ると「かっこよさ −100」のステテコパンツ並みのお召し物。) に身を包まれて、夜が来るのを今か今かとお待ちになっておりました。













川のほとりに佇む奥様。


「マダム…」

そのお耳に、 待ち焦がれた艶のあるバリトンが確かに流れ込みました。




「マルチェロさまっ…」

思わず抱きつきたくなる気持ちを、淑女の慎みでなんとか押し止め、奥さまはそれでも潤んでしまう瞳で、長身の男を見上げました。




「マダム…」

当の相手も、彼にしては珍しく 温かい微笑み を浮かべ、そして、 マダムの手をそっと取り ました。




「マダム… お会いしとうございました…」


奥様はその科白だけで、 思わず昇天しそうにおなりに なりましたが、なんとか持ちこたえられました。




マルチェロはその御手に、 キスして、そしてその手を握りしめると、奥さまの瞳をじっと見つめ ました。




「…」

必死で冷静を装う奥様の、 豊かなお胸心臓のバクバクで派手に波打って いるのですが、 幸か不幸か マルチェロの視線は、そこにはちらとも向きませんでした。







「マダム…貴女にお会いできない日々が、これほどまでに辛いものだとは…」

「ま…マルチェロさま…」

奥様は仰りたい事は山ほどあるのですが、胸が一杯で言葉になりません。



「一年という月日は、余りに長過ぎました…」

「わ…わた…わたくしも…」

奥さまの淑女の誇りが、遂に恋心に負けそうになった、その時でした。







「やはりマダムも、 収支決算報告をお待ち でしたか。」


「はぁっ!?」

奥様は、 淑女にあるまじき品のない問い返し をなさってしまいましたが、マルチェロはそれに気づく様子もなく、一体どこから出てきたのか 大量の紙束を開く



「こちらが今年のリーザス村の農産物の収穫物一覧でして、そしてこちらはポルトリンクの貿易の収支表です。ああ、そちらはアスカンタ付近の林から切り出した木材の販売先一覧でして…」

マルチェロは暗唱でもしているかのように、滔滔とひとしきり語ると、



「マダムの最終判断がございませんと、全てのカタが付きませんので、途方にくれておりました。さ、マダム…」

マルチェロは、握った奥様の手に、 ペンを握らせ て、



「了解のサインをお願い致します(とても笑顔)」












「いー加減にしろよ、リターンズっ!!」

天の神様が、耐えきれずに降ってきました。





「兄貴っ!!年に一度の逢瀬で、それはないだろ、なあっ!?ここはそら、最愛の人との一年ぶりの逢瀬だぞっ!?ここは、一つさあ、 会うなり熱いキスをぶちゅうううううううっ!! って リップスのようにキョーレツにブチかまし てから、 もうその場に押し倒し て、後はソレ、そうだよ… ケダモノのよーに…」




「グランドクロス。」

















さらさらさら

奥様は無言でサインを終えられました。




「ありがとうございます、マダム。これで最終決裁が済ませられます。」

「…」

「いかがされました、ご不満そうに見受けられますが…ああ、もしかして私が、職権を乱用して私腹を肥やしたとでもお考えですか?だとしたら、心外ですな。もしお疑いなのでしたら、すぐさま一覧表にして、使途不明金などない事を証明…」

「いいえ、違いますわ。」

「え…ああ、あの生物のせいですな。あの銀で赤い生物が、私の節操とマダムの名誉を汚すような発言を…即座に始末はいたしましたが、お目汚しでしたら、即座にあの物体も始末いたしましょう…」

「いいえ、違いますわ。」

「マダム?まだご不満なのですか?不肖の身ゆえ、私にはマダムの御不快の理由が察しかねます。どうぞ、遠慮なさらずに仰って下さい。」

「…」




マダムは、 淑女としての則を超えない程度にマルチェロを睨む と、お黙りになりました。






ええ、マダムはこう仰りたかったのです。




「理想の騎士さまなのはよいけれど、 こーゆー時くらいはケダモノでも構いませんことよ。」




終わり




2007/7/9




どうしてもいい話にならない、この二人のラブ話。
マルチェロは、奥様を超える強度のツンデレ なので、そぶりも出さないだけなのか、 本気で筋金入りの仕事人間 なのか、一体どちらでしょうね?

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