せんせえ、王さまって何ですか? その二
ホント、兄って法王になって何がしたかったんだろうね? 2006/8/31 国家論(笑)
綺麗なおねーちゃんを侍らせて、宴会三昧…ではないとは思いますが。
お星さまは、本当にきれいです。
ククールは、星明りに照らされて、
いっそ神々しくさえ見える
トロデ王に言いました。
「トロデ王…兄貴を
あの兄貴をっ!!
論破しちまうなんて、あんたスゲエよ、本気ですげえって。オレ、これから
リスペクトするキングは?
って聞かれたら、ためらわずに
キング・トロデっス!!
って答えるよ!!」
「カッカッカ…つか、今までリスペクトしとらんかったんかいっ!?」
一応、お約束のツッコミをいれてから、トロデ王はしみじみと言いました。
「いや、あのゴルドでの演説を遠くから聞いてのう、いつか言ってやりたいなと思っておった事なんじゃよ、アレは。」
「じゃあね、トロデ王は、王さまとしての夢ってなんだと思うの?」
「…」
トロデ王は、ゼシカを見上げて言いました。
「…陳腐だと笑わんか?」
「笑わないわよ。」
「いい年こいてと、笑わないと誓うか?」
「誓うったら!!女神さまにかけて、あたし、絶対笑わない!!」
トロデ王は、息を吸い込みました。
「人が、誰かを愛し、未来を信じられる国を作ることじゃっ!!」
そして、
とてもキュートな照れ顔
で、もう一度ゼシカを見上げました。
「四十過ぎのオッサンの夢として、キツいと思うか?」
ゼシカは、にっこりと笑いました。
「ううん、すごくステキな夢だと思うわ。」
トロデ王は、照れながらも続けます。
「でもな、奇麗事でもな、ワシはやっぱり、こう願わない者は王たる資格はないと思うんじゃよ…そりゃ、世の中、奇麗事ばっかではないが、王として理想は持たねばの。」
「だからー、ステキな夢だってばぁー」
「…誰かを愛する事を知れば、その人の幸せを願うじゃろう。じゃから、なんぞ悪いことをしようとした時に歯止めになるじゃろう。」
「…」
ククールは、黙って話を聞きます。
「未来に希望が持てれば、そうそう破滅的な事をするまい。人が人の道を踏み外すのは、未来に絶望した時じゃからの。」
「もういいって、トロデ王。分かってるよ、兄貴がずっと孤独でいた事も、オディロ院長の事や、法王庁のあれやこれやで、いろいろ絶望してあんな事しでかした事も分かってるよ。…でさ、ぶっちゃけた話…トロデ王は兄貴をどう判断したワケ?やっぱ捕まえる?」
「…そうじゃ、と言ったら、おぬしはどうする?」
「戦うよ、あんたとも、エイタスとも…」
「ククール…」
「だってオレは兄貴に死んでほしくないから。だから、ゴルドで命を助けたんだ。兄貴は今は…
そりゃ今でも電波な悪人だけど!!
特に悪い事はしてねえよ!」
ポルトリンクでのあれやこれやは、ククール的にはちいとも悪事ではありません。
「うーむ、でも認識は“悪人”なんじゃろ?じゃったら、また悪事を始めたらどうする気じゃ?」
オレは兄貴に言ったよ。
『何度でも止めてやる』
って。だから…兄貴がまた悪事を再開するってんなら…」
ククールは、静かに言いました。
「オレが殺す。」
ふう
トロデ王はため息をつきました。
「ククールよ、おぬし本気で兄が大好きなんじゃのう。」
「…二人っきりの兄弟だもんな。…そりゃあさ、オレ、ゼシカと幸せな家庭を築きたいと思ってるし、そしたら家族も増えるだろうけど、それでも、
“兄弟”っていう家族は、やっぱ兄貴しかいねえんだよ。」
ククールは、嘆願するような目になりました。
「なあ、トロデ王。兄貴を捕まえないでくれよ。兄貴は頭もいいし、剣の腕も立つし、気力も体力も激しく充実してるし、掃除洗濯料理とぜんぶ上手だし…ともかくなんでも出来る人だから、いろいろ世の中に貢献出来る人だよ。そりゃちょっと、
イヤミで天ボケで電波で
極悪人だけど!!
それはもう
いっそ兄貴のチャームポイント
みたいなもんだから…」
想いが言葉の限界を超えて、何言ってんだか分からなくなっているククールを、トロデ王は優しく見つめました。
「ククールよ、兄好きもたいがいにしないと、ゼシカが泣くぞ?のう、ゼシカよ。」
ゼシカはにっこり笑って言いました。
「大丈夫♪泣くくらいなら、
燃やすから。」
そして彼女は、にっこり笑顔のまま
メラゾーマを出して
見せました。
月明かりの中、更にメラゾーマの輝きにも照らされたその姿は、
ククールの心胆を寒からしめるに充分
でした。
「…だってさ、仕方ねーじゃん。オレ、兄貴もゼシカもおんなしくらい好きなんだもん…」
ぶちぶち言うククールを尻目に、ゼシカはトロデ王に言いました。
「でも、あたしからもお願いするわ。あのどこでもイヤミを捕まえないで。あいつは、ウチの恩人でもあるし、なによりあいつが死んだら、ククールが悲しむわ。」
「ゼシカ…」
「あたし、『兄貴が死んだ、兄貴が死んだ』って、ブツブツ一生呟き続ける生物
を夫にする気ないから。」
トロデ王は、確かにそうなりそうじゃのう、と激しく思いました。
「うーむ、まあ良かろう。マルチェロはワシにあんまり反論してこんかった。おそらく、ゴルド前のあやつなら
十日十晩でもワシと激論を戦わせた
じゃろう…」
「そういやそうだな。兄貴、ムキになる人だから。」
「きっと、心中いろいろと思うところがあるのじゃろう。一つにはそれが
悔恨の念
じゃと信じて、そして二つには
おぬしらのあやつへの思いやりがあやつの心を溶かす
事を信じて…ワシもマルチェロがもう悪事を為さんと信じよう。」
「トロデ王ー!!」×2
トロデ王は、ククールとゼシカの二人に抱きつかれ、
ゼシカの乳でうっかり窒息
しそうになるという、嬉しいんだか苦しいんだかよく分からない目に遭いました。
「うう…ゲホゲホ…
ある意味オトコして本懐かもしれん死に方
をするトコじゃった…」
「ゴメン…」
「がしかし、もうすぐおじいちゃんになる身で、この死に方はごめんじゃわい。」
「ホントごめんなさい…ね、トロデ王?さっき、五十一人連続でフラれたって言ってたけどね…ミーティアのお母さんとは…」
トロデ王の顔が、みるみる赤くなりました。
ええ、
中学生の女の子が好きな人について聞かれた
ような赤面っぷりです。
「えへへ…ま、それはいいではないか。」
「えー!?聞きたい聞きたいー!!」
「恥ずかしいわい!」
「教えて教えてー!!」
ゼシカに激しくせがまれて、トロデ王は『仕方ないのう』…といいながらも、とっても嬉しそうに、ミーティアの母親、つまり亡くなった彼の最愛の妻について語りました。
そして、最後に付け加えました。
「ま、そりゃワシは五十一人連続でフラれたりとか、そもそも女性にはモテんかったとか、もっとおっとこまえに生まれたかったとか、いろいろあったがの…
『あなたが、大好きよ♪』
と彼女が言ってくれたから、もうそれでええんじゃ。彼女が好きになってくれた、それでもうどうでも良くなったんじゃ。
ワシは愛されておる!!
それがワシの国王としての自信にもなったんじゃ。
恋じゃ恋!!恋はええぞうっ!!」
いろいろ思い出したのか、星明かりの下、くるくると
誘う踊り
を踊り始めたトロデ王と、誘われて踊ってしまったゼシカを尻目に、ククールは
そっか、恋か…
兄貴も恋をすりゃ、少しはニンゲンらしくなるかもな…
と思っていました。
ええ
なんせ彼の知っている限りにおいて、兄は三十過ぎた今まで
女性と付き合った経験は皆無
なハズです。
でも
と、ククールは思いました。
兄貴と恋
サイッキョーに似合わねー!!!!
国家の目的はなにか?まあ、「人が未来に絶望しないようにすること」でしょう。人は「この先、なんかいい事がある」と思えるうちは、そうそう破滅的な事はしでかさないものだと思います。
DQ世界では国家に王は必須みたいですが、その目的に合いさえすれば、王なんて…と、兄だけでなくみんなが思うようになったら、DQ世界は根底から変るんでしょうね。ただ、それが理想的な国家かどうかは、現代世界を見る限りは微妙なモンですが。
もし出来ることなら、兄をこの世界に連れてきて、「生まれではなく、金が全てを支配する世界」についての感想を聞いてみたいものです。
このシリーズはホモではないつもりですが、ククールの兄好きはちょっとヤバいかもと思わないでもないです。まあ、童貞聖者シリーズやアホモにくらべりゃ何百倍もマシですが。
…ようやく、恋愛っぽくなる…かな?