マダム・アローザの華麗なる日常

元拍手話。アルバート家の女主人、マダム・アローザの華麗にして優美なるセレブな御日常生活









奥様の御私室について その一


ゼシカ「ねえ、お母さん。お母さんの寝室って、どうしてこんなに ピンクでレースでひらひら (で、四十女としてはかなりどうかと思う乙女趣味)なの?」

マダム「まあゼシカ、このお部屋を最初にデザインなさったのは、貴女の今は亡きお父様なのですよ。」

ゼシカ「…え?」

マダム「あれはわたくしがこの家に嫁いできた日のことです。花嫁としての晴れがましさもありながら、しかし、これからの生活にひそかに不安を感じていたわたくし…ゼシカ、貴女のお父様はそんなわたくしの手を優しく取って、この部屋の前までお連れ下さったのです。

『あけてごらん、アローザ。僕の花嫁に、花婿からのプレゼントだよ。』

そのお言葉に導かれ、わたくしが部屋を開けると…(うっとりとした目をして)そこには、この部屋がありました。」

ゼシカ「…あたしのお父さんの趣味なんだ…」

マダム「(既にご自分の世界に入られて)ええ、その時わたくしははっきりと、あの方のわたくしへの深い愛!!を感じたのです…」


ゼシカ父って、どんな人だったんだろうと思って…




奥様の御私室について そのニ


ゼシカ「ねえ、お母さんの ピンクでレースでひらひら の寝室って、ずっとこのままお母さんが使うの?」

マダム「まあ、ゼシカ。この部屋はアルバート家の主婦が使うべきもの。本来ならば、サーベルトが妻を迎えたならば、彼女に譲られるべきものであったのです。

(ため息をつかれて)ああ、サーベルト。妻も子も持たない若いみそらで女神様の元に呼ばれてしまうなんて…」

ゼシカ「…お母さん…」

マダム「(非常に悲しそうに)私は新しいこの家の主婦が、我が家に来て、 この部屋を見て、喜びに顔を綻ばせるのを見る のを、楽しみにしていたというのに…」

ゼシカ「…微妙じゃない?」


ちなみに、喜ばないような神経の持ち主の嫁は、三日とアルバート家にいられません。




奥様のお召し物


マダム「ごめんなさいね、ククールさん。お片づけの手伝いをしてもらって。」

クク「いえいえ、お姑さま。このくらいはお安い御用です。」

マダム「(衣装ダンスを整理しながら)…このドレス…もう処分した方が良いかしら…」

クク「!?(思わず絶句したあと)…あの…その(ピンクでレースでひらひらでこてこて乙女で、いっそコス衣装スか?と聞きたくなるような)ドレスは、お姑さまのですか?」

マダム「ええ、わたくしがサーベルトを生んだ時に、夫が贈ってくれた、思い出の品です。」

クク「えっ!?(再び絶句しながら)…(常人には理解し難い、つーかはっきしゆって、オレ的に有得ないくらい趣味悪い)ユニークなセンスの旦那さまだったんスね?」

マダム「(哀しそうにドレスを見ながら)若い者向けのドレスですけれど、さすがに処分は出来なくて…ゼシカに着せようとしたら、あの子ってば、

『そんなものを着せられるくらいなら、あたし、一生ハダカで過ごしてやるっ!!』

だなんて嫌がって…やはり、レトロなものは若い娘には気に入らないのかしら…」

クク「いや…レトロとか、そーゆー問題じゃねーと思いますけど…?」

マダム「…(独り言のように)いっそ、もう一度着ようかしら…」

クク「マジっスかっ!?」


奥様はもちろん大真面目です




奥様、女学生の御時


女学校のせんせい「はい、宜しゅうございます…アローザさんの詩の朗読は、毎度ながら素晴らししゅうございますね。」

若き日のアローザ「恐れ入ります。」



ささやき交わす級友@「アローザさまって、ご学業も優秀でいらっしゃる上に、お裁縫の腕も非常に素晴らしいのでしょ?」

級友A「ええ、それだけではなくて、魔術にもご堪能でいらっしゃるし、何よりあのお美しいご容貌…」



授業後

級友B「アローザさま、ごきげんよう。ところで耳に挟みましたのだけれど、アローザさまはご卒業なさったら、あの名門、アルバート家にご縁付き遊ばすということですけれど?」

級友C「まあ、アルバート家!?お羨ましいこと。」

級友D「でも、みなさま。むしろこれは、羨むべきはアローザさまの未来の花婿様ではなくって?」

級友E「まあ、本当。お美しい花嫁をお迎えになるんですものね…」



笑いさざめく一同の中、ちょいと赤面した彼女はぽつりと

アローザ「…恐れ入ります」


学習院女学校の挨拶は以下の二種類のみだったとか

御機嫌よう…おはよう、こんにちは、さようなら、などに使用
恐れ入ります…落としたハンカチを拾ってもらった、先生に当てられた、褒められた時の「ありがとう」の意味

今でもお嬢様校ではやっているという噂もあります




優しくて、厳しくて、可愛い奥様


マダム「まあ、素敵なお花ですこと。あなたが選んだの?」

使用人@「はい、奥様。」

マダム「良い趣味をしているわね。素晴らしいことです。」


使用人@「奥様に褒めて頂いちゃった♪」

使用人A「いいなー、羨ましい。」




マダム「まあなんですか、この体たらくは!!」

使用人A「申しわけありません、奥様!!」

マダム「伝統あるアルバート家に仕える者が、こんなことでは困ります!!」

使用人A「二度といたしません!どうぞお赦し下さいませ!!」


使用人B「奥様じきじきに叱ってもらったんだ、いいなあー。」

使用人A「へへへ、いいでしょー。」




マダム「(純愛小説をお読みになる奥様)…(そして、ふと涙ぐまれる奥様)」


使用人C「(小声だがはしゃいで)みてみてみんな!“そっと涙を拭われる奥様”よっ!?」

使用人D「みせてみせてー…ああ、麗しいお姿(うっとり)」

使用人E「そして可憐…(うっとり)」


アルバート家の使用人達は、さりげに奥様FCの会員で占められている気もせんでもない






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