烙印



本館での相方に
「誕生日プレゼントにエロい兄貴ちょーだい♪」
というようなコトを言ったら、約束どおりくれたものに萌えモエして駄文をつけてみたら、とっても長くなっちゃったってェイカした代物。
ED後妄想話。兄貴が法王庁に捕まったら…なお話です。とりあえず、エロはナシですよ。
兄貴自体がエロいけど。

























姿を現したニノ大司教…いや、今はもう法王だけど…を前にしても、後ろ手に縛められた兄貴は、僅かばかりも頭を下げることはなかった。


ただ、じっと、ニノ法王を睨めつける。




それを、聖堂騎士が無理やり頭を押さえつける。




手負いの獣のような…




そんな囁きが、周りの司教や大司教なんてゆー“高位聖職者”どもから漏れる。







オレはそんな兄貴を、ただ、見ることしか出来ない。




兄貴が。


あの誇り高い兄貴が。


上半身を裸に剥かれ、

かつては自分にひれ伏した“高位聖職者ども”の好奇の目で取り囲まれ、

新法王に跪かされ、

頭を下げさせられている。




…オレのせいだ。


全部オレのせいだ。




“オレが”兄貴に、この屈辱を与えた。



















ゴルドから姿を消した“元法王”討伐隊に、オレは加わっていた。


仕方なかった…

兄貴の足取りは、とうに法王庁の完璧な情報網に捕われていたし、いくらあの兄貴でも、一人でそれに対抗する事は不可能だって分ったから。




法王庁は、兄貴を取り逃がす気なんて、これっぽっちもなかった。




だからオレは“オレが兄貴を殺そう”と決めて、そこに加わった。






兄貴は強かった。


まだ負傷の身だなんて思えないくらい、強かった。




けど、それでも追っ手の数は多すぎたし、そして、オレがいた。




兄貴は荒い息をつきながらも、決して、その剣を収めようとはしなかった。

斬り死にする気だったのは、明らかだった。




そしてオレも、剣を手に、兄貴に挑んだ。






兄貴は強かった。

けど、疲労しすぎていた。


オレはそのまま戦っていたら、間違いなく兄貴の息の根を止めただろう。

けど、オレの口から出た言葉は、




「兄貴、投降して…」

だった。




「何を今更!!」

当然のように叩き付けられた言葉。


けどオレは、ただその言葉を繰り返した。




間合いが開いた。

オレは、自分の手から剣が零れ落ちるのを感じた。

オレの膝が、オレの体重を支えきれなくなったのを感じた。


オレは、ぺたん、と地面に座り込み、涙目で兄貴を見上げた。




「兄貴、死なないで…」

オレは、ぼろぼろ泣きながらそう繰り返した。


周りには、法王庁の追っ手が取り巻いていたのは百も承知だったけど、オレの涙と哀願の言葉は止まらなかった。






兄貴は、オレを一太刀に斬り捨てる事が出来た。

間違いなく、出来た。


そうしていたら。

もしかしたら兄貴は追っ手を振り払って、もう一度逃げられたかもしれない。






兄貴は、その綺麗な翡翠色の瞳で天を見上げた。


そう、本当に綺麗な瞳だった。




そして、その手の剣を投げ捨てた。



















オレは、兄貴を助命するために全力を尽くした。

トロデ王やエイタスやミーティア姫に頼み込んで、国家レベルの嘆願書を出してもらった。

そして、オレ。

オレも暗黒神を倒したパーティーの一人だったから、それも精一杯アピールした。




「兄を、命だけは助けてください」




その訴えは、なんとか聞き遂げられた。



















重々しい口調で、判決文が読み下される。




「汝、元、聖堂騎士団長、元、マイエラ修道院修道院長、元、法王マルチェロ。汝は、聖職売買、贈賄、恐喝…」


騎士団長時代から兄貴がやってきた“罪状”が延々と並べ立てられ、兄貴の口元に皮肉な笑みが浮かんだのが見えた。

ああ確かに。ここにいる聖職者お歴々の中で、この罪の中の、ただの一つたりとも犯していないヤツなんて、皆無だろう。




「先の法王殺害の罪、法王という至高の身を、忌まわしき暗黒神の力を借りて汚した罪、そして、聖地ゴルドを崩壊させた罪…汝の罪は、今までにいかなる人の子が犯した罪よりも重い!!」


重々しく、判決文は続けられる。


「本来ならば、いかなる事があろうとも死を免れることは叶わぬ大罪だが、いと高き、そして、いとも慈しみ深い、法王ニノ聖下の格別のご配慮により、汝の罰は次のものとする。」




オレは、手が汗ばむのを感じた。




「まず、一切の公的記録からのその名の剥奪!そして、終生の監禁を命ず!!」






その重々しい宣告と共に、祭服を着た男が、手にした鏝に魔法を唱えた。




じゅうっ…


青白い光に包まれ、鏝はそんな音を立てる。




オレはその音に、背中に冷や汗が流れるのを感じる。



そんなに熱そうなモンを兄貴に押すだなんて、聞いてねえぞ…







当然のように抗議の声を上げようと、立ち上がりかけるオレだが、背後の聖堂騎士の何人かに肩を掴まれ、座らされた。






「大罪人マルチェロが、二度と!!女神や法王に逆らうなどという涜神行為を犯さぬために、“法王の格別の慈悲を以って”この魔法の烙印を大罪人マルチェロに“賜る”!!」




離れた場所に座るオレにすら感じられる熱気。


その熱気に、兄貴は顔を顰める。

だが、聖堂騎士たちは構わず、兄貴の烙印が焼き付けられる場所を衆目に晒した。




兄貴の顔に羞恥がひらめくが、宣告は非情だった。







「この烙印によって、大罪人マルチェロに、“永遠”の“女神と法王への服従”が約束される!!」






肉が激しく焦げる音と、喉から臓腑を絞り出されたような絶叫が、重なった。




オレはただただ、その絶叫を聞きたくなくて、耳を塞いだ。


そうしてはいけない事は分っていたが、どうしてもまともに聞けなかった。




苦痛の余り撥ね上がる兄貴の頭を、聖堂騎士たちは乱暴に押さえつける。






オレはガタガタ震え出した。


情けねーけど、震えは止まらなかった。






ごめん、兄貴。

兄貴をそんな痛い目に合わせてるのはオレだ。




兄貴は本当は死にたかったのかもしれない。

けど、オレは兄貴に死んで欲しくないんだ。



ゴルドでオレは確かに言ったよ。


「あんたはみじめに生き延びろ。」




違うよ、兄貴。

本当は、兄貴に死んでほしくなかっただけなんだ。

ああ言ったら、兄貴は意地で死なないって思ったんだ。




兄貴…オレは兄貴に死んで欲しくないだけだったんだ。

どんな姿でも、生きてさえいれば、兄貴ともう一度やり直せると思ったから。




ありがとう兄貴、だから兄貴は生きてくれることにしたんだね。

だから投降してくれたんだよね。




なのに…オレは結局、兄貴に苦痛を与えてしまうんだ。




なんでだろう…オレはなんでいっつもこうなんだろう…

オレは兄貴に害を与えたいワケじゃないのに、どうしてオレの事でいっつも兄貴は苦しむんだろう…




でも

兄貴…生きてさえいてくれれば、オレは出来るだけの事はするから。


オレの人生かけて、そうするから。


だから、それでも生きていて。






なあ、法王になったニノさん。

兄貴は確かに、アンタにとっても酷いコトをしたけど。


法王庁にとっても、ゴルドで死んだ人たちにとっても、許しがたい極悪人かもしんねーけど。


けど、この人だって、弟のオレを思いやる心くらいは持ってる人なんだよ。






だからさ




もう、その焼け付いた鏝を兄貴から離してあげて!!


骨まで、兄貴の罪の証を焼きつけようとしないで!!




オレの兄貴に、非道いことしないでっ!!






2006/10/29




事の発端は、相方から来た「烙印押されてる兄貴ってエロいよね」というメールでした。それに過剰反応したべにいもの執拗な請求により、とうとう相方は、それを実際に描いてべにいもの誕生日にくれてやるコトを約束させられてしまいました。可哀想な相方。でも…
ありがとう、ほんとうにありがとうっ!!
二ヶ月近く待ちまくっただけあって、ひっじょーにエロい兄貴で嬉しいです。いやあ背筋がエロいです。ほつれ毛が更にエロいです。このまま
「兄貴陵辱イラですよ♪」
と言われても、一瞬で信じそうなトコがさらに良いです。
ところでこのイラだと、兄貴はどこに烙印を押されているのでしょう?
どう考えても上半身じゃなさそうなんですが…と考えた結果
「もしかして、ケツ?」
と思ったべにいもさん。…そりゃ…恥ずかしいよな、衆目で生尻を晒されたら。

べそべそやたらと泣き虫なククが役立たずです。泣いてないで、なんとかしろよこの野郎!!お前の存在価値なんて、「兄貴が大好き」なコトと、あと顔とギャンブルしかねーじゃねーか、この野郎!!
しかし…なんか続きそうね、この話(笑)


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