自主性の尊重
設定:ドルマゲスの凶手によって命絶たれたオディロは、女神の膝元にて、己が愛し子が堕ちてゆくさまの始終を見ていた。
そして、ついに背神の罪を犯した愛し子は、サヴェッラに捕らえられた。
地上の空気とは、かくも重く、そして汚れたものであったか。
ワシは、久方ぶりの地上を、まず、そう感じた。
「おお…久方ぶりであられるの、マイエラ大修道院長猊下。」
そして、地上でまず聞いた声が呼ぶ、その、長ったらしい呼びかけに、ワシはまず眉をしかめる。
尤も、もはやワシには”眉”なんぞとというものは、実は存在しない。
ただ、そのように見える、なにやらぼんやりとした幻影があるのみ。
なにせワシの肉体はもはや滅び、今、ここに在るのは、魂の幻影のようなものなのじゃからな。
「こちらこそ、久しいのう、ニノ大司教…いや、今は法王聖下とお呼びせねばならんだかのう。」
ちょっとイヤミを塗してみたが…まあ、普通の人間には、これはイヤミとはなるまいのう。
「は、は、は…」
ニノは慇懃に笑ったが、その笑いは恐ろしく空虚でしかなかった。
「ニノで結構でございますぞ、聖者オディロ殿。なにせ貴方は、生きた聖者から永遠の聖者となられて、女神の御膝元で永遠の平穏を楽しまれる身。法王とは申せ、俗身たる儂の及ぶところではありません。」
ニノの言葉は、全てが空虚で偽りに満ちていた。
違う。
ワシは感じた。
昔から彼は、決して善良とは言えなかったが、その才能と権勢に裏づけされた自信に満ちていた。
そして、”あの事件”があった後、彼は改心し、法王に相応しい徳を身に着けた…と、ワシは感じていた。
ワシの目は、曇ったか。
「ワシは年寄りじゃ、くだくだしい話は疲れるだけ…早く本題に入っておくれ。」
「ははは、もはや重りのような肉身は御持ちではいらっしゃらぬ身でしょうに…」
「マルチェロのことであろう。」
ワシがその名を口にすると、ニノの表情が凍りついた。
「よく御存知で。」
平静を装った口調。
「女神は全てをご存知じゃ。そのお膝元にいる我が身じゃものな。」
「ならば、もはやくだくだしい説明は要りますまい。あの男は、全ての名誉も、存在も、もちろん、法王に即位したという事実も全て抹殺され、そして明朝、その肉体をも焼き尽くされます。」
「存じておる。」
ニノは、取乱した様子を見せないワシに、不審の目を向けた。
「マルチェロとは、貴方の愛し子、マルチェロのことですぞ。」
「それも分かっておるよ、ニノどの。一介の庶子から、聖堂騎士団長となり、サヴェッラで手段を選ばずにのし上がり、そして、女神の僕でありながら、女神の代理人たる法王ベネディクトゥスを弑逆し、暗黒神の力を借りて法王の座に就かんとした…ワシが育てたマルチェロのことであることは、言うまでもなかろう。」
「さすが聖者オディロであらせられる、そう、あの背神者は、その許すべからざる大罪によって、明朝、生きたまま火刑に処されるのです!!」
ニノの瞳は爛々と輝き、ワシに反応を窺う。
そして、わずかに落胆したような面持ちになると、ワシを見上げた。
「何も仰る事はございませんかな?」
「今更、ワシが何を言えよう。」
事実、ワシにはもはや何も言う資格がない。
如何な謝罪も、もはや全てが空虚なのじゃから。
「生きたまま、火刑に処される苦痛が如何なものか、御存知でありましょう?」
「…ワシは生きたまま焼かれた事はなかったがのう。想像は出来る…」
「火刑に処す事を決めたのは、法王たるこの儂ですぞ!?」
「じゃがの、ニノどの。そなたの裁きは、公正なものじゃと思うよ。」
女神に仕える者が、その女神に反逆する。
法王の身として、それを裁かずにはいられまい。
「ニノどの。」
ワシは、先ほどから落ち着かない様子のニノに先に声をかけた。
「で、ワシをわざわざこの俗世に呼んだは、如何なる理由があっての事じゃね?こんなつまらない年寄りでも、一応、長年マイエラ修道院の院長であったのでね、法王たる身はこのような秘術も用いることが出来ると知っておる。だが、それがそなたの身に大きな負担をかける事も知っておる。そこまでの犠牲を払って、そなたがワシを呼んだは、如何なる訳じゃね。」
ニノの顔が、輝いた。
「ははははは…」
暗い、声。
「オディロ猊下、貴方は慈愛深い真の聖者であられたからな。そうは言っても、己が愛し子を助けたいのだろうと思うてな、わざわざ御足労頂いたのだ。」
さすがに変わったワシの表情を満足げに眺め、ニノは続けた。
「法王とは、裁く者であるよりも、救う者であれ…先の聖下がよく仰っていた。それに、あれが悪事を犯した事に、儂もまるで無関係という訳ではない。じゃから、あの男の命を助けても良い。」
そう言葉を放つニノの顔は、だがしかし、その言葉を発するに似つかわしくない、不穏な表情を湛えていた。
「…ワシは、何をすれば良いのじゃね?」
ワシは先に問うた。
「あの背神者の、罪多く、穢れ塗れの人生を、否定して頂きたい。」
ワシは、瞳を瞬かせた。
「貴方も御存知であろう、記憶を消し去る効能のある“可忘草”という薬草があることを。その薬草を加工した、とびきりの忘却効果のある秘薬がある。飲めば、その者は全ての記憶を喪失する。」
ニノの瞳は、瞬き一つせずに、ワシを見据える。
瞼のない、獣のような瞳で。
「それをマルチェロに飲ませようというのかね、何の為に?」
「はは、これは異な事を仰せだ。
『全ての子供は女神の愛し子。女神の創り給うたままの、無垢な魂を持っておる。罪を犯してしまった者は、邪悪が、その魂の表面を汚してしまったに過ぎん。』
とは、貴方が仰せであった事でしょう?貴方の愛し子の魂は、あの者の不幸な生い立ち、そして環境…」
ニノは、ぬめるような視線でワシを見上げた。
「更に…もう認めてしまいましょう、サヴェッラ自身の持つ、退嬰、退廃を以て汚され、それは、許し難い大罪を犯さしめた。」
ワシは息を一つ吐いた。
尤も、ワシの肉体は、実はもはや、呼吸をすることとて叶わぬものなので、その動作を行ったに過ぎないのではあるが。
「…罪を犯したのは、マルチェロの魂ではなく、その魂にこびり付いたマルチェロの人生そのものだ…儂は慈愛の心を以てそう考え、聖界諸侯にもそう説いた。
『マルチェロの“人生”を消し去れば、あの肉体と魂を焼く必要はない。』
と。」
ニノはしきりにワシの表情を窺いながら、話す。
「だが…一つ問題がある。あの秘薬は、飲む者が、己れの記憶を消すことに同意せねば効果を発揮せぬのだが…」
「マルチェロが同意せんか。」
「然り。」
ニノは、いっそ媚びるようにワシに語った。
「そこで、貴方に御相談申し上げたいのじゃ。貴方も御存知の通り、マルチェロは拷問等の苦痛を以てその意志を曲げしめようとしても、聞くはずのない男。なにせ、邪神とはいえ神を、一時とはいえ、か弱き人の身を以てねじ伏せた意志力の持ち主である。あの男を説き伏せる事が出来るのは…」
そしてニノは、再び、媚諂う面持ちで、ワシを見上げた。
「それは、本当に全ての記憶を消しさるのかね?」
「おお、左様でありますぞ。暗黒神の一件はもちろん、領主の庶子として生まれ、弟のククールを憎んでいたことも、そして修道院の…」
ニノは、ワシの表情をうかがって、言葉をそこで切った。
「マルチェロの人生を闇の方向に捻じ曲げた、一切合財の負の記憶を失うのです。…はは、御案じ召されるな、記憶を失ったマルチェロを更に罰しなどするものか。この身に誓って溢れんばかりの愛情を注ぎ、女神の愛し子に相応しい、幸福と平穏に満ちた残りの人生を約束しよう…法王たるこの身に誓ってな。」
ニノの言葉に、偽りはなかったのだろう。
その瞳にも、偽りが見えなかったのだから。
ニノの期待に満ちた瞳に見守られながらの、長い沈黙が続いた。
「ならば、あの子を焼いて下され。」
ワシは、答えた。
その時、ニノが発した声は、形容のし難いものであった。
ただ、その、「何故」という問いだけはよく判ったので、ワシは答えた。
「あの子が頷かない以上、ワシはそうとしか言いようがない。」
「何を言う!養父の貴方の言葉なら、マルチェロは聞こうぞ?」
「知っておる。だからワシは、あの子にワシの意思を強制することになる。あの子が記憶を失うを潔しとしない以上、ワシもあの子にそれを強制することは出来んよ…それがあの子を生きたまま焼かれる苦痛に堕とす結果と分かってはいても、な。」
ニノの顔に、憤怒の形相が現れた。
どうしてここで彼の面に“憤怒”の形相が現れたか…ワシには分らぬ。
「マルチェロにその妄言を言わしめるのは、マルチェロの魂を歪めた人生ではないか!?」
「じゃが…その人生はあの子が選んだものでもある。ワシにはあの子自らが導き出した結論を、あの子の人生そのものを、否定し、消し去る事など出来ん。」
「偽善者がっ!!!!」
ニノは弾けるように叫んだ。
「貴様の魂胆は分かっているぞ、老いぼれめっ!!貴様はマルチェロに忘れ去られるのが怖いのだ。
『愛し子』
そう愛でておきながら、結局は貴様がマルチェロを過たせた分際で!!」
「…」
ワシは、ニノの憤怒の形相と、その言葉の思いがけなさに、返す言葉を失った。
「マルチェロを過たせた、一番の要因は、異母弟ククールへの憎悪よ。だが、貴様は両者の間に立って何をした!?十数年も両者を見ながら、両者の確執を知りながら、貴様は二人の関係をまるで改善させなかったではないか!?エセ聖者がっ!!貴様はマルチェロを愛玩動物のように愛で、しかも、地位と権力を与えることで、マルチェロを過たせたのだ!!」
「…」
「マルチェロは聡明過ぎるほど聡明だが、育ての親の貴様だけは盲信している…まんまと貴様の思惑はまってな。それを良い事に、貴様はマルチェロの魂を苦痛の中に焼きつくさせようとしているのだ。貴様の事さえ忘れれば、マルチェロは己が心を永遠に焼く罪の意識と苦痛から解き放たれ、幸福と平穏に満ちた人生が約束されるというにっ!!」
ニノの言葉を受けたワシの心中は、女神がワシに時の果てるまでの時間をお与えになっても、語りつくすことは出来まい。
「マルチェロに…会わせてはくれんかね…」
ワシは、ようやくそれだけの言葉を絞り出した。
そしてニノは、焼けるような苦痛と、会心の笑みを混在させたような表情で、それに応えた。
聖堂騎士の制服を着た男たちに連行されてきたマルチェロは、ワシの幻影のような姿を見るなり、万感の思いをモザイクのように混在させた表情を浮かべ、
「お懐かしゅうございます…」
と、ただそれだけ言って、跪いた。
ニノは、傲頑な態度で騎士たちを去らせると、小さな砂時計をワシに示し、そして引っくり返した。
その砂の、最後の一粒が落ちる時が、ワシとマルチェロが、“親子”として接することができる、最後の時となる。
マルチェロの魂が、地上の業火から、地獄の炎へと委ねられたにせよ、
マルチェロがワシの事を忘れ去ったとしても、
そう、ワシがどんな結論を出そうと。
ニノは、食入る様な視線でワシ等を見つめる。
マルチェロは視線を落したまま、何も言わない。
砂時計は、無慈悲に時を落とし続ける。
「マルチェロや。」
「はい。」
上げられたその顔は、ワシの記憶する顔よりも肉が落ちていた。
「マルチェロや…」
「はい。」
緑の瞳は、昔のまま。
濁ってなどいない、昔のままの宝石のような色をしていた。
「マルチェロや…」
「はい。」
ワシは覚悟を決めて、言葉を続けた。
「お前は、ワシが死んだ後、サヴェッラに行かずとも済ませられたかね。」
マルチェロは、一介の庶子から、聖堂騎士団長にまで成った。
それがワシのえこ贔屓であるとは、ワシが生きていた時分からよく聞いていた噂だった。
それが本当にワシの贔屓ではなかったか、ワシにも実は良く分からん。
だが、噂は言っていた。
ワシが死ねば、マルチェロも終わりだと。
「はい。」
きりりとした、言葉。
「サヴェッラには行かずとも、待っておればサヴェッラから、新しい修道院長が来たでしょう。その人物が私に好意を持ったか否かは分かりません。オディロ院長、貴方も御存知の通り、私は余り人に好かれる質では御座いません故、どちらかと言うと嫌われる可能性の方が高かったでしょう。ですが、その人物に好悪、何れの感情を抱かれようが、私は聖堂騎士団長として、やはり巧くやれたに違いないとの自負が御座います。」
部屋の隅で、ニノが顔を顰めた。
彼が、マルチェロに期待した言葉は分かる。
我が父よ、貴方の庇護なくては、私は陥れられぬ為には、高みを目指さずにはいられなかったのです。
「マルチェロや。」
「はい。」
「お前はサヴェッラで、随分と悪い事をたくさんしたね。」
「はい、私の野心を果たすために必要でしたから。」
部屋の隅で、ニノが顔を歪めた。
彼が、マルチェロに期待した言葉は分かる。
我が父よ、あの腐敗したサヴェッラでは、そうせねば私は生き延びてゆけなかったのです。
「マルチェロや。」
「はい。」
「お前は、母親は違うとはいえ実の弟であるククールを、その無実の仲間たちと共に、そして、そちらのニノ法王と共に、煉獄島に堕としたね。」
「はい、次期法王の最有力候補であるニノをここで失脚させることが、最善だと判断したからです。その為に、ククールたちに罪を着せるのが一番手っ取り早いと、私は判断したからです。」
ニノの顔が泣きだす寸前のように歪んだ。
彼が、マルチェロに期待した言葉は分かる。
我が父よ、あの時は咄嗟の事態に気が動転し、しかも、ニノ法王は私を降格すると仰いましたし、自分の身を守ることしか脳裏になかったのです。
「マルチェロや。」
「はい。」
「お前は、先の法王を、殺したね。」
「はい、私が法王の座を得る上で、最大の障害でしたから。」」
部屋の隅で、ニノが遂に顔を覆った。
彼が、マルチェロに期待した言葉は分かる。
我が父よ、それは私の意思ではありません。私は暗黒神に操られていたのです!!
「マルチェロや。」
「はい。」
ワシは、マルチェロの緑の瞳を見据えた。
「お前は、その悪の全てを、自らの意思で為したのかね。」
「然り。」
「マルチェロや…」
「はい。」
「お前の肉体を焼く火は、自らの手で点けたものなのだね。」
「左様です。」
ワシは、ワシの愛し子の、真っすぐな緑の瞳を、やっとの思いで直視した。
最後の砂が、落ちた。
「ならばお前は、その火に焼かれねばならない。」
ニノの手が、荒々しく、合図の鈴を鳴らした。
すぐさま室内に入ってくる騎士たち。
「連れてゆけ、その背神者をすぐさま連れてゆけっ!!」
法王の怒号のまま、騎士たちがマルチェロの肩を掴もうとする。
「控えろっ!!」
かつて、聖堂騎士たちを一喝した時の声が、室内を圧した。
威圧された騎士たちはおろか、脅えたように声を失ったニノも無視して、マルチェロは再び頭を下げた。
「我が父、オディロよ…」
穏やかな声。
「貴方が、私を御理解下さった事に、感謝致します。」
優しく穏やかな笑顔。
マルチェロは、ワシを振り返ろうとすらしなかった。
ニノは泣いていた。
子どものように辺り憚らず、床に這いつくばって泣いていた。
流した涙が、床にいくつもいくつもしみをつくっていた。
ワシは、その涙を羨んだ。
ワシには、もう涙を流すことすら叶わぬのだから。
終
2008/3/13
子どもの自主性を尊重するという事は、親にたくさんの苦痛を与えるというお話。
または、またまた可哀そうなニノさまのお話。
拍手コメントを頂いて、毎度恒例の
読後感だいなしなアホモ
を思いつきました。反転ヨロシクです。
オディロ院長が、やっぱり愛し子に生きていてほしいと望んだら。
「…我が父よ、貴方がお望みになるのならば、私がどうしてそれに逆らいましょう。呼吸一つの間ほども、貴方の御意に逆らうつもりのない私です。貴方がお望みになるのなら、このマルチェロ、惨めに全てを忘れ去ることを厭いはしますまい。」
ニノたま「(喜色満面で)ふーっふっふ、さすが聖者たるお方じゃ。賢明な御判断御判断♪」
オディロ「(浮かない顔で)じゃが、本当にマルチェロには
幸福と平穏に満ちた人生を約束
してくれるのじゃろうね?こんな事は言いたくないのじゃが、おぬし、マルチェロに相当、いかがわしい…」
ニノたま「何を仰る!!法王たる身に誓ってと申し上げたであろう?決してもけえっして、マルチェロにいかがわしいことなんぞせぬっ!!貴方に代わって、本当の父親のように保護し、愛情を注ぎ倒して差し上げるからっ!!安心して成仏めされい。」
オディロ「…宗派が違うぞ、おぬし(心配しながら女神さまのお膝元へ帰る)」
ニノたま「ふーっふっふ♪さ、可愛い可愛いマルチェロを今日から、舐めるように可愛がり倒そう♪なぁんにも覚えていないマルチェロじゃから、たぁっぷりの愛情をそそいだら…」
ジゴスパークっ!!!(地獄のいかづちが叩きつけられる音)
ニノたま「な…なんじゃっ!?」
記憶を失ったマルチェロ「(法王の舘に派手に開けられた穴から侵入してきた赤くて銀色な生物を見て)貴方は?」
赤銀の生物「記憶を消されたってのは本当だったんだな…兄貴、オレは世界一美形で、そして兄貴が心から愛していた兄貴の弟だよっ♪」
ニノたま「ちょぉっと待ったーっ!!!貴様、儂の可愛いマルチェロに、なにをウソ偽りの記憶を吹き込んでおる!?」
赤銀の生物「(無視して)ほぉら兄貴、この美しい顔を見てごらん♪どんな人間だって、こんな美しい青年を愛さずにはいられないだろぉ?」
マルチェロ「確かに、貴方はとても美しい方ですね。でも、私の弟…」
ニノたま「(二人の間に割って入り)退けっ!!儂はマルチェロに
幸福と平穏に満ちた人生を約束
したのじゃっ!!貴様の存在があると台無しじゃわいっ!!マルチェロの人生を歪めた一番の悪めっ!!」
赤銀の生物「何言ってやがるっ!!オレのピュアピュアな兄貴を汚した極悪人めっ!!どーせ自分だって、
『お前を小さい頃から愛情いっぱいに育ててきた、お父さんだよー』
とか、ウソばっかな記憶を兄貴に刷り込むつもりのくせにっ!!」
ニノたま「クッ(図星)ええい、それの何が悪いっ!!ワシはオディロ院長から、マルチェロの将来を託されたんじゃっ!!じゃから、儂が父親代わりでナニが悪い!!(開き直り)儂はこれからマルチェロを
蝶よ花よ
と育てるんじゃっ!!」
赤銀の生物「オレは兄貴の唯一の家族だから、オレが記憶を失った兄貴はもらうっ!!
『兄貴ー、オレは兄貴と小さい頃から超仲良く育って、オレは兄貴が大好き♪兄貴もオレが大好き♪』
って、今度こそ、
超仲良し兄弟
として、幸せに暮らすんだいっ!!」
マルチェロ「あの…私の本当の人生は、どちら…」
ニノたま「儂じゃいっ!」
赤銀の生物「オレだよっ!」
赤銀の生物「もういいや、兄貴、オレと一緒に
幸せでのんびり過ごせるところ
に行こうなー(マルチェロをひっつかむ)」
マルチェロ「え?」
赤銀の生物「トロデーンはいいトコだぜ?メシもうまいし、景色はいいし。さ、じゃそうと決まったらさっそくGO!!」
ルーラ(ばびゅん)
ニノたま「マルチェロっ!!!?…おのれ、赤銀の生物めっ!!誰か、誰かあるっ!?すぐさま法王庁の軍を召集するのじゃ。目的地?トロデーンに決まっておろうっ!!あの忌々しい赤銀の生物を、城ごと叩き潰してくれるわっ!!待っておれ、可愛いマルチェロ。ワシがちゃんと取り戻して
幸福と平穏に満ちた人生を約束
するからの。」
結局、記憶があろうがなかろうが、この世を混乱に陥れてしまうマルチェロでした。
女神さまのお膝元のオディロ院長には、深く同情いたします。