はじける素肌(くさぐさ)


「もしこの兄弟が現代世界で生きていたら」シリーズ元拍手話。

兄弟とかオリキャラとかが蔓延するこのシリーズについに…?






「ほっほっほっ、やっぱりプールは楽しいのう。」

いつの時代のものか、上下つなぎのモモヒキ状のしましま水着を着たオディロ教授が心から楽しそうに言います。


「左様でございますな、オディロ教授。」

そう答えるマルチェロは、プールだというのにいつもの格好です。


彼らの眼前では、小さな子どもたちが遊び戯れてきゃっきゃっと言っています。

今日は、オディロ教授が私に行っている子ども読み聞かせ会の郊外イベントで、遊園地のプールにやってきていたのです。

そして、オディロ教授のいるところ、マルチェロがいないはずがないのです。




「…オレはぜんぜん楽しくない。」

すぐ傍で、抜けるような白い肌に映えるクリムゾンレッドの水着を着たククールが、小学生のようにしょぼくれています。

まあだいたい想像はつくと思いますが、マルチェロのいるところ、ククールがいない筈もないのです。




「…兄貴の水着姿が見れると思ったから来たのに。」

ぶつぶつ呟きますが、オディロ教授としゃべるので幸せいっぱいなマルチェロに聞こえるはずもありません(もともとククールの言葉なんて聞きもしませんし)


一人ぶつぶつと呟くククールを見て、


「ククールおにいちゃん、おともだちがいなかったらいっしょに泳ごう。」

優しい女の子の一人が声を掛けてくれたのが、ますますククールの気分を落とし込みました。




「いいもん、ナンパするから。」

呟き、


「かわいらしいハニー、あと10年したら喜んでお誘いにのるよ。」

でもホストらしく優しくも甘い言葉で女の子に断りを入れると、ククールはその場を離れました。











さて、ククールはアホではありますが、見た目は輝くばかりの美青年です。

銀色の髪は日光を跳ね返して輝き、青い瞳は夏の宝石のようです。

そして白い肌に映えるクリムゾンレッドの水着。

女の子たちは明らかにククールを見てひそひそ噂をし、アツーいまなざしをくれる娘も多数です。


ですから、「ちょっと遊びたい子をみつくろうかな」という目的だけなら、コンマ以下0が5、6コくらいの時間でゲット出来るのです。

が…


「…なんか、スゴい美人いねー?」

ククールは、ある女の子に目をつけてしまいました。




バボンっ!!

まず目がいくのは、そんな効果音すら発しているそのムネです。

明らかにメロンくらいの大きさはありそうなそのたわわな夏の果実を、パッションカラーの水着でまとめ上げ、セクシーでありながら下品ではない雰囲気を醸し出してます。


そして、弾ける素肌に落ちかかる赤毛が、気の強そうな口元ともマッチします。


どこのグラビアアイドルだよってくらい、レベル高い娘です。




「やあ、ハニー。一人?」

ククールは吸い寄せられるように彼女に近づくと、超カリスマレベル高いスマイルで話しかけ、


「オレも一人なんだっ♪」

とスマイりました。




コレで飯食ってるだけあって、直撃されていない周囲の女の子がフォーリンラブなはあとマークを発してきましたが、


「はあっ!?」

当の本人からは、そんな冷たい反応しか返ってきませんでした。




「いや…『はぁっ!?』って言われても…」

「ナンパ?」

気の強そうな口からは、キツい言葉が出てきます。


「キョーミないわ。」

赤毛の彼女はくるりと後ろを向いてしまいました。


「ちょ…」

仕事中ならなんとでも手管はありますが、プライベートで、しかもそもそもヘコみ中なのにこんな反応されると、ククールだって傷つきます。

「ソレってあんまりじゃ…」


「あら、お友達ですの、ゼシカ?」

背後から、鈴を振るような声がしました。




「おおうっ!?」

振り向くと、こちらはこちらでレベル高い黒髪の美少女が立っていました。


ムネやヒップは赤毛の彼女に負けますが、パレオでも隠しきれない細い腰が目を惹きます。

清純な色のシンプルな水着に身をまとった品のある物腰と、癖のないストレートの黒髪は、どこかのお姫様を連想させます。


「ううん、ぜぇんぜん知らない男。うっとおしいから、行こ、ミーティア。」

「ちょちょちょ、待ってよ。話くらい聞いてって。」

「聞きたくないから、イヤ。」

ゼシカというらしい赤毛の彼女は、ミーティアというらしい黒髪の彼女と一緒に去ろうとします。

美人は見慣れているククールですが、これだけの美少女、しかも2人を逃したとあっては、カリスマホストの名が廃ります。


「それはあんまり可哀想ですわ。」

ミーティアの言葉に、こっちは脈があるんじゃないかとククールはスマイルを放ちます。

が、何としたことでしょう。彼の渾身のスマイルは今度もまた、ミーティアのほほ笑みの内部までは突き刺さらなかったのです。


「…」

ククールは、カリスマホストとしての自信をかなり失いました。

冷血漢の兄貴はともかく、フツーの女の子にもオレの魅力が通じないなんて…


ククールはがっくりとうな垂れました。




「あら、ご体調でもお悪いんですの?」

「どうでもいいじゃない。エイタスが待ってるから行こうって。」

「え、何?君ら男連れなん?」


「ミーティア、ゼシカー、待ちくたびれちゃったよー。」

タイムリーに、どうやらこれだけの美少女2人の連れであるらしい男の声がしました。

「…」

ククールはあったこともないこの男に、激しい敵愾心を燃やします。


オレよりブサイクだったら、ぜってー殴る。

そんな理不尽極まりない怒りとともに、ククールは拳を握りしめて振り向きました。




「?」

不思議そうな顔でククールを見つめたのは、クセのある黒髪でくりんとした瞳が印象的な、可愛い(とククールは思いました)顔をした青年とも少年ともつかない男でした。


「えっと…」

彼は、知らない人間にいきなり敵愾心を込めて睨まれた理由が分からず、困惑した顔のままミーティアとゼシカに視線を向けます。


「知り合い?」

2人とも否と即答します。


「あの…すいません、僕が何か失礼なことしたでしょうか?」

「…不公平だ…」

ククールはいきなり答えました。


「オレなんか超美形なのに大好きな兄貴には冷たくされるし、季節は夏なのに心は真冬並みに寒くて、ただちょっとほんのりと可愛い女の子と心温まる交流とかしたかったダケなのに、ぜんぜん冷てーし、なのに、なんでお前がこんなカワイイ娘二人も連れ歩いてるんだよ…」

「えー?」

まさにインネンです。

モテない男ならまだ分からないでもない台詞ですが、ククールは(アホですが)モテモテなのです。

なのに、ちょっとナンパがうまくいかなかっただけで、何うらみがましいこと言ってるんでしょうね。


「えっと…」

ものすごく反応に詰まった(当たり前です、初対面の超美形にこんなこといわれたら、普通の人間なら凍るでしょう)エイタスというらしい青年は、ククールの顔を見るに見られず、視線をさまよわせます。




「…ところでどっちがカノジョ?」

「は?いやどっちがいって言われても…」

「または2人とも?こんなコーゼンたる二股とかアリなワケ?彼女ら的に?」

「いや、どっちも彼女じゃないんだけど。どっちもただの友達で…」

「トモダチか…いいなあ…」 様子をずっと見守っていたミーティアが、


ぽん

とそのかわいらしい手を打ちました。


「まあ、お友達がほしかったんですのね。」

「?」

何を言い出すやらという表情のゼシカをさておいて、ミーティアは続けます。


「そうですわね、お友達がいないのにプールに来たらさみしいですわよね。ね、エイタス、そしてゼシカ。いっしょに遊んであげましょう。」

「はあっ!?」

ゼシカは大声を上げます。


「ちょっとミーティア、いくら天然だからってまた訳わかんない…」

「たくさんで遊んだ方が、きっと楽しいですわよ♪」


にっこり

ミーティアがほほ笑みます。


カリスマホストのククールですらビビるような、強烈に威圧感のあるほほ笑みにゼシカは言葉を封じられてしまいました。


「いいですわよね、エイタスも。」

「うん、ミーティアとゼシカがいいなら。で…君、名前は?」

「ククール。」

エイタスはすると、さも最初からククールが友だちであったかのようなナチュラルな笑顔で、


「じゃククールも、みんなでウォータースライダー行こっか。アレ、ものすごく楽しいんだって。」

とククールたちを誘いました。


「もー、みんな人がいいんだからー。」

一応文句を言いつつ、ゼシカもナチュラルに賛同しました。









そして4人は、楽しく夕方まで遊びました。

「あー、今日は楽しかったですわ。」

ミーティアが心から楽しかったという笑顔で言います。


「ホント。」

ゼシカもです。

この時間でククールは、彼女が口調はキツいながら、実は心優しい女の子であると知りました。


「ありがとうね、ククール。」

なぜかお礼を言われてしまったククールは、ちょっと照れます。


「おなかぺっこぺこ」

「まあ、でしたらごはん食べて帰りましょう。」

「そうだね、ククールも行く?」

「行くーっ…て言いてえけど、実は連れがいるんだ。だからメルアド交換して、また遊ぼうぜ。」

「あら残念ですわ。」

「うん、オレも残念てか…」

ククールはしばらくほっておいたケータイを出しました。




着信あり:兄貴




メールあり:兄貴

どこをうろついているのか知らんが、オディロ教授がお帰りになるので帰るぞ。




半泣きな表情になったククールに、聡い一同はいろんなことを悟りました。


「えっと…焼き肉行こうよ、焼き肉。ククール、肉好き?」

「…大好き。」

「まあ奇遇、わたくしも夏の焼き肉は大好きですわ。タンとかじゅわじゅわって焼いて…」

「…やっぱ塩だよな。」

「僕ね、ホルモンとかも好きだよ。苦手な人いるけど、ククールは…」

「…平気。」

「では、みなさんで参りましょう。」

「GO!GO!」

「どっか美味しい店あるか…」

「オレが案内してやるよっ!!」

ようやく立ち直ったらしいククールが、妙に元気いっぱいに歩き出すのを見て、ほかの3人は




アホなんだなあ、美形なのに

と、同じことを思ったのでした。









けど、交換したメルアドは、きちんと活用されているようですよ。


2009/8/30




兄と一緒でなくてもアホなククール。
現代版のエイタスとゼシカとミーティアは、大学生です。大学まで同じかは決めてないですが。
こうやって少しずつ、フルメンバーが揃いつつあるなあ、このシリーズ。

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